極道恋事情

一園木蓮

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封印せし宝物

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 周にはなぜ冰が不安や恐怖を感じるのか、その原因が遠い日に封印してしまった記憶を思い出し掛けているのだろうという本当の理由が分かっていただけに、まさか焼きもちだなどという答えを導き出すとは思ってもみなかったからだ。
 きっと冰なりに悩んで、その『どこかに置いて来てしまった大切なもの』の正体を一生懸命思い出そうと考えた結果なのだろう。正直なところまるでトンチンカンな答えだが、そんなふうに考えていてくれる冰が愛しくて堪らない気持ちにさせられてしまった。
「焼きもちか――。だったら俺にとっちゃすげえ嬉しいことだがな。他所の子供らには感謝せにゃならん」
「……白龍ったら、そんな……」
「本当だぞ。お前に焼きもちを焼いてもらえるなんてこんなに嬉しいことはねえ」
「……うっとうしくない? 何だかすごく情けなくなっちゃってさ、俺」
「うっとうしいもんか! それだけお前に想われてるって証拠だろうが。うっとうしいどころか嬉しくて顔がニヤけちまうくれえだ」
「白龍ったら……。でもありがとう。そんなふうに言ってもらえて」
 周は今一度しっかりと華奢な肩を抱き包みながら言った。
「だがな、冰。お前が不安になる原因はおそらく焼きもちとは別のもののように思うぞ。大事な何かをどこかに置き忘れたように感じるなら、それは焼きもちというよりもっと違うものなのかも知れん。俺はそれを一緒に探してやりたいと思っている」
 だから一人で悩む必要はない。怖がることもない。常に一緒にいて、一緒に探していこう。周はそう言った。
「白龍、ありがと……。ごめんね、俺」
「俺たちは一心同体だ。お前は俺で、俺はお前。だから一人で悩みの中を突っ走るなよ? 俺を置いていかねえで欲しい。常に頼って欲しい。お前と一緒に探して一緒に見つけたいんだ」
 俺を置いて行くなという周の言葉が、迷える冰の心に深く染みるようだった。
「そうだ、冰。香港に着いたら渡したいものがあると言ったろう?」
 周は胸ポケットに手を突っ込むと、小さなそれを取り出して冰の手に握らせた。

「――これ……?」

「時が来たら――お前に渡そうと思っていた」

 掌に握らされた小さなそれ――冰にとっては長い間見慣れた懐かしいものだった。何故これが今ここにあるの――? というふうに、驚きと同時に冰の双眸がみるみると潤み出す。
 それは黄老人と共に住んでいたアパートの部屋の鍵だったからだ。
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