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三千世界に極道の涙
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「は……ん! 俺を刺そうってか!? てめえにそんな勇気があるかね? 慣れねえモン、チラつかせて脅そうったってそうはいかねえ! 返り討ちにしてやるわ!」
代田は涼音の首根っこを掴み上げると、そのまま盾にするように彼女を自分の前へと突き出した。
「どうだ、刺せるもんなら刺してみやがれ! てめえがこの涼音とデキてるのを知らねえとでも思ってたか?」
代田は余裕でせせら笑う。ところが汰一郎は焦る様子もなく、代田に――いや、涼音にとっても驚くようなことを口にしてみせた。
「ふ……ははは! 代田サン! あんた、何も解っちゃいないよ! そんなことしたって無駄さ」
「何を!? 強がってんじゃねえわ! 涼音がどうなってもいいってのか!」
「いいも悪いも――僕にとってその女はあんたと同様、恨んでも恨み切れない相手なんだよ!」
「……な……んだと!?」
驚いたのは代田だけではない、涼音は驚愕というように顔色を真っ白にして絶句状態だ。汰一郎だけが平静のまま、薄ら笑いを続けていた。
「その女――涼音はね、僕にとってあんたと同じくらい憎い相手の娘なのさ! そいつの父親は……株でしくじったことを俺のせいにしたんだ! 俺が薦めたブツで大損したから……その分そっくり補填しろと言いやがった……。出来ないなら会社に訴える、何なら出るところに出ようとまで言い出して脅しやがった! 俺は仕方なく身銭を切って払わされる羽目になった……。一千万だぞ! 俺にとっちゃ大事な金だった……。それなのに――」
汰一郎は拳を握り締め、歯軋りをする勢いで先を続けた。
「この地下街へ出入りするようになったのは会社の接待で偶然だった。だが、そこで涼音を知り、その親父があの時の客だと知った時は……運命だと思ったさ! それと同じであんたが……二十年前に俺の両親を殺した代田憲が――俺の勤める会社と取引している銀行にいると知った……。しかも頭取の息子だって? あんたの同僚にそれとなく話を聞けば、あんたはあの頃と何ひとつ変わっちゃいないならず者だった……。頭取の息子ってのをいいことに仕事はいい加減、同僚や先輩にまで威張って手に負えないクズだと知った。その時の俺の気持ちが分かるか……? お前らに人生を狂わされた俺の気持ち……絶対に復讐してやると誓ったよ……」
汰一郎は手にしていたナイフに力を込めると、怒りの為か真っ赤に紅潮させた顔で二人を睨みつけた。
「二人共……まとめてぶっ殺してやる……! 覚悟しろッ!」
汰一郎はそのまま二人を目掛けて突進した。
一方、鐘崎と紫月も武器庫の中から怒鳴り合いのようなものが聞こえてくるのを感じて、扉を開けんと必死になっていた。
「ヤツはこの中だ! もしかしたら汰一郎も一緒かも知れん!」
「クソ……鍵が掛かってやがる」
「ここの鍵は確か――南京錠だったな……。かなり頑丈だ」
鐘崎は紫月に少し下がっているように言うと、体当たりで蹴破ることにした。
何度か蹴りを繰り返し、やっとのことで南京錠が外れる――。中へ踏み込んだ二人を待っていたのは驚くような光景だった。なんと汰一郎が腹から血を流して横たわっていたからだ。
代田は涼音の首根っこを掴み上げると、そのまま盾にするように彼女を自分の前へと突き出した。
「どうだ、刺せるもんなら刺してみやがれ! てめえがこの涼音とデキてるのを知らねえとでも思ってたか?」
代田は余裕でせせら笑う。ところが汰一郎は焦る様子もなく、代田に――いや、涼音にとっても驚くようなことを口にしてみせた。
「ふ……ははは! 代田サン! あんた、何も解っちゃいないよ! そんなことしたって無駄さ」
「何を!? 強がってんじゃねえわ! 涼音がどうなってもいいってのか!」
「いいも悪いも――僕にとってその女はあんたと同様、恨んでも恨み切れない相手なんだよ!」
「……な……んだと!?」
驚いたのは代田だけではない、涼音は驚愕というように顔色を真っ白にして絶句状態だ。汰一郎だけが平静のまま、薄ら笑いを続けていた。
「その女――涼音はね、僕にとってあんたと同じくらい憎い相手の娘なのさ! そいつの父親は……株でしくじったことを俺のせいにしたんだ! 俺が薦めたブツで大損したから……その分そっくり補填しろと言いやがった……。出来ないなら会社に訴える、何なら出るところに出ようとまで言い出して脅しやがった! 俺は仕方なく身銭を切って払わされる羽目になった……。一千万だぞ! 俺にとっちゃ大事な金だった……。それなのに――」
汰一郎は拳を握り締め、歯軋りをする勢いで先を続けた。
「この地下街へ出入りするようになったのは会社の接待で偶然だった。だが、そこで涼音を知り、その親父があの時の客だと知った時は……運命だと思ったさ! それと同じであんたが……二十年前に俺の両親を殺した代田憲が――俺の勤める会社と取引している銀行にいると知った……。しかも頭取の息子だって? あんたの同僚にそれとなく話を聞けば、あんたはあの頃と何ひとつ変わっちゃいないならず者だった……。頭取の息子ってのをいいことに仕事はいい加減、同僚や先輩にまで威張って手に負えないクズだと知った。その時の俺の気持ちが分かるか……? お前らに人生を狂わされた俺の気持ち……絶対に復讐してやると誓ったよ……」
汰一郎は手にしていたナイフに力を込めると、怒りの為か真っ赤に紅潮させた顔で二人を睨みつけた。
「二人共……まとめてぶっ殺してやる……! 覚悟しろッ!」
汰一郎はそのまま二人を目掛けて突進した。
一方、鐘崎と紫月も武器庫の中から怒鳴り合いのようなものが聞こえてくるのを感じて、扉を開けんと必死になっていた。
「ヤツはこの中だ! もしかしたら汰一郎も一緒かも知れん!」
「クソ……鍵が掛かってやがる」
「ここの鍵は確か――南京錠だったな……。かなり頑丈だ」
鐘崎は紫月に少し下がっているように言うと、体当たりで蹴破ることにした。
何度か蹴りを繰り返し、やっとのことで南京錠が外れる――。中へ踏み込んだ二人を待っていたのは驚くような光景だった。なんと汰一郎が腹から血を流して横たわっていたからだ。
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