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封印せし宝物
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しおりを挟むまさか白龍は知っているの――? その人が誰なのかっていうことを。
腕の中の冰は華奢な身体を震わせていた。抱き締めた腕を伝って次第に鼓動の脈打つ音が大きくなっていくのをはっきりと感じる。
「知ってる」
「……!? 本当に……?」
「ああ」
「もしかして……白龍のお友達……とか?」
友達というよりは側近の誰かだった可能性もある。周があの事件以来、毎月欠かさずに金銭的な援助を続けてくれていたのは事実だ。直接会いにこそ来なかったとしても、自分たちを気に掛けて側近の誰かに様子見に来させてくれていたのかも知れない。だが、そうではなかったようだ。
「いや――そうじゃねえ」
「……違うの?」
「違うな」
周はまるで会話を楽しんでいるかのように穏やかで嬉しげに笑む。
「少し――このままでいていいか?」
「白龍……?」
抱き締めたまま二人で街並みを見つめる。
「冰――。そいつはな、お前のことをひどく大事に思ってた。本当の弟のように思ってたのかも知れない。お前と一緒に過ごす時間が楽しくて、何より幸せに思っていたはずだ。だがな、その幸せな時がずっと続かないことも知っていた。当時そいつは――あと少ししたらこの香港を離れなければならなかったからだ」
「…………え?」
「叶うことならずっとお前の側で過ごしたかった。一緒に宿題をして、公園を散歩して、饅頭を交換して食って。お前が元気で笑ってる顔を見てることが何よりの安らぎだったんだ。もちろんずっとそうすることもできただろう。何もかもを捨てて、お前と黄のじいさんと三人で生きる人生も選べたはずだ。だが――ヤツはそうしなかった。幼いお前をこの香港に置いて、てめえは異国に行っちまう。そんな薄情な自分が情けなくて堪らなかった」
「白……龍……」
「それが――あの頃のお前が慕っていたお兄さんの正体だ」
「白龍……それって」
「本当はお前に慕ってもらえる価値なんざねえ薄情な野郎だ。幼いお前を置いてこの香港を離れたことが――ただひとつのそいつの後悔だ」
冰の瞳がみるみると見開かれていく。夕陽に染まる香港の街並みを映しては、大きな瞳の中でゆらゆらと高層ビル群の景色が揺れる。
「白……龍……? もしかして……あのお兄さんは」
白龍だったの?
そう訊きたいながらも、驚きの為か上手くは言葉にならないようだ。周は未だ抱き締めたままで静かにうなずいた。
「すまない、ボウズ――。俺がお前を置いてこの香港を離れたのは事実だ」
時が――止まる。
ボウズ、坊主、ぼうず――その言葉が頭の中で幾度も幾度もこだまする。
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