極道恋事情

一園木蓮

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陰謀

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「だいたい……! あんた、あの父親と男同士で結婚してるとか言うけど……それっていつよ。結婚したのいつ?」
「はい、かれこれ二年になります」
「ンだよ、たったの二年かよ! じゃあ出会ったのは?」
「出会ったのは十四年くらい前かな。周からはあなたのお母様ご一家に助けていただいた一年後だったと聞いています」
「なんだ、じゃあやっぱりウチの母親の方が先じゃん!」
 要するに『あんたの方が後釜なんだから勝負は見えてるだろ?』と言わんばかりだ。
「確かに……あなたのおっしゃる通りですね。僕はあなたのお母様よりも後で周と知り合ったのです」
「だったら話は早いじゃん! あんたがあの父親と出会った時にはもう俺が生まれてたわけだから! 順番から考えても邪魔なのはあんたの方ってことでしょ?」
 身を引くべきはそちらだと勝ち誇った表情で笑う。冰もまた、曖昧な笑みを浮かべるしかできずにいた。
「そう……ですね。本来僕が考慮すべきなのでしょう」
 シュンとしたように肩を落としながらも寂しそうな笑顔を見せる。息子の方もそんな冰の様子に根っから悪い人間だとは思えないわけか、
「と、とにかく……子供の俺がどうこう言うことじゃないよ。どうなろうがあとは父親と母親が決めた通りにするしかないでしょ……」
 それきり口をつぐんでしまった。

 一方、隣室の周の方でもまた、女との対峙が続いていた。
「ひとつ疑問に思っていることがある。あんたは俺に強要されてあの息子ができたと言うが、正直そんなことをした男を好きになれるものか?」
「……え?」
「好きでもなんでもない男から無理やりそんな目に遭わされれば、普通は好きになるどころか恐怖に思うか二度と顔を見たくないと思うのではないか? だが、当時のあんたは俺の怪我が快復して村を去るまで親切に接してくれた。俺に対する恐怖心も感じられなかったように思うがな」
「そ……れは……」
 女はしばし言葉に詰まりながらも焦ったようにこう言い訳をした。
「本当は……あなたが好きだた……! あなたにされたこと……嬉しいと思てた、私……」
「――そうか。本当はあの十五年前の時から俺を好いてくれていたというわけだな?」
「そ……です! 私、あなた好き!」
 必死の形相で再びしがみついてくる。
「あなた好き。だからあなたも私こと好きでいて欲しい。息子のことも認めて欲しい……」
「本気で言っているのだな?」
「もちろん本気! あなたと息子と……幸せになりたいの!」
 なぜだろう、不思議なことに交わす会話はどんどん流暢になってくる。実のところ二人きりになってから翻訳ソフトを通していないにもかかわらず、女は少々複雑なこちらの言い回しを理解できているようだ。
 思えば先程息子の方が親子鑑定のことで口を挟んだ際にも、この女は難なく理解したふうだった。

 彼女は中国語を理解している――というよりも本当は流暢なはず。

 女との触れ合いの中で周は陰謀を確信したのだった。
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