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身勝手な愛
44(身勝手な愛 完結)
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そうして香港を発つ空港には周家の家族の他に側近の重鎮方六人も見送りに顔を揃えてくれた。
「焔君、姐様、この度は本当にご足労をお掛けしましたじゃ。心ばかりで恐縮じゃが、これはわしらからご夫婦への感謝の気持ちですじゃ」
そう言って渡された小さな箱を開くと、思いもよらない贈り物が出てきて冰は驚きに目を見開いてしまった。
「これ……」
なんとそれは雪の結晶を模った赤い宝石で出来た揃いのタイピンだったからだ。
「焔君と姐様のスマートフォンには宝石が付いておったじゃろう? 郭芳から取り戻した時に姐様のスマートフォンにストラップが付いていたのを目にしましてな」
その後、周のスマートフォンにも同じ形で色違いの宝石が付いていることに気がつき、此度の礼にと皆で相談して選んだのだそうだ。本当は赤と白の二色で何か選ぼうと思ったのだそうだが、ちょうど雪の結晶の宝石を見つけて、大至急でタイピンに仕立ててもらったのだそうだ。
赤と白で夫婦の名を表すのはストラップで体現している。となれば雪吹冰をイメージする雪の結晶を、焔の色の宝石で染め上げれば夫婦はいつでも共にあるという意味にもなると思ってのことだそうだ。
「姐様の宝石はガーネットじゃったからの。きっと焔君をイメージしていると思ったのじゃ。そのガーネットは焔君と姐様お二人だけの大切な物じゃろうと思うての。これはわしら側近の思いも込めてルビーで作ってもらいましたじゃ」
「焔色に染まった雪吹冰はファミリー周焔と周冰として末永く睦まじく、より一層ファミリーを繁栄させ我々を導いて欲しい。そういった思いを込めてありますじゃ」
それだけでも大いに驚くべきことだが、なんと今回の救出に尽力してくれた鐘崎と紫月にも同様のタイピンが用意されていたことに、言葉にならない。鐘崎らの方は濃い紫色のアメジストで作られた鐘の形をしたタイピンだった。鐘崎と紫月が揃いで身につけているのはブラックダイヤとアメジストだと、重鎮たちが密かに情報を収集して選んでくれたのだそうだ。
重鎮たちの粋な計らいに父の隼と兄の風もさすが我が側近たちだと言って、誇らしげに手を叩いて祝福してくれた。周と鐘崎もまた、皆の厚情に胸を熱くし、冰と紫月に至っては感激のあまりかジワジワと湧き上がった涙がとめられずにいた。
「皆さんありがとうございます! 本当に……なんとお礼を申し上げてよいか」
「冰君の言う通りです! 俺や遼にまで……このようなお心遣いをいただいて……」
とかく紫月はそれこそ大してお役にも立てなかったというのに――と恐縮しきりだ。
「そんなことはない。若い皆さんのお力があってこそ我々はこうして無事で戻って来られましたのじゃ」
「そうとも。それに、あなた方若い人たちのパワーを目の当たりにできて、わしらも希望と元気をいただけた。まだまだわしら老体でも役に立つことがあれば、全力でファミリーのお力になりたいと、改めてそう思いましたじゃ」
年も歳だしそろそろ隠居――などという考えは思い直して、動ける内は少しでもファミリーの役に立ちたいと思ったと言う。そんな重鎮方の思いを聞いて、隼も風も心強いことだと言って大いに喜んだ。
「では父上、兄上、側近の皆様方も。世話になりました。また春節には帰って参りたいと存じます」
「お母様、お姉様、それにベビーちゃん! 皆さんこの度もありがとうございました。またお目に掛かれるのを心待ちにしております!」
とびきりの笑顔で手を振ってゲートへと向かう。
今年もまた一年が締めくくられようとしている年の暮れ――幸せにあふれる皆の笑みは、まさに桃源郷に咲く満開の花々のようであった。
身勝手な愛 - FIN -
「焔君、姐様、この度は本当にご足労をお掛けしましたじゃ。心ばかりで恐縮じゃが、これはわしらからご夫婦への感謝の気持ちですじゃ」
そう言って渡された小さな箱を開くと、思いもよらない贈り物が出てきて冰は驚きに目を見開いてしまった。
「これ……」
なんとそれは雪の結晶を模った赤い宝石で出来た揃いのタイピンだったからだ。
「焔君と姐様のスマートフォンには宝石が付いておったじゃろう? 郭芳から取り戻した時に姐様のスマートフォンにストラップが付いていたのを目にしましてな」
その後、周のスマートフォンにも同じ形で色違いの宝石が付いていることに気がつき、此度の礼にと皆で相談して選んだのだそうだ。本当は赤と白の二色で何か選ぼうと思ったのだそうだが、ちょうど雪の結晶の宝石を見つけて、大至急でタイピンに仕立ててもらったのだそうだ。
赤と白で夫婦の名を表すのはストラップで体現している。となれば雪吹冰をイメージする雪の結晶を、焔の色の宝石で染め上げれば夫婦はいつでも共にあるという意味にもなると思ってのことだそうだ。
「姐様の宝石はガーネットじゃったからの。きっと焔君をイメージしていると思ったのじゃ。そのガーネットは焔君と姐様お二人だけの大切な物じゃろうと思うての。これはわしら側近の思いも込めてルビーで作ってもらいましたじゃ」
「焔色に染まった雪吹冰はファミリー周焔と周冰として末永く睦まじく、より一層ファミリーを繁栄させ我々を導いて欲しい。そういった思いを込めてありますじゃ」
それだけでも大いに驚くべきことだが、なんと今回の救出に尽力してくれた鐘崎と紫月にも同様のタイピンが用意されていたことに、言葉にならない。鐘崎らの方は濃い紫色のアメジストで作られた鐘の形をしたタイピンだった。鐘崎と紫月が揃いで身につけているのはブラックダイヤとアメジストだと、重鎮たちが密かに情報を収集して選んでくれたのだそうだ。
重鎮たちの粋な計らいに父の隼と兄の風もさすが我が側近たちだと言って、誇らしげに手を叩いて祝福してくれた。周と鐘崎もまた、皆の厚情に胸を熱くし、冰と紫月に至っては感激のあまりかジワジワと湧き上がった涙がとめられずにいた。
「皆さんありがとうございます! 本当に……なんとお礼を申し上げてよいか」
「冰君の言う通りです! 俺や遼にまで……このようなお心遣いをいただいて……」
とかく紫月はそれこそ大してお役にも立てなかったというのに――と恐縮しきりだ。
「そんなことはない。若い皆さんのお力があってこそ我々はこうして無事で戻って来られましたのじゃ」
「そうとも。それに、あなた方若い人たちのパワーを目の当たりにできて、わしらも希望と元気をいただけた。まだまだわしら老体でも役に立つことがあれば、全力でファミリーのお力になりたいと、改めてそう思いましたじゃ」
年も歳だしそろそろ隠居――などという考えは思い直して、動ける内は少しでもファミリーの役に立ちたいと思ったと言う。そんな重鎮方の思いを聞いて、隼も風も心強いことだと言って大いに喜んだ。
「では父上、兄上、側近の皆様方も。世話になりました。また春節には帰って参りたいと存じます」
「お母様、お姉様、それにベビーちゃん! 皆さんこの度もありがとうございました。またお目に掛かれるのを心待ちにしております!」
とびきりの笑顔で手を振ってゲートへと向かう。
今年もまた一年が締めくくられようとしている年の暮れ――幸せにあふれる皆の笑みは、まさに桃源郷に咲く満開の花々のようであった。
身勝手な愛 - FIN -
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