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倒産の罠
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その後、駆け付けて来た丹羽ら警察によって丸中らは逮捕され、未だ意識を刈り取られた失神状態のままで警察車両へと運ばれていった。
人質たちも無事に保護されて、爆弾は爆発物処理班によって回収となりホッとひと段落だ。
表に出ると物々しいほどのパトカーや護送車の赤いランプが都会の夜を染め上げていたのに驚かされたものの、誰一人怪我もせずに解放された人質たちは互いに手を取り合って安堵に胸を撫で下ろしていた。
「あの……キミ……さっきはありがとう。その……」
「キミのお陰で僕たちは助かった……! 本当にありがとう!」
人質たちが全員で冰を取り囲んでは感嘆の眼差しで声を震わせる。いの一番に彼を抱き締めたかった周もこれでは形無しだ。さりとて彼らの面前で熱い抱擁というのも、それはそれで後々面倒になりそうなので、この場は我慢だ。やれやれと肩をすくめる様子に鐘崎らもまた、まあまあと宥めるのだった。
「あなた、すごい勇気があったのね! 最初に犬がどうのって騒ぎ出した時は耳を疑ったけど……もしかしてあなたの乗っ取られた会社って警備会社か何かだったの?」
場慣れしている感じだったものねえと、女性の一人が感心といったふうに興奮気味に声を震わせている。
「ええ、まあ……そんなところです」
冰はタジタジながらも笑顔で応え、人質の仲間たちからはまるで胴上げの勢いで感謝の意を述べられては困ったように頭を掻く始末――。
「それにしても……助けに来てくれた警察の人たち! 皆んなめちゃくちゃイケメンでビックリしちゃった!」
「うんうん、ホントよねー! あの刑事さんたち独身かしら?」
周や鐘崎らの固まっている方をチラ見しながら期待に頬を染めている。彼女たちは周らを刑事と思っているようだ。
「さあ……どうでしょう。中には独身の方もいらっしゃるかもですね」
あははは――とごまかし笑いながらも、何はともあれ皆が無事に救出されたことに胸を撫で下ろす冰だった。
そんな人質たちが丹羽ら警察によってパトカーに分乗させられていくのを見送りながら、冰はやっとのことで愛しい男の胸へと飛び込むことができた。
「冰! 良かった! 無事で――」
「白龍……! 来てくれてありがとう!」
「ああ、ああ……。本当に無事で良かった……!」
痛いくらいの抱擁に胸を熱くしながらも、二人揃って鐘崎らにも礼を述べた。
「皆さんも……本当にありがとうございます! お手間をお掛けしてすみませんでした」
ペコリと頭を下げる律儀さはまさに冰だ。危ない目にあったにしては気もしっかりしているあたりはさすがにマフィアの嫁と言うべきか。
「いや、礼を言うのは俺たちの方だ。あのフォネティックコードのメッセージで爆弾が仕掛けられている扉が分かったんだからな」
「ホント! さすがは冰君だよな! あんな非常事態だってのに、咄嗟にフォネティックコードとは……!」
鐘崎と紫月、それに李らも全員で感服の表情を輝かせる。
「ええ、実はロビーの方で大きな物音がしたから……もしかして白龍たちが助けに来てくれたのかもって思ったんです。リモートの相手は丹羽さんでしたし、皆さんなら絶対この場所を見つけてくださるって思って」
「やはりあの物音で俺たちの到着を悟ってくれたわけか」
「ええ。それに丹羽さんが広東語で『焔到着』って言ってくださったんで、これはもう間違いなく上に皆さんが来てくれてるって思って」
「それにしても犬の名前をフォネティックコードにして伝えてくれるとは――あれを聞いた時は全員で鳥肌の立つ思いだったよな?」
鐘崎が言うと、皆も誠その通りだと言って興奮気味にうなずいてみせた。
人質たちも無事に保護されて、爆弾は爆発物処理班によって回収となりホッとひと段落だ。
表に出ると物々しいほどのパトカーや護送車の赤いランプが都会の夜を染め上げていたのに驚かされたものの、誰一人怪我もせずに解放された人質たちは互いに手を取り合って安堵に胸を撫で下ろしていた。
「あの……キミ……さっきはありがとう。その……」
「キミのお陰で僕たちは助かった……! 本当にありがとう!」
人質たちが全員で冰を取り囲んでは感嘆の眼差しで声を震わせる。いの一番に彼を抱き締めたかった周もこれでは形無しだ。さりとて彼らの面前で熱い抱擁というのも、それはそれで後々面倒になりそうなので、この場は我慢だ。やれやれと肩をすくめる様子に鐘崎らもまた、まあまあと宥めるのだった。
「あなた、すごい勇気があったのね! 最初に犬がどうのって騒ぎ出した時は耳を疑ったけど……もしかしてあなたの乗っ取られた会社って警備会社か何かだったの?」
場慣れしている感じだったものねえと、女性の一人が感心といったふうに興奮気味に声を震わせている。
「ええ、まあ……そんなところです」
冰はタジタジながらも笑顔で応え、人質の仲間たちからはまるで胴上げの勢いで感謝の意を述べられては困ったように頭を掻く始末――。
「それにしても……助けに来てくれた警察の人たち! 皆んなめちゃくちゃイケメンでビックリしちゃった!」
「うんうん、ホントよねー! あの刑事さんたち独身かしら?」
周や鐘崎らの固まっている方をチラ見しながら期待に頬を染めている。彼女たちは周らを刑事と思っているようだ。
「さあ……どうでしょう。中には独身の方もいらっしゃるかもですね」
あははは――とごまかし笑いながらも、何はともあれ皆が無事に救出されたことに胸を撫で下ろす冰だった。
そんな人質たちが丹羽ら警察によってパトカーに分乗させられていくのを見送りながら、冰はやっとのことで愛しい男の胸へと飛び込むことができた。
「冰! 良かった! 無事で――」
「白龍……! 来てくれてありがとう!」
「ああ、ああ……。本当に無事で良かった……!」
痛いくらいの抱擁に胸を熱くしながらも、二人揃って鐘崎らにも礼を述べた。
「皆さんも……本当にありがとうございます! お手間をお掛けしてすみませんでした」
ペコリと頭を下げる律儀さはまさに冰だ。危ない目にあったにしては気もしっかりしているあたりはさすがにマフィアの嫁と言うべきか。
「いや、礼を言うのは俺たちの方だ。あのフォネティックコードのメッセージで爆弾が仕掛けられている扉が分かったんだからな」
「ホント! さすがは冰君だよな! あんな非常事態だってのに、咄嗟にフォネティックコードとは……!」
鐘崎と紫月、それに李らも全員で感服の表情を輝かせる。
「ええ、実はロビーの方で大きな物音がしたから……もしかして白龍たちが助けに来てくれたのかもって思ったんです。リモートの相手は丹羽さんでしたし、皆さんなら絶対この場所を見つけてくださるって思って」
「やはりあの物音で俺たちの到着を悟ってくれたわけか」
「ええ。それに丹羽さんが広東語で『焔到着』って言ってくださったんで、これはもう間違いなく上に皆さんが来てくれてるって思って」
「それにしても犬の名前をフォネティックコードにして伝えてくれるとは――あれを聞いた時は全員で鳥肌の立つ思いだったよな?」
鐘崎が言うと、皆も誠その通りだと言って興奮気味にうなずいてみせた。
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