極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,133 / 1,212
封印せし宝物

しおりを挟む
「こんなこと白龍にも言えないんですが……。実は俺、最近ちょっとおかしくて」
「おかしいって? どっか体調面で不安があるとかか?」
「いえ……。でもまあ体調にも少し関係があるのかも知れません。俺、時々すごく怖くなるんです」
「……!? 怖いって、どんなふうに?」
 これは思っていたより深刻なのか――そう思った紫月はなるべく混乱させないように穏やかな表情で冰を見つめた。ところが直後に冰から飛び出したひと言にますます目を丸めさせられることとなった。

「ボウズ……」

「――え?」

「ボウズって、白龍が言うんです。その、小学生くらいの男の子に対して呼び掛ける時とかに」
「……? ボウズ?」
 思いもよらない話し向きに紫月は驚きつつも眉根を寄せさせられてしまった。
「前に皆んなで香港に行った時のこと覚えてますか? 台湾から来ていた王子涵君っていう男の子を預かってくれないかってメビィさんに言われた時のことです」
「ああ! うん、もち覚えてっけど」
「その時が初めてだったかな。白龍が子涵君に向かって『ボウズ』って呼び掛けたんです。俺、その時は何となく不思議な感覚でしかなかったんですけど……この前道を歩いてた時に目の前で男の子が転んだんです。白龍はすぐに駆け寄ってその子に手を差し伸べたんですが、その時も『ボウズ、怪我はないか?』って訊いたんです。そのすぐ後でした。俺、急にワケもなく怖くなって……身体が震え出しちゃって……」
「……つまり冰君は氷川が小学生くらいの兄ちゃんを『ボウズ』って呼ぶのを聞いて急に怖くなっちゃったってことか?」
 コクコクとうなずきながらも冰はギュッと苦しそうに瞳を瞑った。
「紫月さんは……『兄ちゃん』って呼ぶんですね。鐘崎さんはどうなのかな……? 小学生くらいの男の子に話し掛ける時……。やっぱり『ボウズ』でしょうか」
「うーん、そうだな。そう言う時もあるかもだし、遼なら『おい、ガキんちょ』とかも言いそうだな」
「……そっか。鐘崎さんらしいですね」
 冰は苦しそうにしながらも弱々しく笑った。
「その呼び方が――気になるんか? 冰君だったら『キミ』とか『坊や』とか言いそうだよな?」
「……そうかも……ですね。紫月さん、俺……初めて白龍に助けてもらった時、その時も白龍は俺のことをボウズって呼んだんです。その呼ばれ方はすごく印象に残ってて、そう呼ばれるのが好きだった……。とても大切な思い出だったんです。でもその大好きな思い出が……怖いと思うようになるなんて」
 ギュッと両の拳を握り締めカタカタと身を震わせ始めた様子に、紫月は「大丈夫だよ、怖くない」というようにそっと冰の肩を包み込んだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...