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身勝手な愛
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郭芳はその昔、まだ周が香港在住時に重鎮たちから疎まれていたことを話題に上げていた。まあ久しぶりに会った昔の同胞との会話の中に当時の話題が偶然に上がっただけともいえるし、今回の失踪事件と直接の関わりがあるとは言い切れないが、調べておくに越したことはない。李は郭芳に渡したGPSの位置情報を基に彼の動向について把握しておくべきと思っているのだった。
夕刻、社の業務を終えると李は郭芳の滞在先を訪ねてみることにした。別段彼に会うつもりはなかったが、様子窺いだけでもと思いGPSが示す安ホテルへと向かったのだ。
ところが夜遅くになっても郭芳の出入りは見られない。次の日も同じようにホテルを訪ねたものの、一向に気配すら感じられない為、思い切ってフロントを訪ねてみた。すると郭芳らしき男は何と十日も前にチェックアウトしていることが判明し、李は彼が滞在していたという部屋を取って、室内を探ってみることにした。
(おかしい……GPSは確かにここを示している。だがチェックアウトしたとはどういうことだ)
考えられるのは郭芳がこの部屋に例の名刺を置いて行ったということだ。
部屋をくまなく探すと、絨毯の下から破れた名刺の一部が見つかって、李は蒼白となった。
(クソ……ッ! 何てことだ……。私としたことが……)
急激に焦燥感が襲ってくる。李はすぐさま汐留に戻ると、香港にいる周宛てに連絡を試みたのだった。
ところが――だ。
その周の方でも厄介な事態に陥っていたようだ。なんと冰が姿を消してしまったというのだ。
重鎮たちの失踪と何らかの関わりがあるのか無いのかということも含めて、香港は蜂の巣を突いたような大騒ぎになっているとのことだった。
『李か! 連絡を入れようと思っていたところだ……。飯を食った先のレストランで冰が姿を消した。まだ何が起こったと断定できる段階でもねえが、かれこれ二時間は経つ。今、カネと一之宮たちが必死に行方を追ってくれているんだが……』
周にしてみれば重鎮たちの捜索に助力するどころか、逆にファミリーの手を煩わせる羽目になってしまった状況に苦しい立場のようだ。李はすぐさま自分も香港に飛びたいと申し出た。
夕刻、社の業務を終えると李は郭芳の滞在先を訪ねてみることにした。別段彼に会うつもりはなかったが、様子窺いだけでもと思いGPSが示す安ホテルへと向かったのだ。
ところが夜遅くになっても郭芳の出入りは見られない。次の日も同じようにホテルを訪ねたものの、一向に気配すら感じられない為、思い切ってフロントを訪ねてみた。すると郭芳らしき男は何と十日も前にチェックアウトしていることが判明し、李は彼が滞在していたという部屋を取って、室内を探ってみることにした。
(おかしい……GPSは確かにここを示している。だがチェックアウトしたとはどういうことだ)
考えられるのは郭芳がこの部屋に例の名刺を置いて行ったということだ。
部屋をくまなく探すと、絨毯の下から破れた名刺の一部が見つかって、李は蒼白となった。
(クソ……ッ! 何てことだ……。私としたことが……)
急激に焦燥感が襲ってくる。李はすぐさま汐留に戻ると、香港にいる周宛てに連絡を試みたのだった。
ところが――だ。
その周の方でも厄介な事態に陥っていたようだ。なんと冰が姿を消してしまったというのだ。
重鎮たちの失踪と何らかの関わりがあるのか無いのかということも含めて、香港は蜂の巣を突いたような大騒ぎになっているとのことだった。
『李か! 連絡を入れようと思っていたところだ……。飯を食った先のレストランで冰が姿を消した。まだ何が起こったと断定できる段階でもねえが、かれこれ二時間は経つ。今、カネと一之宮たちが必死に行方を追ってくれているんだが……』
周にしてみれば重鎮たちの捜索に助力するどころか、逆にファミリーの手を煩わせる羽目になってしまった状況に苦しい立場のようだ。李はすぐさま自分も香港に飛びたいと申し出た。
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