極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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 一方、三春谷の方は、現地が目視できるホテルの一室にいた。
「ふ――! あと三十分を切った……。もうあとちょっとであいつはお陀仏だ。ふ……ふふふ、……あはははは!」
 グラスに注いだ酒を高々と掲げて窓に映す。
「爆破と同時に乾杯だ! 午前〇時、日付が変わった時には――俺は勝者だ!」
 ネットで雇ったバイトの男にこちらの素性は一切教えていない。連絡に使ったアプリは既に削除した。ここのホテルを予約する際も、東京から遠く離れた地方の適当な住所と適当な偽名を使った。チェックインの際にはフロントを介さずに設置されたタブレットの操作だけで誰にも顔を見られずに部屋まで入れるタイプのホテルだ。婚約者の女には今夜は残業で電話はできないと伝えておいた。
 これで今ここに三春谷という人間がいたことすら誰も知らなかったことにできる。
(明日、いや……二、三日置くべきかな。少し経ってから鐘崎が死んだことを知って驚いたと言って紫月さんに会いにいこう。最初は同情して、一緒に悲しんで、あの人の信頼を得て。そうやって会う機会を増やしていけばいい。あの人も旦那を亡くしたばかりで寂しいはずだから、きっと俺を頼ってくれるはずさ! そしたら俺が思う存分慰めてやるから。二人で新しい人生を始めればいいじゃない。ねえ、紫月さん!)
 口元に浮かぶ笑みを止められないまま、三春谷は今か今かと爆破が決行される時間を待っていた。

 同じ頃、源次郎の方は汐留へと向かう車中から必死になって発破解体を担っている各社への連絡を試みていた。だが、不幸なことにどこも留守電のアナウンスが流れるばかりで一向に通じなかった。

 爆破予定時刻まではあと二十分足らず――。

 誰もが祈るような気持ちで手に汗を握っていた。
「あと五分で着きます!」
 運転を買って出た春日野が叫ぶ。
 その頃、周と李らは一足早く現場のビルへと到着していた。いち早く救助が行えるように鄧の乗る医療車も出動、冰は鄧の手助けをせんとそちらに分乗していた。
 倉庫街を囲むように侵入禁止のテープが巡らされていたが、それらを突き破ってビルの真横へと車を着ける。
「GPSは間違いなくここを指してる! 急ぐぞ!」
 小さなビルといっても五階建てくらいはありそうだ。このビル内のどの部屋に鐘崎らが居るのかは分からない。手当たり次第に探すしかなかった。
「皆、聞け! このビルの至る所に爆破解体の仕掛けが施されているはずだ! 時間は無えが極力冷静に各部屋を探ってくれ!」
 周が伴って来た側近ら全員が各階に散らばって、人海戦術でくまなくビル内を探す。ちょうど紫月らも到着して、すぐさま探索に加わった。
「遼ーッ! どこだッ! 返事しろ!」
「若! 若ーッ!」
 全員が張り裂けんばかりの絶叫で鐘崎らに呼び掛ける。そんな中、とある部屋の前で異臭を感じ取った紫月が、ふと立ち止まった。
「この臭い……! クロロフォルムか……!? いや、エーテルか……」
 それはクロロフォルムと思わしき意識を刈り取る危険な薬品の香りだった。
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