極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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「そういやさ、今日懐かしいヤツに会ったわ。高校ン時の一コ下の野郎でさ、三春谷ってヤツ!」
 お前も覚えがないか? と訊く。
「三春谷? ああ、あの剣道部だったヤツか?」
 高坊の時はよくうちのクラスに顔を出していたなと言う。鐘崎はほとんどしゃべった覚えもなかったのだが、紫月のところにしょっちゅう来ていたので記憶していたのだ。
「今は就職して都内に住んでるらしくてさ。実家帰って来んのも久々だとかって言ってた。ちょうど祭りの屋台組んでる時に会ってな。卒業以来だから、会うのは十三、四年ぶりだって」
「ほう? じゃあ懐かしかっただろう」
「まあね。すっかりいい社会人って感じだったわ。何でも建築関係の会社に勤めてるとか」
 鐘崎にとっては特に興味を覚える相手でもないが、元気にやっているなら良かったなと言って、三春谷についてはそれきり話題に上がらないまま夕膳を囲んだ。

 その彼と再び顔を合わせることになったのは、次の週末のことだった。たまたま用事があって紫月が実家の道場へ顔を出していた時だ。三春谷が突然訪ねて来て驚かされることとなったのだ。
「おう! 三春谷じゃねえのー」
 応対に出た綾乃木に呼ばれて紫月が顔を出すと、三春谷は緊張気味の固い表情でおずおずと頭を下げてよこした。
「すみません、突然押し掛けて……」
「いや、構わねえよ。どした? 今日も実家帰って来たんか?」
「ええ……。実は俺、この秋に結婚することが決まりまして」
 それでここ最近は割と頻繁に帰って来ているそうだ。
「結婚かぁ! そいつはおめでとう!」
 紫月は心からの笑顔で嬉しそうに祝福の言葉を口にした。
 ご両親もお慶びだろう! とか、嫁さんは地元の人? とか、満面の笑みと共にいろいろと話し掛ける。三春谷にしてみれば、何のアポイントも無しに押し掛けたにしては嫌な顔ひとつせずに歓迎してくれることには有り難く思えども、実のところ今ひとつ喜びきれない心の内が重くもあった。その理由は、今目の前にいる紫月の存在そのものだった。

 三春谷は高校時代からこの紫月に憧れていた。道場育ちであり、武道の腕前は大尊敬に値するひとつ学年が上の誇れる先輩――。だが、その性質は誰に対してもフレンドリーでとっつき易く、話していると気持ちが和む。他の上級生とは違って、先輩だからと威張りもしない。学年が下の自分が彼ら上級生のクラスを訪ねて行った際にも、まるで仲の良い弟か友人のように迎えてくれた。
 その性質の良さもさることながら、特筆すべきは完璧なまでの容姿だ。顔立ちは同じ男から見ても羨ましいほどに整った、超がつくほどの美形。少し茶色掛かった天然癖毛の柔らかな髪、くっきりとした二重の大きな目は笑顔によく似合う。陶器のような滑らかな肌質は至近距離で見たならば生きた人間のものとは思えないほどだ。
 そんな美麗な容姿を裏切るように武術の腕は最高峰。なのに性質は極めて気さくだ。彼に憧れていた下級生は三春谷だけではなかっただろう。
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