極道恋事情

一園木蓮

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倒産の罠

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「真田! おま……どうした」
 うれしいサプライズにさすがの周と鐘崎も言葉にならない。すぐに冰と紫月も出迎えて、皆は感激のまま玄関先で立ち尽くしてしまったほどだった。
「坊っちゃま。お邪魔かとは存じましたが、きっと皆様で打ち上げでもなされるのではと思いましてな。お夕飯のお支度も途中で放ってきてしまったのを思い出しまして、少々差し入れに参った次第で」
 銀製の大皿を開ければ豪勢なオードブルが見目麗しく盛り付けられていたことにまたまた驚かされる。他にも牛肉のステーキなどメインディッシュの他、カットフルーツにボトルのシャンパンやワインまである。李がそれら大荷物を抱えて『お邪魔いたしてすみません』と頭を下げていた。先程一足先に汐留に帰ると、なるたけ時短で揃えられるメニューを考えては、大急ぎで真田が用意したそうだ。
 真田曰く料理を届けたらすぐにも帰るつもりでいたようだが、周ら四人にとってはこの上ない喜びようで、是非とも一緒に打ち上げに参加してくれと言っては真田らを無理矢理部屋へと引っ張り込んだ。
「運転手は? 宋は下で待ってるのか?」
 李に訊くと、もう夜も遅いので李自らが運転して来たそうだ。
「ならちょうどいい。二人共一緒にやってくれ!」
 というわけで、急遽真田と李も交えての賑やかな打ち上げ会となったのだった。
 この囮作戦の期間中、汐留にいた李にとってアパートを訪れるのはこれが初めてである。男六人が六畳のダイニングに集まればそれだけでもう満員御礼状態。椅子は四脚しかないし、テーブルも小さい。皆はスタンディングスタイルで杯を交わし、椅子の上にも料理を並べる始末だったが、心許し信頼し合える仲間とのひと時はそれだけで最高に幸せだった。
 結局真田は料理を温めたり空いた皿を片付けたりと、忙しく動き回っていて労を労うどころの騒ぎではなかったが、彼にとってはそうしていることが励みでもあるのだそうだ。むろんのこと冰や紫月も手伝っては皆で明け方近くまで飲み交わしたのだった。
「では坊っちゃま、私めは一足お先にお邸に戻りますが、夕方にはお迎えに上がりますので」
 それまでアパート最後の一夜をごゆっくりお過ごしくださいと言って李と共に引き上げて行った。最後の一夜といっても既に空が白み始める時間帯である。それゆえ夕方に迎えに来るというわけだ。
 当初はここに泊まるはずだったお邪魔虫組の鐘崎らも自宅へ帰ると言ったのだが、周がせっかくだから泊まっていけと不敵な笑みを見せたので、言葉に甘えることとなった。
「カネ、確かに所変わればってな感じで、ある意味燃えられるのはお墨付きだ。だがな、ある程度セーブはしてくれよ? マジで壁薄いんだ」
 隣の部屋といっても、真田が咳き込んだりする音なども割合はっきり聞こえたという周に、鐘崎もまた半ば期待顔でうなずいた。
「心得た。まあ……なるたけ品良くいたす所存だ」
 それを聞いていた紫月が「いたすって……」と言って尻込みしているのが可笑しい。何だかんだと言いながらも、二組の夫婦はそれぞれ秘密の時を堪能したのだった。
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