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封印せし宝物
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「ほら、冰。出来立ての熱々だから気をつけて食えよ」
真っ白い湯気の立つ饅頭を渡されて、それをじっと見つめる。
『熱々だからな。気をつけて食え』
前にも誰かがそう言った気がする。
あれは誰だったのだろう。
しばし呆然としながら饅頭を握り締めていた冰の傍らでは、鐘崎と紫月が大慌てといったような声を上げていた。
「わっ……! こりゃ餡饅頭じゃねえか!」
鐘崎が苦虫を噛み潰したような表情で慌ててドリンクで喉に流し込んでいる。甘い物が苦手な彼が口にしたのが餡子のぎっしり詰まった饅頭だったようだ。側では紫月もまた慌てた素振りで、『悪ィ悪ィ』と頭を掻いている。
「俺ン方が肉饅頭だったべ!」
交換するべと紫月はタジタジだ。周も鄧海も微笑ましげに笑っていたが、冰はまたしても心逸る思いに心拍数が騒ぎ出すのだった。
(交換……そうだよ、交換……。前にもこんなことがあった……。お饅頭を交換して食べたんだっけ)
ただやはり、その相手が誰で、自分とどのような関係だったのかが思い出せない。
少し年の離れた誰かだったような気はするのだが、当時の自分がそんなふうに親しくしていた相手が思い当たらないのだ。
(学校の先生だったのかな……? さっきもアパートで宿題を見てもらったような気がしたっていうか、幻みたいのが浮かんだけど……)
パクっとひと口、そんなことを思いながら饅頭をかじる。
「あ……俺のは肉饅頭だ」
「全部真っ白で印が付いてねえからな。日本だと中身によって饅頭のてっぺんに食紅で印が付けてあったりするんだがな」
食べてみないと中身が分からないなと言って周が笑う。
「白龍のは? やっぱりお肉?」
そう訊くと、周は穏やかに微笑んでみせた。
「いや、俺のはピザ味のようだな」
「ピザ……」
「なんだ、お前もこっちの方が良かったか?」
周はニコリと笑い、交換するか? と言って饅頭を差し出した。
「あ、うん……。いいの?」
「もちろん! どっちの味も楽しめるのは夫婦のいいところだな」
そう言って笑い、交換した饅頭を美味そうに齧る笑顔が心に染みる。何気ない仕草でも格好いいと思って見とれてしまうのは、夫婦となって何年経っても変わらない。
「白龍……ホント何をしてもカッコいいんだもん」
ポツリと呟き、頬を染めながらもピザ味の饅頭をふうふうと頬張った。
トマトソースに彩られたピザ味の中身を見つめながら、そのオレンジ色がまたしても心を逸らせる。
(そうだよ……。前にも同じことがあった。このお饅頭の中身の色……ピザ味も食べたいって思ってたら、あのお兄さんが交換してくれたんだ)
お兄さん――?
饅頭を交換してくれたのはどこかの『お兄さん』だったというわけか。
(そうだよ……アパートで宿題を見てくれたのも同じお兄さんだ……。すごくやさしくて、俺の頭を撫でてくれて……俺に向けてくれる目がすごくあったかかったお兄さん……)
あの人はいったい誰だったの……?
未だ霞が掛かったその顔の部分が思い出せない。
冰は不思議な感覚にふわふわと雲の上を歩くような心持ちで饅頭を握り締めたのだった。
真っ白い湯気の立つ饅頭を渡されて、それをじっと見つめる。
『熱々だからな。気をつけて食え』
前にも誰かがそう言った気がする。
あれは誰だったのだろう。
しばし呆然としながら饅頭を握り締めていた冰の傍らでは、鐘崎と紫月が大慌てといったような声を上げていた。
「わっ……! こりゃ餡饅頭じゃねえか!」
鐘崎が苦虫を噛み潰したような表情で慌ててドリンクで喉に流し込んでいる。甘い物が苦手な彼が口にしたのが餡子のぎっしり詰まった饅頭だったようだ。側では紫月もまた慌てた素振りで、『悪ィ悪ィ』と頭を掻いている。
「俺ン方が肉饅頭だったべ!」
交換するべと紫月はタジタジだ。周も鄧海も微笑ましげに笑っていたが、冰はまたしても心逸る思いに心拍数が騒ぎ出すのだった。
(交換……そうだよ、交換……。前にもこんなことがあった……。お饅頭を交換して食べたんだっけ)
ただやはり、その相手が誰で、自分とどのような関係だったのかが思い出せない。
少し年の離れた誰かだったような気はするのだが、当時の自分がそんなふうに親しくしていた相手が思い当たらないのだ。
(学校の先生だったのかな……? さっきもアパートで宿題を見てもらったような気がしたっていうか、幻みたいのが浮かんだけど……)
パクっとひと口、そんなことを思いながら饅頭をかじる。
「あ……俺のは肉饅頭だ」
「全部真っ白で印が付いてねえからな。日本だと中身によって饅頭のてっぺんに食紅で印が付けてあったりするんだがな」
食べてみないと中身が分からないなと言って周が笑う。
「白龍のは? やっぱりお肉?」
そう訊くと、周は穏やかに微笑んでみせた。
「いや、俺のはピザ味のようだな」
「ピザ……」
「なんだ、お前もこっちの方が良かったか?」
周はニコリと笑い、交換するか? と言って饅頭を差し出した。
「あ、うん……。いいの?」
「もちろん! どっちの味も楽しめるのは夫婦のいいところだな」
そう言って笑い、交換した饅頭を美味そうに齧る笑顔が心に染みる。何気ない仕草でも格好いいと思って見とれてしまうのは、夫婦となって何年経っても変わらない。
「白龍……ホント何をしてもカッコいいんだもん」
ポツリと呟き、頬を染めながらもピザ味の饅頭をふうふうと頬張った。
トマトソースに彩られたピザ味の中身を見つめながら、そのオレンジ色がまたしても心を逸らせる。
(そうだよ……。前にも同じことがあった。このお饅頭の中身の色……ピザ味も食べたいって思ってたら、あのお兄さんが交換してくれたんだ)
お兄さん――?
饅頭を交換してくれたのはどこかの『お兄さん』だったというわけか。
(そうだよ……アパートで宿題を見てくれたのも同じお兄さんだ……。すごくやさしくて、俺の頭を撫でてくれて……俺に向けてくれる目がすごくあったかかったお兄さん……)
あの人はいったい誰だったの……?
未だ霞が掛かったその顔の部分が思い出せない。
冰は不思議な感覚にふわふわと雲の上を歩くような心持ちで饅頭を握り締めたのだった。
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