極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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 そんなおりだ。上司からとある仕事の件で用を言いつけられた彼は、とんでもない策略を思い巡らすことになる。その仕事とは、近々行われるビルの解体実験に関することだった。元々数社が協力してシステム作りに携わってきたのだが、三春谷の勤める建設会社もまた、その実験に名を連ねていたからだ。その資料を役員室に届けるようにと言われて、ふと邪な思いが過ってしまったのだった。
「あの解体か……。もしかしたら……あれに乗じれば、上手いことあのヤクザ野郎を始末できるかも」
 それは汐留付近で行われることになっているビルの解体実験だった。周焔の元へもその解体にちなんだ説明が配布されていた――例の発破解体である。その爆破に巻き込めば、自分自身は手を汚さずに鐘崎を葬ってしまえる。三春谷はそう思ったのだ。
「……ッ、どうすれば俺自身が疑われずにあのヤクザ野郎を嵌められる……」
 とにかくは鐘崎をあの発破解体の現場へ誘い込む必要がある。しかも万が一事が上手く運んだとして、その後で自身の関与が疑われずに単なる事故として処理される手を考えなければ意味がない。
「こうなったら……見ず知らずの誰かを雇うしかねえ。どうにかして鐘崎をあの場所へ誘き出さなきゃ始まらない」
 解体までは日も迫ってきている。綿密な計画を練るにしても日にち的には余裕がないのも事実だ。それに、結婚式までも半年を切っている。もしもこの計画が失敗に終わったら、自分は何食わぬ顔をして予定通りに結婚すればいい。紫月を諦めるのは残念だが、必ずしも失敗に終わるとは限らない。だが、万が一「失敗に終わった」際の保険として、今の婚約者とも上手くやっておけば痛手が少なくて済む。上手くいって紫月が手に入れば婚約者の方を捨てればいい――三春谷は無意識にもそんな大それたことを思い巡らせているのだった。
 変な話だが所詮は紫月に対する想いもその程度ということだ。まるで子供が目の前のおもちゃを欲しがるように我が侭で身勝手な計画が幕を上げようとしていた。



◇    ◇    ◇



 数日後、三春谷はネットで雇った匿名の相手との連絡に忙しくしていた。報酬は二十万円だ。その仕事内容とは鐘崎組若頭の鐘崎遼二を呼び出すこと。そこで鐘崎にほんの少し指示した通りのことを伝えるだけでいい。たったそれだけで二十万円という利のいいバイトに飛びつく相手はすぐに見つかった。
 三春谷はその相手と直に会うことはせず、すぐに破棄できる捨てアカウントを作り、アプリを使って鐘崎に伝える内容や落ち合う場所などを細かく指示していた。
 その場所というのは発破解体が行われるビルが目視できる海沿いの遊歩道、日時は解体が行われる予定日で、時間は解体決行の五時間前を指定した。爆破時刻は深夜〇時だ。つまり、鐘崎とバイトを落ち合わせるのは夜の七時である。その際、会って話す内容も事細かに決められていた。
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