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陰謀
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だが、冰は穏やかな表情でそっと肩に寄り添うとこう言った。
「白龍――俺たちってさ。愛してる、一生側にいる、絶対離れないってよく言ってるじゃない? でもそれってだいたいが幸せな時っていうかさ。例えば拉致とかに遭ってもそれが無事に解決した時とかによくそう言い合ってるよなって思うの」
「――そういえばそうだな。もちろん普段からそう思ってはいるが、あえて口に出して告げ合うのは……確かにお前の言うように何か事が起こって解決した直後なんかが多い気がするな」
「だよね。でもさ、それって本当は一番苦しい時にこそ言うべきものじゃないかなって思うの」
「――苦しい時……」
「ん、例えば今みたいな……なんて言ったら語弊があるかもだけど……。何ていうかちょっとどうしよう、どうなっちゃうんだろうっていうような時っていうのかな。そういう時こそがっつり支え合いたい。ちゃんと側にいて、二人で悩んで考えて、一番いい方法を見つけたいって。お互いに申し訳ないとかそんなこと思わないで、しっかり手を繋いでいきたいなって」
「――冰」
「白龍、いつも言ってくれるじゃない。俺たちは一心同体なんだって。だから白龍が苦しい時には俺も苦しいし、嬉しい時には俺も嬉しい。逆も同じで俺が辛い時には白龍も辛くて、俺が幸せなら白龍も幸せで。だって一心同体なんだもの。俺はあなたと同じように悩んで同じように喜び合えればそれが何より幸せだなって思うの。だから――」
申し訳ないなんて思わないで。すまない――なんて謝らないで。どんなことも二人で考えて二人で分かち合っていこうよ――!
その言葉を言う前に抱き締められた。強く強く、息もできないほどに強く抱き締められた。
「白……龍……」
「冰――そうだな。お前の言う通りだ……! 俺たちは一心同体の夫婦だ。冰、ありがとうな」
確かに一心同体だの愛しているだの絶対に離れないなどと言い合いながらも、今のような窮地に陥れば相手に迷惑を掛けないようにしようとか申し訳ないという気持ちが先に立ってしまうのは事実だ。幸せで安泰な時にはポジティブなことを言い合える余裕があるが、いざ困った事態になったら遠慮し合うのであれば本当の意味で一心同体とはいえないのかも知れない。誠、冰の言う通りだ。
こんなふうにきちんと言葉に出してしっかりと見つめ合ってくれることが、周にとってはどれほど心強いことか――。冰のあたたかい気持ちが有り難く、そして愛しくてならなかった。
これまでは――どちらかというと自分が常に冰というこの愛しい存在を守って当たり前だと思ってきた。それは経済面でも、そして精神面でも、年もだいぶん上であり夫という立場の自分が、華奢で『か弱い』嫁を護って当然だと――そう思ってきた。だが支えられているのは自分もまた同様で、時に守り護られ、それが夫婦なのだと改めて知る。
周は腕の中のこの大切な人をどれほど愛し愛されているのかと思うと、言いようのない気持ちに胸が熱くなり、自分は彼がいてこそこうして存在し得るのだと痛感するのだった。
「白龍――俺たちってさ。愛してる、一生側にいる、絶対離れないってよく言ってるじゃない? でもそれってだいたいが幸せな時っていうかさ。例えば拉致とかに遭ってもそれが無事に解決した時とかによくそう言い合ってるよなって思うの」
「――そういえばそうだな。もちろん普段からそう思ってはいるが、あえて口に出して告げ合うのは……確かにお前の言うように何か事が起こって解決した直後なんかが多い気がするな」
「だよね。でもさ、それって本当は一番苦しい時にこそ言うべきものじゃないかなって思うの」
「――苦しい時……」
「ん、例えば今みたいな……なんて言ったら語弊があるかもだけど……。何ていうかちょっとどうしよう、どうなっちゃうんだろうっていうような時っていうのかな。そういう時こそがっつり支え合いたい。ちゃんと側にいて、二人で悩んで考えて、一番いい方法を見つけたいって。お互いに申し訳ないとかそんなこと思わないで、しっかり手を繋いでいきたいなって」
「――冰」
「白龍、いつも言ってくれるじゃない。俺たちは一心同体なんだって。だから白龍が苦しい時には俺も苦しいし、嬉しい時には俺も嬉しい。逆も同じで俺が辛い時には白龍も辛くて、俺が幸せなら白龍も幸せで。だって一心同体なんだもの。俺はあなたと同じように悩んで同じように喜び合えればそれが何より幸せだなって思うの。だから――」
申し訳ないなんて思わないで。すまない――なんて謝らないで。どんなことも二人で考えて二人で分かち合っていこうよ――!
その言葉を言う前に抱き締められた。強く強く、息もできないほどに強く抱き締められた。
「白……龍……」
「冰――そうだな。お前の言う通りだ……! 俺たちは一心同体の夫婦だ。冰、ありがとうな」
確かに一心同体だの愛しているだの絶対に離れないなどと言い合いながらも、今のような窮地に陥れば相手に迷惑を掛けないようにしようとか申し訳ないという気持ちが先に立ってしまうのは事実だ。幸せで安泰な時にはポジティブなことを言い合える余裕があるが、いざ困った事態になったら遠慮し合うのであれば本当の意味で一心同体とはいえないのかも知れない。誠、冰の言う通りだ。
こんなふうにきちんと言葉に出してしっかりと見つめ合ってくれることが、周にとってはどれほど心強いことか――。冰のあたたかい気持ちが有り難く、そして愛しくてならなかった。
これまでは――どちらかというと自分が常に冰というこの愛しい存在を守って当たり前だと思ってきた。それは経済面でも、そして精神面でも、年もだいぶん上であり夫という立場の自分が、華奢で『か弱い』嫁を護って当然だと――そう思ってきた。だが支えられているのは自分もまた同様で、時に守り護られ、それが夫婦なのだと改めて知る。
周は腕の中のこの大切な人をどれほど愛し愛されているのかと思うと、言いようのない気持ちに胸が熱くなり、自分は彼がいてこそこうして存在し得るのだと痛感するのだった。
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