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封印せし宝物
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会わずにケーキだけが届けられていたことで、冰の中では捉え方が違ったのかも知れない。まあ何かひとつくらいは楽しかったことも覚えていたいと思ったとしても不思議はない。あるいはそのクリスマスケーキには格別な思い入れがあったのか、いずれにせよ周に対する思いは『自分を助けてくれたお兄さん』という、有り難い恩人でしかないというふうに自らの記憶を封じ込めてしまったのではないかというのが鄧の見解だった。
「クリスマスケーキって……もしかしてアレか? ほら、このリビングにも飾ってあるけど」
紫月がハタと思い付いたようにソファから腰を浮かせては、とある一点を指差した。
「あのジュエリーボックス。去年のクリスマスに氷川が冰君に贈るっつって、俺と遼も付き合ってさ。例の丸の内の宝飾店で選んだべ?」
鐘崎もまた、そのことはよく覚えていたようだ。透明なジュエリーボックスの中にはもう古くなった柊の葉のオーナメントと共に、当時冰から届いたというお礼のクリスマスカードが飾られている。
「氷川が昔贈ったケーキに付いてたオーナメントを冰君が未だに大事に持っててくれたっていうやつ! あのオーナメントってケーキに最初っからくっ付いてくるやつじゃなくて、氷川が特別にオーダーしたって言ってたべ?」
「だから冰はその時のケーキのことだけは覚えてたってわけか」
「ああ……。俺もまさか冰があんな物を未だに大事にしてくれていたとは知らなくてな。あいつ、この汐留に来てからも毎年クリスマスになると密かにあのオーナメントをツリーに飾ってくれていたらしい。去年偶然にも真田が気付いてくれてな。それであのジュエリーボックスを贈ろうと決めたんだ」
「こっちのカードはクリスマスケーキのお礼にっつって、冰君から届けられたんだべ?」
「ああ。それが届いた時には本当に嬉しくてな。俺もずっと大事に取っておいたんだが――」
だからこうしてその時互いに贈り合ったオーナメントとカードを飾ってあるわけか。鐘崎も紫月も、酷く驚いてはしばらく上手くは言葉にならなかった。幼かった冰が当時からどれほど周を慕っていたかがよく分かるエピソードといえる。もちろんそれは今のような恋情や愛情とは別のものだったろうが、本当の兄のように思い、頼みに思っていたのだろうことが窺えるからだ。周もまた幼子からのカードを大切に取っておいたのだ。当時から二人が互いを大事に思っていたことがよくよく窺える。
「クリスマスケーキって……もしかしてアレか? ほら、このリビングにも飾ってあるけど」
紫月がハタと思い付いたようにソファから腰を浮かせては、とある一点を指差した。
「あのジュエリーボックス。去年のクリスマスに氷川が冰君に贈るっつって、俺と遼も付き合ってさ。例の丸の内の宝飾店で選んだべ?」
鐘崎もまた、そのことはよく覚えていたようだ。透明なジュエリーボックスの中にはもう古くなった柊の葉のオーナメントと共に、当時冰から届いたというお礼のクリスマスカードが飾られている。
「氷川が昔贈ったケーキに付いてたオーナメントを冰君が未だに大事に持っててくれたっていうやつ! あのオーナメントってケーキに最初っからくっ付いてくるやつじゃなくて、氷川が特別にオーダーしたって言ってたべ?」
「だから冰はその時のケーキのことだけは覚えてたってわけか」
「ああ……。俺もまさか冰があんな物を未だに大事にしてくれていたとは知らなくてな。あいつ、この汐留に来てからも毎年クリスマスになると密かにあのオーナメントをツリーに飾ってくれていたらしい。去年偶然にも真田が気付いてくれてな。それであのジュエリーボックスを贈ろうと決めたんだ」
「こっちのカードはクリスマスケーキのお礼にっつって、冰君から届けられたんだべ?」
「ああ。それが届いた時には本当に嬉しくてな。俺もずっと大事に取っておいたんだが――」
だからこうしてその時互いに贈り合ったオーナメントとカードを飾ってあるわけか。鐘崎も紫月も、酷く驚いてはしばらく上手くは言葉にならなかった。幼かった冰が当時からどれほど周を慕っていたかがよく分かるエピソードといえる。もちろんそれは今のような恋情や愛情とは別のものだったろうが、本当の兄のように思い、頼みに思っていたのだろうことが窺えるからだ。周もまた幼子からのカードを大切に取っておいたのだ。当時から二人が互いを大事に思っていたことがよくよく窺える。
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