極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,151 / 1,212
封印せし宝物

23

しおりを挟む
「――どこかに大事な何かを置き忘れてきたように思うそうだな?」
「……うん。でもそれがどこなのか、何なのかが分からなくて」
「それで理由わけも無く不安になるんだな?」
「……うん」
「それはいつ頃からだ?」
「……んと、紫月さんにも言ったんだけど、本当に最近なんだ。もしかしたらもっと前からだったのかも知れないけど、一番強く不安になったのは……ちょっと前に男の子が目の前で転んだ時。白龍が駆け寄って助け起こしたでしょ?」
「ああ。あの時のボウズな」
 つい自然と口に出てしまったその言葉に冰はビクリと肩を震わせた。
「そう……それ……。白龍があのくらいの男の子をボウズって呼ぶのを聞いて……急に心臓がドキドキしてきて……怖くなっちゃったんだ」
「――すまない、冰。怖がらせるつもりはなかった」
 つい口が滑ってしまったことに、周自身配慮が足りなかったと思えど、こればかりは仕方ないといったところか。
「だが――そうだな。それは俺の口癖なのかも知れんな。あのくらいの年頃の子供を見るとついそんなふうに呼んじまうんだろうな。まあ、カネも似たように呼ぶかも知れんが」
「だよね。紫月さんもそう言ってた。鐘崎さんならボウズとかガキんちょとか呼びそうだよなって」
「そうかもな。俺とカネは似た者同士だからな。お前や一之宮ならもっと丁寧に呼びそうだな」
 不安を拭い取ってやるようにしっかりと抱き包みながら周は穏やかに笑んで、温かい頬と頬を擦りつけるように重ねた。
 その温もりに安心感を得たのだろうか、冰もまた『ごめんね』と言いながらも少しの笑みを見せた。
「うん……紫月さんは『兄ちゃん』って言ってた。俺だったら『坊や』とか『ボク』とか言いそうだよなって」
「そうだな。お前や一之宮らしい呼び方だ」
「ね、白龍。俺さ、あれから考えてみたんだ。何で白龍が『ボウズ』って呼ぶのを聞くとドキドキしたり怖くなったりするのかなって。それでね、思ったの。もしかしたらそれは――俺のヤキモチなのかも知れないって」
「焼きもち?」
 周にしてみれば思いもよらなかった理由だ。
「……うん。初めて会った時、白龍が俺のこと『ボウズ』って呼んでくれて、俺はそれがすごく印象に残っててさ。ボウズっていうのは自分だけの特別な呼ばれ方だって、勝手にそんなふうに思ってたんじゃないかって。だから白龍が他の子にそう呼ぶのを聞いて、白龍が盗られちゃう気になってるのかなって」
 これにはさすがの周も驚かされてしまった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...