極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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 鐘崎遼二に会ったら、あんたは私立探偵だと名乗ること。
 依頼人は彼の妻を追いかけ回している男で、鐘崎の素行調査を頼まれたと伝えること。
 ただし、依頼人に対して胡散臭く思うところがあった為、調査対象である鐘崎にその事実を伝えに来たと、そう話すだけでいい。

 それで報酬の二十万円を支払うという約束だ。

 金は最寄駅のコインロッカーに入れておく。ロッカーのすぐ隣にある男子トイレの個室に鍵をガムテープで貼り付けておく。水洗タンクの蓋の裏だ。鐘崎と落ち合って話が済んだら、金を受け取って仕事は終了。即行でアプリを削除し、お互いのことは忘れること!

 実行部隊の男にとってもそれだけで二十万円が手に入るなら万々歳だろう。
 そんな計画が練られているなど夢にも思わない鐘崎と紫月の方では、しばしの間平穏な日々を過ごしていた。



◇    ◇    ◇



 そうして解体当日がやってきた。
 夕刻、鐘崎は幹部の清水を伴って指定された遊歩道へと出向いた。内容が内容だけに紫月には特に知らせずに来たが、数日前に連絡があり、私立探偵と名乗る男から極秘密裏に会いたいと言われていたからだ。
「あんたが私立探偵か――?」
「はい、中田友也といいます。新宿で小さな探偵事務所を開いています」
 中田と名乗ったアルバイトの男は名刺を差し出しながらそう言った。あらかじめ三春谷からコインロッカーを通じて受け取っていた偽の名刺だ。もちろんのこと『中田友也』というのも偽名である。
「お電話でもお伝えした通り、実はある人から鐘崎様についての素行調査を依頼されたのですが――。私もまがりなりに探偵なんていう商売をしている者です。鐘崎様はその世界では有名でいらっしゃいますし、調査を頼んできた依頼人がどうにも気に掛かる人物でして。もちろん依頼は断りましたが、念の為鐘崎様にこのことをお伝えすべきかと思った次第です」
 男は三春谷からの指示通りにそう話した。
「――話は分かった。それで――その依頼人というのは?」
 探偵である以上守秘義務というのものがあろうが、依頼自体は断ったというし、何よりこうしてわざわざ事情を暴露しに来ているくらいだ。鐘崎はダメ元でそう尋ねた。
「ええ、本来でしたらお伝えするのは避けるべき事柄です。ただ……鐘崎様に隠しておくのは気が引けます。依頼人の名前だけは伏せさせていただきますが、鐘崎様の奥様と懇意にしていると言っていました」

「――なるほど」

 三春谷からはそれだけの情報で、鐘崎という男は依頼人が誰であるかおおよその見当がつくはずだと言われていた。案の定その通りの反応を見せた鐘崎に、中田と名乗った探偵はそろそろ引き上げ時と思ったようだ。
「では私はこれで……。あとのご判断は鐘崎様にお任せいたします」
「――ああ。情報に感謝する」
 男は深々一礼と共にその場を後にした。
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