極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
1,202 / 1,212
絞り椿となりて永遠に咲く

34

しおりを挟む
「――こうは考えられねえだろうか。もしかしたら音声だけで誘き寄せられたのかも知れない……」
「音声だけといいますと……録音か何かで誰かが言い争う声を若たちに聞かせたということでしょうか?」
 その想像に誰もが互いを見合わせて静まり返る。
「ふむ――案外この想像で当たりかも知れんな。上坂以外に別の実行役を雇うとなれば更に報酬が必要になってくる。その人数が増えれば金が掛かるのはむろんだが、口止めをする手間も増えるということだ。それなら三春谷本人が動いた方が確実だし利もいいだろうな」
「言い争う音声はドラマなどの乱闘シーンを録音すれば簡単ですな。若たちがビル付近を通り掛かった頃合いを見計らってその音声を流し、ビルに誘い込んだとすれば……」
「三春谷一人でも犯行は可能ということになるな……」
 急ぎ、昨夜の三春谷のアリバイについて調べが進められることとなった。

 そして昼過ぎ。
 皆で手分けして三春谷の近辺を洗ったところ、昨夜は帰宅していなかったらしいことが浮かび上がってきた。
「三春谷の住むアパートの隣近所に聞き込んだところ、昨夜は帰宅した様子がなかったことが判明しました。いつもは夜の十時過ぎには大概帰宅しているそうですが、昨夜は部屋の灯りも点いていなかったようです。隣には一人暮らしの大学生が住んでいて、夜遅くまで起きているようですが、いつも夜中の十二時過ぎまで壁越しにテレビの物音などが聞こえていたそうです」
 それが昨夜はまったく静かだったことから、今夜は留守なのだろうと思ったそうだ。
「また、アパートの管理人が宅配便を受け取っていて、夜に三春谷が帰って来たら渡そうとしていたようですが、昨夜は管理事務所でもヤツを見掛けなかったと言っています」
 ということは、どこかに泊まって来たと考えられる。
「念の為、川崎の実家と婚約者のアパートの方にも探りを入れましたが、どちらにも立ち寄った形跡はありませんでした」
 組員と側近たちからの報告を受けて、周と源次郎は三春谷の所在について思い巡らせていた。
「もしかしたら解体現場が目視できる場所から様子を窺っていた可能性も考えられるな……。本当にカネたちが爆破に巻き込まれたかどうかを確かめるつもりだったとすれば――」
「――! 急いであの辺りのホテルを当たってみます!」
 解体現場の様子が見渡せるホテルといえば限られてくる。周と源次郎は至急ホテルに出向いて直接聞き込みに当たることにした。警視庁の丹羽に言って刑事を二人ばかり貸してもらい、ホテルを回ったものの、どのホテルでも三春谷という名の客が宿泊したという痕跡は見当たらなかった。
「クソッ! どこもハズレか」
 まあ、実名で泊まったとは考えにくいものの、洗い出しには少々時間が必要だ。
「今、丹羽君のところの刑事さんらが各ホテルで防犯カメラを当たってくれています」
 運良く三春谷が映っていればいいのだが、とにかくは待機しかない。
 陽が傾き出し、夕刻を迎えようとしている。今ひとつ決定打となる証拠が掴めない中、医療室から鐘崎らの意識が戻ったとの朗報が届けられた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...