極道恋事情

一園木蓮

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身勝手な愛

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 社を劉に預けて香港へ向かう傍ら、李は郭芳の出入国記録を調べていた。すると、やはりこの日本を出て香港へと向かったことが判明――今回の重鎮失踪事件への関与が疑わしくなってくる。

(しかし……冰さんまで居なくなったとはどういうことだ。重鎮方を拉致したのが郭芳だとすれば、冰さんを拐ったのも郭芳である可能性も疑わねばなるまい。目的は何だというのだ)

 先日会った際に彼が引っ掛かることを言っていたのは事実だ。周焔にファミリーを継いで欲しい、その為なら何でもするというような勢いだった。

(仮に焔老板が兄の周風殿を追いやって後継の座を手に入れるには、あの重鎮方が足枷になるのは目に見えている。郭芳はその邪魔者を排除して焔老板にトップを取ってもらうよう画策するつもりなのか……?)

 だとすれば当然冰のことも邪魔に思うかも知れない。

(だが、郭芳は焔老板が冰さんとご結婚なされたことを知らないはずだ――)

 李自身は言っていないし、十年以上も前にファミリーを去った郭芳がそんな情報を知る術もないだろう。もしかしたら昔の仲間に連絡を取った際にでも周と冰の関係を耳にしたというわけだろうか。李は香港に着くとすぐに、当時郭芳と顔見知りだったろう者に事情を訊くことにした。
 すると思った通りか、ここ最近で郭芳から連絡を受けたことがあるという者が複数見つかった。それによると、やはり彼らの内の一人が周が男性の伴侶を娶ったことを漏らした事実が判明した。
「彼らの話によると郭芳は日本のヤクザと組んで大きなヤマを踏むとか何とかうそぶいていたようです。実際、私と会った際にも同じようなことを言っていましたし、当初の予定ではしばらく日本に滞在するつもりだったのでしょう……。それが何故急にこの香港に舞い戻ったかということです」
 周に報告しながら李は焦燥感を露わにしていた。
「もしかしたら老板と冰さんの関係を快く思わずに冰さんを拉致したのだとしたら……」
 李からの報告を受けて周もまた渋顔だ。
「ふむ、つまりヤツはこの俺を親父の後継にしたいが為に、それを邪魔しそうな重鎮方を拐ったというわけか――? 李の想像が当たっているとして、だが冰まで拐う目的が分からんな。俺をトップに押し上げたいという思いで動いているとするなら、その俺の大事な伴侶を邪険にするだろうか」
 周を尊敬し、ファミリートップの座につかせたいと思うほどならば、冰はその姐という立場になる。本来ならば周同然に敬うべき相手だろうと周は言うのだ。重鎮方と冰の件は全くの別物という可能性もあると周は踏んでいるようだ。
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