極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,199 / 1,212
絞り椿となりて永遠に咲く

31

しおりを挟む
 一時間後、汐留の医療室では鄧が鐘崎と清水の容体を診ながら治療に忙しなくしていた。捜索に携わった者たちも念の為全員が医療室で鄧の部下である医師たちの診察を受けていた。ビル内に充満した薬品の影響を受けていればいけないからだ。
 幸い、周や紫月以下、全員がこれといって体調に変化は見られず無事だったことに安堵させられる。鐘崎と清水の衣服に残っていた薬品の臭いから、クロロフォルムかエーテルのような薬品をばら撒かれた可能性が指摘された。
「遼二君たちを動かすのは危険です。しばらくこのままここの医療室で入院してもらい、経過を見ましょう」
 外傷はなく命に別状はないものの、長時間に渡って薬品を吸い込んでしまったことに変わりはない。安静にして逐次目の届くところで容体を診てくれるという鄧に、紫月らは感謝の思いでいっぱいだった。
 また、源次郎の方では警視庁の丹羽修司へと一報を入れ、すぐに丹羽が周邸へと駆け付けて来た。事情を聞いた丹羽はひどく驚いたようだ。
「まさかそんなことがあったとは……。それで、鐘崎の容体は?」
「命に別状はないとのことですが、強い睡眠剤で未だ目を覚ましておりません。意識が戻れば詳しい経緯も分かりましょうが……」
 源次郎は鐘崎がスーツの上着に保管していた名刺を丹羽へと差し出した。
「今のところ手掛かりはこの名刺しかありません。運転手の話では、若たちはこの私立探偵という男に会いに行った先で事件に巻き込まれたと思われます」
 源次郎は名刺の指紋から犯人を割り出せないかと丹羽に助力を要請。
「分かりました。すぐに前科者指紋との照合を行ってみます!」
 源次郎らは周邸に戻ってからすぐに私立探偵の男がよこしたその名刺の住所を調べに当たったが、記載先はでたらめで、探偵事務所そのものが存在しなかった。もしもこの名刺の中田友也という男が何かしらの前科で逮捕歴があれば、指紋からすぐに素性が割れるはずだ。
 ところが、丹羽からの報告で彼に前科は無いようだとのことだった。
「前科者ではありませんでしたが、駐車違反の際に取得された指紋からこの男の素性が割れました! 今、捜査員を向かわせています!」
 中田友也というのも当然か偽名だったとのことで、本名は上坂譲というらしい。フリーでコンピューター関係の仕事をしているらしく、住まいは埼玉県だそうだ。
「埼玉の上坂――とな。聞き覚えのない名前ですな」
 住所からも名前からも思い当たらない見知らぬ相手だ。
「裏の世界の関係者という線も捨てきれませんが、もしかすると闇バイトの類で実行犯として雇われただけとも考えられます」
 源次郎が考え込む中、周の方では李と劉がその上坂譲という男の素性を更に詳しく洗ってみることにした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...