極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,003 / 1,212
倒産の罠

40

しおりを挟む
 冰曰く、フォネティックコードで伝えることを思い付いたのは、紫月のピアスに仕込まれているGPSにアクセスする為のパスワードを思い出したからなのだそうだ。
「紫月さんのピアスはRYOをコード変換するって聞いていたんで、実は俺の腕時計のGPSもフォネティックコードでパスワードを決めたんですよ。犯人さんたち、皆さん頭のいい方たちのように見えたんで、そのままウェスト・イーストとか言ったらバレちゃうかもと思って」
 ちなみに冰の腕時計のGPSにアクセスするパスワードはYANだそうだ。周焔の『焔』である。
「ってことはぁ……ヤンキー、アルファ、ノヴェンバーか!」
 紫月がパチンと指を鳴らしながら、
「まさにピッタシじゃね? 高防ン時は遼も氷川もヤンキーだったしさぁ」
 あははは! と腹を抱えて笑う。
「おいおいおい……カネは別としても俺はヤンキーだった覚えはねえぞ!」
 周が口をへの字にして仏頂面を見せると同時に鐘崎が反撃、
「何をぬかす! 俺は至って真面目で健全だったぞ!」
 二人のくだらないやり取りに、場が大爆笑と化したのだった。
「さて――と。そんじゃ帰るとするか! 久々にデカい風呂に浸かれるぞ、冰!」
 周が当たり前のように李が乗って来た高級車に乗り込もうとしたのを見て、冰は思わず上着の裾を掴んで引き止めた。
「白龍……あの、俺たちは……」
 帰る場所は川崎のアパートであって、汐留ではない――とそう言いたかったわけだ。
 この緊急事態に李や劉という懐かしい面々も駆け付けてくれたのだろうとは思っていたが、冰は未だに周の社が本当に乗っ取られたものだと信じ込んでいるからだ。
 その時点でようやくと気付いたわけか、周も鐘崎も申し訳なさそうにして頭を掻いてみせた。

「ええー!? じゃあ……会社……乗っ取られたっていうのは……嘘だったの!?」

「すまん――! 例のヤツらをふんじばる為にな。社を囮に使ったというわけだ」
 旦那たちが二人共に平身低頭で謝る姿を前に、紫月もまた両腕を腰に当てて大威張りである。
「俺も今さっき遼に聞いたばっかでさぁ。親父や李さんたちも皆んな知ってたっていうじゃん! ンなことなら最初っから言ってくれりゃいいのにって思ったトコー!」
「ですよね! まさか囮だったなんて……ビックリ!」
「すまんすまん! 敵を騙すにはまず味方からって……な?」
「そうそう! おめえらの必死な態度が敵を信じ込ませるには必要不可欠だったってことで……うむ」
「それは……分かるけど……」
「な? 酷っえべ? 何が敵を騙すにはーだよ。こちとらマジでえれえことになったって右往左往しちまったじゃねえのおー! なあ、冰君」
「ホントですよー!」
 こうなると普段は怖いものなしの大黒柱たちも形無しだ。
「そ、その分と言っちゃナンだが……上手く事が片付いた暁には、おめえらに何でもしてやろうって……カネとも話していたんだ」
 なあ? と言って鐘崎に助けを求める。
「そ、その通りだ! 行きたい所でも欲しい物でも……何でも叶えてやろうって氷川と言ってたわけだ」
 まるで拝み倒す勢いで旦那二人揃って「すまん!」と手を合わせる。
「ふぅん? 何でも叶えてくれる――ねぇ? ほんじゃ何してもらおっか、冰君」
「ふふ、そうですねぇ」
 嫁二人はニヤっとしながら案外嬉しそうだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...