1,079 / 1,212
陰謀
23
しおりを挟む
「だいたい……! あんた、あの父親と男同士で結婚してるとか言うけど……それっていつよ。結婚したのいつ?」
「はい、かれこれ二年になります」
「ンだよ、たったの二年かよ! じゃあ出会ったのは?」
「出会ったのは十四年くらい前かな。周からはあなたのお母様ご一家に助けていただいた一年後だったと聞いています」
「なんだ、じゃあやっぱりウチの母親の方が先じゃん!」
要するに『あんたの方が後釜なんだから勝負は見えてるだろ?』と言わんばかりだ。
「確かに……あなたのおっしゃる通りですね。僕はあなたのお母様よりも後で周と知り合ったのです」
「だったら話は早いじゃん! あんたがあの父親と出会った時にはもう俺が生まれてたわけだから! 順番から考えても邪魔なのはあんたの方ってことでしょ?」
身を引くべきはそちらだと勝ち誇った表情で笑う。冰もまた、曖昧な笑みを浮かべるしかできずにいた。
「そう……ですね。本来僕が考慮すべきなのでしょう」
シュンとしたように肩を落としながらも寂しそうな笑顔を見せる。息子の方もそんな冰の様子に根っから悪い人間だとは思えないわけか、
「と、とにかく……子供の俺がどうこう言うことじゃないよ。どうなろうがあとは父親と母親が決めた通りにするしかないでしょ……」
それきり口をつぐんでしまった。
一方、隣室の周の方でもまた、女との対峙が続いていた。
「ひとつ疑問に思っていることがある。あんたは俺に強要されてあの息子ができたと言うが、正直そんなことをした男を好きになれるものか?」
「……え?」
「好きでもなんでもない男から無理やりそんな目に遭わされれば、普通は好きになるどころか恐怖に思うか二度と顔を見たくないと思うのではないか? だが、当時のあんたは俺の怪我が快復して村を去るまで親切に接してくれた。俺に対する恐怖心も感じられなかったように思うがな」
「そ……れは……」
女はしばし言葉に詰まりながらも焦ったようにこう言い訳をした。
「本当は……あなたが好きだた……! あなたにされたこと……嬉しいと思てた、私……」
「――そうか。本当はあの十五年前の時から俺を好いてくれていたというわけだな?」
「そ……です! 私、あなた好き!」
必死の形相で再びしがみついてくる。
「あなた好き。だからあなたも私こと好きでいて欲しい。息子のことも認めて欲しい……」
「本気で言っているのだな?」
「もちろん本気! あなたと息子と……幸せになりたいの!」
なぜだろう、不思議なことに交わす会話はどんどん流暢になってくる。実のところ二人きりになってから翻訳ソフトを通していないにもかかわらず、女は少々複雑なこちらの言い回しを理解できているようだ。
思えば先程息子の方が親子鑑定のことで口を挟んだ際にも、この女は難なく理解したふうだった。
彼女は中国語を理解している――というよりも本当は流暢なはず。
女との触れ合いの中で周は陰謀を確信したのだった。
「はい、かれこれ二年になります」
「ンだよ、たったの二年かよ! じゃあ出会ったのは?」
「出会ったのは十四年くらい前かな。周からはあなたのお母様ご一家に助けていただいた一年後だったと聞いています」
「なんだ、じゃあやっぱりウチの母親の方が先じゃん!」
要するに『あんたの方が後釜なんだから勝負は見えてるだろ?』と言わんばかりだ。
「確かに……あなたのおっしゃる通りですね。僕はあなたのお母様よりも後で周と知り合ったのです」
「だったら話は早いじゃん! あんたがあの父親と出会った時にはもう俺が生まれてたわけだから! 順番から考えても邪魔なのはあんたの方ってことでしょ?」
身を引くべきはそちらだと勝ち誇った表情で笑う。冰もまた、曖昧な笑みを浮かべるしかできずにいた。
「そう……ですね。本来僕が考慮すべきなのでしょう」
シュンとしたように肩を落としながらも寂しそうな笑顔を見せる。息子の方もそんな冰の様子に根っから悪い人間だとは思えないわけか、
「と、とにかく……子供の俺がどうこう言うことじゃないよ。どうなろうがあとは父親と母親が決めた通りにするしかないでしょ……」
それきり口をつぐんでしまった。
一方、隣室の周の方でもまた、女との対峙が続いていた。
「ひとつ疑問に思っていることがある。あんたは俺に強要されてあの息子ができたと言うが、正直そんなことをした男を好きになれるものか?」
「……え?」
「好きでもなんでもない男から無理やりそんな目に遭わされれば、普通は好きになるどころか恐怖に思うか二度と顔を見たくないと思うのではないか? だが、当時のあんたは俺の怪我が快復して村を去るまで親切に接してくれた。俺に対する恐怖心も感じられなかったように思うがな」
「そ……れは……」
女はしばし言葉に詰まりながらも焦ったようにこう言い訳をした。
「本当は……あなたが好きだた……! あなたにされたこと……嬉しいと思てた、私……」
「――そうか。本当はあの十五年前の時から俺を好いてくれていたというわけだな?」
「そ……です! 私、あなた好き!」
必死の形相で再びしがみついてくる。
「あなた好き。だからあなたも私こと好きでいて欲しい。息子のことも認めて欲しい……」
「本気で言っているのだな?」
「もちろん本気! あなたと息子と……幸せになりたいの!」
なぜだろう、不思議なことに交わす会話はどんどん流暢になってくる。実のところ二人きりになってから翻訳ソフトを通していないにもかかわらず、女は少々複雑なこちらの言い回しを理解できているようだ。
思えば先程息子の方が親子鑑定のことで口を挟んだ際にも、この女は難なく理解したふうだった。
彼女は中国語を理解している――というよりも本当は流暢なはず。
女との触れ合いの中で周は陰謀を確信したのだった。
29
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる