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一園木蓮

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6. Red Zone

Red Zone 1話

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 唇を重ね合わせた瞬間から嬌声まがいの吐息ががこぼれ出してしまうのを抑えられない、とめられない。
 顔を交互にするのもまどろっこしくて、キスだけじゃ到底足りなくて、次へ次へと欲しがることをやめられない。
 こんなくちづけをしたのはいつ以来だろう、もしかしたら初めてなのかも知れない。
 時に少し強引で、だがとびきり素直で甘やかで、何気ない仕草の端々に雄の色香を漂わせているような男。同僚ホストであり、今ではナンバーを競い合う龍の腕に抱かれながら、波濤は大胆なほど欲に身を任せていた。

 同僚ホストの龍と深い仲になってから、彼の住むこの部屋を訪ねるのはもう何度目になるだろうか、初めの内は何かにかこつけながら通っていたこの部屋。ナンバーワン同士、もう少し懇意になっておいた方がいいんじゃないかと半ば強引に誘われたのが始まりだった。
 その次は酔ったから家まで送ってくれないか――その次は何だったか、いつの間にか押し切られるような形でここへ来ることを、心の片隅で待ち焦がれるようになってしまった。
 会うのにいちいち理由などいるのだろうか、そんな疑問すら湧かなくなるほどに今では彼にハマってしまっている。
 最近は格別な用事がなくとも、時間が空けばいつの間にか二人でこうしていることが多くなった。会って食事をして買い物をして、そしてこの部屋に寄ってから帰宅する。いや、近頃では帰宅するのさえ面倒になって、そのまま泊まってしまうことも多い。言葉に出して認めないだけで、既に熱愛カップルも同然だ。しかも気持ちの比重がどんどん重くなり、今では自分の方が彼を欲しているのは紛れもない事実のような気がしていた。

 龍とのデートは、まるで本能に任せた獣のように激しく互いを求めて抱き合うこともあれば、単にテレビや雑誌を見ながら寄り添って過ごすだけの時もある。極端だと思うほどに濃厚な時と淡白な時が交互する。しかも抱かれない時に限って、普段よりもベタベタと甘え、甘やかし――といった濃いスキンシップで扱われたりするから、たいそう始末が悪かった。
 今にも唇が触れ合いそうな距離感で観るテレビの内容など頭に入るはずもない。
 胸元で甘えるように、ずっしりと体重を預けられ寄り掛かられたり、だからといってそれ以上は何をするでもなく、借りてきたDVDに観入っている様子などを横目にすれば、何ともモヤモヤとした欲情まがいの気分が苦しくてたまらない。そんなふうに焦らされた日の帰宅後は、次にプライベートで会う時までの間が結構な苦痛になったりするから、尚厄介だった。
 かといって出勤後の店内で遠目にその姿を追えば、接客中の様子に少しの焼きもちでチクリと心が痛み出す。たまに廊下などですれ違えば、瞬時にときめき、心拍数が加速する。では店がハネて帰宅をし、独りになればなったで、今度は悶々とした妄想が次から次へと湧き上がってきてやまない。抱き合っている最中の、少し余裕のない彼の表情などを思い起こせば、ゾワゾワと背筋がうずき出すのを抑えられなかった。
「……っそ……こんな……ん、ヤベえって……のに!」
 龍と深い仲になって以来、客との枕営業もすっかり絶ってしまった。彼以外の誰かと身体を重ねる気になれなくなったからだ。
 それだけではない。
 自慰の仕方も以前とはまるで変わった。
 今までは単に欲を解放すればそれで終わりだったはずの、いわば儀礼的な処理では物足りなくなっている。
 ベッドにもぐって全裸になれば、まるで本当に抱かれているような錯覚に陥り、気付けば荒くなった吐息をかいくぐって嬌声までもがこぼれ出し、独りで何をやっているんだと呆れつつも最早止められない。脳裏を巡る映像の赴くままに従うしかなかった。
「……っは……龍……龍、そう……もっと、そこ……じゃねえ……もっと奥……まで」

 そう、めちゃくちゃにしていいよ。ブッ壊れるまでられてえ――お前になら何されてもいい!
 龍――!

 躊躇いも恥じらいもなく、大きな嬌声と共に欲を吐き出す瞬間は堪らない。まるで幽体離脱でもしたかのように、頭の中が真っ白になって昇天寸前になる。
 しばらくそのまま放心し、呼吸が落ち着いてくるまでの数分間は夢見心地だ。
 寝乱れた枕に伝う自身のやわらかい髪が頬にまとわり付いただけで、新たな欲情がチラホラと喉元あたりを熱くする。

 アイツの髪は俺のそれとは違って濡羽色ぬればいろのストレート――

 自身の猫っ毛が白いシーツの上で泳ぐ感覚だけで、正反対の彼の髪質を思い出しては、甘くうずく胸の痛みが苦しかった。
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