極道恋事情

一園木蓮

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陰謀

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『ふむ、一見似ていると言われればそうも感じられるが、何も事情を知らずに見たのならまた印象は違うかも知れんな。いい男だから似ている気がするだけかも知れんぞ。あの地方特有の目鼻立ちとも言える』
 彫りの深い顔立ちはそれだけで美男美女に見えるし、外国人からすると個々の見分けが難しいこともある。差し支えなければ曹や美紅にも見せてみるかと訊いた風に、周も同意した。
『では二人には事情を知らせずにこの男の顔だけを見せてみるとしよう。どんな反応を見せるか――また後程こちらからかけ直す』
 一旦リモートを切り、兄からの連絡を待つ。ちょうど冰が風呂から上がってきたところだった。
「白龍、お風呂空いたよー」
 冰は事情を知った後も極力普段と変わりなく接してくれているように思える。彼の中での悩みや葛藤も当然あるだろうが、なるべくならそういった感情を見せないようにしてくれているのだろう。それが分かるから周は心底申し訳ない気持ちになるのだった。
「――冰。今ちょうど兄貴と話をしていたところだ。例の件で報告せねばと思ってな」
「そうだったんだ。お兄様は何て……?」
「当時のことを一番詳しく知っているのは兄貴だからな……。あの時一緒に鉱山の視察に行っていた曹さんにも何か覚えていることがないか訊いてくれると言ってくれた。また後で連絡すると言って一旦通話を切ったところだ」
「そっか。じゃあ待ってないとだね。何か飲む? 紹興酒でも淹れようか?」
「ん、そうだな。一緒に飲むか」
「うん!」
 冰はにこやかな笑顔を見せながらバーカウンターへと向かい、ポットの湯を沸かし始める。敢えて何も言わずに普段通りに接してくれる彼に感謝すると共に、気の毒な思いをさせていることに心痛む思いでいた。
「はい、できたよー。熱いから気をつけてね」
「ああ、いただこう」
 冰が作ってくれた熱々の紹興酒を手に二人並んでソファに腰を下ろす。そっと――湯上がりの肩を抱き寄せて黒髪にくちづけた。
「冰――よく眠れているか?」
「え……?」
「心配を掛けていると思っている――」
「白龍……」
「これまでも――いろいろなことがあって……お前には散々苦労を掛けたが。まさか中学生にもなろうというガキがいたかも知れない――なんてことはさすがに苦労や心配の次元を越している。俺自身はともかくお前にとっては心痛に値することだと思う」
 つまり拉致とか何かに巻き込まれて事件に遭ったなどという、自分たちが力を合わせて乗り切ることが不可能な事態であるのは確かだ。しかも血を分けた息子がいたなど、伴侶である冰にとっては信じられないほど心が痛むだろうことは聞かずとも想像に容易い。極力平静を装ってくれてはいても、周からすれば精神的に酷く負担をかけていると思うわけだ。
「すまないと思っている――」
「白龍……」
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