1,023 / 1,212
身勝手な愛
12
しおりを挟む
社を劉に預けて香港へ向かう傍ら、李は郭芳の出入国記録を調べていた。すると、やはりこの日本を出て香港へと向かったことが判明――今回の重鎮失踪事件への関与が疑わしくなってくる。
(しかし……冰さんまで居なくなったとはどういうことだ。重鎮方を拉致したのが郭芳だとすれば、冰さんを拐ったのも郭芳である可能性も疑わねばなるまい。目的は何だというのだ)
先日会った際に彼が引っ掛かることを言っていたのは事実だ。周焔にファミリーを継いで欲しい、その為なら何でもするというような勢いだった。
(仮に焔老板が兄の周風殿を追いやって後継の座を手に入れるには、あの重鎮方が足枷になるのは目に見えている。郭芳はその邪魔者を排除して焔老板にトップを取ってもらうよう画策するつもりなのか……?)
だとすれば当然冰のことも邪魔に思うかも知れない。
(だが、郭芳は焔老板が冰さんとご結婚なされたことを知らないはずだ――)
李自身は言っていないし、十年以上も前にファミリーを去った郭芳がそんな情報を知る術もないだろう。もしかしたら昔の仲間に連絡を取った際にでも周と冰の関係を耳にしたというわけだろうか。李は香港に着くとすぐに、当時郭芳と顔見知りだったろう者に事情を訊くことにした。
すると思った通りか、ここ最近で郭芳から連絡を受けたことがあるという者が複数見つかった。それによると、やはり彼らの内の一人が周が男性の伴侶を娶ったことを漏らした事実が判明した。
「彼らの話によると郭芳は日本のヤクザと組んで大きなヤマを踏むとか何とかうそぶいていたようです。実際、私と会った際にも同じようなことを言っていましたし、当初の予定ではしばらく日本に滞在するつもりだったのでしょう……。それが何故急にこの香港に舞い戻ったかということです」
周に報告しながら李は焦燥感を露わにしていた。
「もしかしたら老板と冰さんの関係を快く思わずに冰さんを拉致したのだとしたら……」
李からの報告を受けて周もまた渋顔だ。
「ふむ、つまりヤツはこの俺を親父の後継にしたいが為に、それを邪魔しそうな重鎮方を拐ったというわけか――? 李の想像が当たっているとして、だが冰まで拐う目的が分からんな。俺をトップに押し上げたいという思いで動いているとするなら、その俺の大事な伴侶を邪険にするだろうか」
周を尊敬し、ファミリートップの座につかせたいと思うほどならば、冰はその姐という立場になる。本来ならば周同然に敬うべき相手だろうと周は言うのだ。重鎮方と冰の件は全くの別物という可能性もあると周は踏んでいるようだ。
(しかし……冰さんまで居なくなったとはどういうことだ。重鎮方を拉致したのが郭芳だとすれば、冰さんを拐ったのも郭芳である可能性も疑わねばなるまい。目的は何だというのだ)
先日会った際に彼が引っ掛かることを言っていたのは事実だ。周焔にファミリーを継いで欲しい、その為なら何でもするというような勢いだった。
(仮に焔老板が兄の周風殿を追いやって後継の座を手に入れるには、あの重鎮方が足枷になるのは目に見えている。郭芳はその邪魔者を排除して焔老板にトップを取ってもらうよう画策するつもりなのか……?)
だとすれば当然冰のことも邪魔に思うかも知れない。
(だが、郭芳は焔老板が冰さんとご結婚なされたことを知らないはずだ――)
李自身は言っていないし、十年以上も前にファミリーを去った郭芳がそんな情報を知る術もないだろう。もしかしたら昔の仲間に連絡を取った際にでも周と冰の関係を耳にしたというわけだろうか。李は香港に着くとすぐに、当時郭芳と顔見知りだったろう者に事情を訊くことにした。
すると思った通りか、ここ最近で郭芳から連絡を受けたことがあるという者が複数見つかった。それによると、やはり彼らの内の一人が周が男性の伴侶を娶ったことを漏らした事実が判明した。
「彼らの話によると郭芳は日本のヤクザと組んで大きなヤマを踏むとか何とかうそぶいていたようです。実際、私と会った際にも同じようなことを言っていましたし、当初の予定ではしばらく日本に滞在するつもりだったのでしょう……。それが何故急にこの香港に舞い戻ったかということです」
周に報告しながら李は焦燥感を露わにしていた。
「もしかしたら老板と冰さんの関係を快く思わずに冰さんを拉致したのだとしたら……」
李からの報告を受けて周もまた渋顔だ。
「ふむ、つまりヤツはこの俺を親父の後継にしたいが為に、それを邪魔しそうな重鎮方を拐ったというわけか――? 李の想像が当たっているとして、だが冰まで拐う目的が分からんな。俺をトップに押し上げたいという思いで動いているとするなら、その俺の大事な伴侶を邪険にするだろうか」
周を尊敬し、ファミリートップの座につかせたいと思うほどならば、冰はその姐という立場になる。本来ならば周同然に敬うべき相手だろうと周は言うのだ。重鎮方と冰の件は全くの別物という可能性もあると周は踏んでいるようだ。
19
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる