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封印せし宝物
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「じゃあ、じゃあ……やっぱり……あのお兄さんは白龍……?」
「――そうだ」
「……ッ! え……あの……だって、じゃあ……」
「俺だ」
しっかりと身を寄せ合ったまま、まさに時が止まったかのように景色の中、二人だけの姿が周囲から切り離されて、別の次元にいるような感覚に陥っていく。
頬を撫でる風の音、観光客らのはしゃぐ声、それらの雑踏が耳に戻ってきた時は相変わらず周に抱き締められたまま、その脇には鐘崎や紫月、鄧海が自分たちを囲むようにして側にいてくれた。
「あの……じゃあ俺は……あの頃白龍と一緒に過ごしたことがあったの?」
「そうだ。お前が見た幻影は事実だ。当時俺は月に二度ほどお前とじいさんの家を訪ねて――お前と一緒に過ごしていた時期があった」
「あのお兄さんがほんとに白龍……? だったら俺……どうしてそんな大事なことを忘れちゃってたんだ……」
未だ夢幻の中から抜け出せずといったように瞳を揺らす冰に、鄧海が穏やかな口調で助け舟を差し出した。
「冰君、キミはね、当時たいへんな高熱を出したことがあったんだ。街の医者も原因が分からずにサジを投げる始末――。そんな中で焔君はお父上と兄上に頼んでファミリー専属の医者に診せてやってくれとキミを連れて来た。私も父と一緒に診察に当たったんで、当時のことはよく覚えているんだ」
周に代わって鄧海がその時の一部始終を丁寧に順を追って話して聞かせてくれた。
当時の冰の高熱は原因が分からなかったこと。まだ子供の冰にとっては命の危険が考えられるほどの高熱だったこと。それを下げるには強い薬を使わなければならず、副作用としてこれまでの記憶を失くしてしまう可能性があったことなどだ。
「焔君と黄氏は例えキミが自分たちのことを忘れてしまっても構わない、とにかくキミの命を救って欲しいとおっしゃってね。私と父は投薬を決めた。熱は下がり、キミは焔君のことも黄氏のことも覚えていてくれた。ただやはり薬の副作用で焔君と過ごした約一年間の記憶を失くしてしまったんだよ」
鄧海はその原因についても事細かに説明を加えた。
「キミが高熱を出したのは焔君がいずれ香港を離れるという話をキミに告げた日の数日後だった。キミは焔君と会えなくなることがとても辛かったのだろうね。幼いキミにとって毎日泣き暮らすだろう日々を本能で感じていたのかも知れない。そうなればキミ自身も苦しいし、黄氏にも心配を掛ける。焔君との楽しい日々の記憶に鍵を掛けることで心を保とうとしたのだと思うよ」
ただし、今は周と共に暮らしていて幸せな状態にある。当時鍵を掛けたそれをそろそろ思い出してもいいのではないかという心の安寧によって、冰君の中で記憶が顔を出そうとしているのだろうねと付け加えた。
「――そうだ」
「……ッ! え……あの……だって、じゃあ……」
「俺だ」
しっかりと身を寄せ合ったまま、まさに時が止まったかのように景色の中、二人だけの姿が周囲から切り離されて、別の次元にいるような感覚に陥っていく。
頬を撫でる風の音、観光客らのはしゃぐ声、それらの雑踏が耳に戻ってきた時は相変わらず周に抱き締められたまま、その脇には鐘崎や紫月、鄧海が自分たちを囲むようにして側にいてくれた。
「あの……じゃあ俺は……あの頃白龍と一緒に過ごしたことがあったの?」
「そうだ。お前が見た幻影は事実だ。当時俺は月に二度ほどお前とじいさんの家を訪ねて――お前と一緒に過ごしていた時期があった」
「あのお兄さんがほんとに白龍……? だったら俺……どうしてそんな大事なことを忘れちゃってたんだ……」
未だ夢幻の中から抜け出せずといったように瞳を揺らす冰に、鄧海が穏やかな口調で助け舟を差し出した。
「冰君、キミはね、当時たいへんな高熱を出したことがあったんだ。街の医者も原因が分からずにサジを投げる始末――。そんな中で焔君はお父上と兄上に頼んでファミリー専属の医者に診せてやってくれとキミを連れて来た。私も父と一緒に診察に当たったんで、当時のことはよく覚えているんだ」
周に代わって鄧海がその時の一部始終を丁寧に順を追って話して聞かせてくれた。
当時の冰の高熱は原因が分からなかったこと。まだ子供の冰にとっては命の危険が考えられるほどの高熱だったこと。それを下げるには強い薬を使わなければならず、副作用としてこれまでの記憶を失くしてしまう可能性があったことなどだ。
「焔君と黄氏は例えキミが自分たちのことを忘れてしまっても構わない、とにかくキミの命を救って欲しいとおっしゃってね。私と父は投薬を決めた。熱は下がり、キミは焔君のことも黄氏のことも覚えていてくれた。ただやはり薬の副作用で焔君と過ごした約一年間の記憶を失くしてしまったんだよ」
鄧海はその原因についても事細かに説明を加えた。
「キミが高熱を出したのは焔君がいずれ香港を離れるという話をキミに告げた日の数日後だった。キミは焔君と会えなくなることがとても辛かったのだろうね。幼いキミにとって毎日泣き暮らすだろう日々を本能で感じていたのかも知れない。そうなればキミ自身も苦しいし、黄氏にも心配を掛ける。焔君との楽しい日々の記憶に鍵を掛けることで心を保とうとしたのだと思うよ」
ただし、今は周と共に暮らしていて幸せな状態にある。当時鍵を掛けたそれをそろそろ思い出してもいいのではないかという心の安寧によって、冰君の中で記憶が顔を出そうとしているのだろうねと付け加えた。
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