極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,080 / 1,212
陰謀

24

しおりを挟む
「――そうか。だったら望み通りにしよう。今日から共に暮らそう」

「…………え?」

「あんたと息子は俺の家に来て一緒に住めばいい」
「……住むって……。でも……だったらあの人は? あなたが結婚してるっていうあの冰とかいう……」
「出会ったのはあんたが先だ。しかも血を分けた息子までできていたんだ。冰には悪いが出て行ってもらう」
「出……ッて、そんな……ッ! あの人を追い出すつもり……?」
「構わんだろう? それがあんたたち母子の望みだ。早速今夜から俺の家へ移ってもらう。冰には――当分ここで何不自由ない生活をしてもらい、いずれ彼の為に新しい住まいを見繕ってやればいい。何も知らなかったとはいえ俺はあいつと結婚していたんだ。そのくらいの温情は許して欲しいところだ」
 話は決まった。早速家へ帰って親子三人、仲睦まじく共に暮らそうと微笑んでみせる。周は女の肩をグイと引き寄せながら言った。
「十五年ぶりの夜だ。今宵はたっぷり愛し合おうじゃねえか」
 華奢な顎を持ち上げて瞳を細める。今にも口づけられそうな雰囲気に女は思わず顔を背けた。
「待って……! 待って周さん! アタシたちは……何もそこまで望んでるわけじゃないの……! あなたと冰さんの仲を裂くつもりもない……。アタシはただ……あの子を息子だと認めてもらえればそれで満足なの。一緒に暮らすとか……そんな図々しいことは言わないわ……! ただ……あなたに息子を……」

「認めて金を都合してくれればいい――そういうことか?」

 見上げた周の真顔に圧倒されるように、女はガタガタと細い身体を震わせた。
「……周……さ」
「あんたは俺を好いてなどいない。本当の夫婦家族となって俺に抱かれるなど以ての外だ――そう思っている。言語が曖昧だというのも嘘だ。ただひとつ真実があるとすれば、それは是が非でも俺に息子のことを認知させたい。つまり目的は金か? 本当のことを言ってもらおうか」
 格別に脅すような口ぶりではなかったものの、まるで動じない真顔――感情の見えない真顔でそう言われて、女は返す言葉さえ失ってしまったようだった。ガタガタと身を震わせて『ここまでか――』とでも言わんばかりにギュッと瞳を閉じている。

「李、俺だ。引き上げるぞ」

 落ち着いた声音が耳に飛び込んできて頭上を見上げれば、スマートフォンを手にした周が隣の部屋の李にそう告げていた。
「待って……周さんッ! アタシたちは……」
「あんたらは当分ここで過ごしてくれて構わん。いずれその目的も明らかになろう」
「……そんな……」
 それ以上言葉にならずに立ちすくむ女の元に、コネクティングルームからやって来た李ら三人が姿を現した。
「老板――」
「今日のところは引き上げる。行くぞ」
 周はしっかりと冰の肩を抱き寄せると、李らを伴って部屋を後にしていった。

 部屋に残された女は呆然――身動きさえできずに男たちの後ろ姿から視線さえ外せないままだ。
「……母さん」
 息子にそう呼び掛けられてようやくと我に返る。そのまま糸に切れた人形のように彼女はソファへと崩れ落ちてしまった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

処理中です...