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マフィアの花嫁
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「逆も然りだ。俺がお前を傷つけるようなことを言ったとしても、それはその場を切り抜ける為に必要な演技であり、策であると信じ通せ。俺は決して――本気でお前を裏切ったり見捨てるようなことはしねえ。例えば爆弾のタイマーがあと数秒で爆発するような状況に陥ったとしたなら、お前と一緒に爆死することを選ぶ。迷わず選ぶ。決して一人で逃げたりはしねえ。だから俺を信じろ――!」
それがどんな状況でも、絶対に諦めたりしない。それでもどうにもならなかったとしたなら、その時は一人で逝かせるようなことはしない。
生きて互いの腕の中へ戻ることだけを考えて全力を尽くすんだ。自信を持って堂々とマフィアの花嫁でいろ――。
「やさしいお前には酷なことかも知れねえが、時にはそういう強さも必要な世界に俺たちは生きている」
「白……龍……。うん……うん! ごめんなさい、俺……クヨクヨして」
「ん、分かればいい」
まるで仔犬を抱き締めるかのように大きく逞しい腕ですっぽりと包み込みながら、濡れた嫁の頬を指で拭った。そのままグイと抱え上げて有無を言わさず寝所へと運ぶ。
「よし、冰。生きていることを確かめ合うぞ」
ベッドへと押し倒して、周は自身のシャツを逸るように脱ぎ捨てた。
「白龍……お風呂……」
「そんなもんは後だ。お前は俺の――マフィアの嫁だってことを――身体と心に叩き込まにゃならんからな」
言い終わるか終わらない内にビッとシャツを引き裂かれた。
「白……ッ」
まるで強姦するように激しい欲が襲い来る。
もう長らく共に暮らして、幾度情を重ねたか分からない。だが、周がこれほどまでに激しく求めてくることは今までに無かった。いつもやさしく、そして熱く、愛おしむように抱いてくれた。でも今日の彼は違う。
覚えておけ、冰――。
俺はマフィアで、お前はその伴侶だということを。
まるでそう云うかのように凶暴なくらいに奪われて、冰はその焔の熱さを嫌というほど覚えさせられるのだった。文字通り、心も身体も――周焔の伴侶であることを叩き込まれんばかりに、熱くて激しい焔渦巻く地中深くに引き摺り込まれるかのようだ。
二人でいれば――決してこの手と手を離さなければ、例えどんな業火の中でも怖くはない。そんな思いが脳裏を過ぎり、気が遠くなって意識を失うほどに激しく長く、永遠と思えるほどに永い夜の渦中に二人で堕ちていったのだった。
それがどんな状況でも、絶対に諦めたりしない。それでもどうにもならなかったとしたなら、その時は一人で逝かせるようなことはしない。
生きて互いの腕の中へ戻ることだけを考えて全力を尽くすんだ。自信を持って堂々とマフィアの花嫁でいろ――。
「やさしいお前には酷なことかも知れねえが、時にはそういう強さも必要な世界に俺たちは生きている」
「白……龍……。うん……うん! ごめんなさい、俺……クヨクヨして」
「ん、分かればいい」
まるで仔犬を抱き締めるかのように大きく逞しい腕ですっぽりと包み込みながら、濡れた嫁の頬を指で拭った。そのままグイと抱え上げて有無を言わさず寝所へと運ぶ。
「よし、冰。生きていることを確かめ合うぞ」
ベッドへと押し倒して、周は自身のシャツを逸るように脱ぎ捨てた。
「白龍……お風呂……」
「そんなもんは後だ。お前は俺の――マフィアの嫁だってことを――身体と心に叩き込まにゃならんからな」
言い終わるか終わらない内にビッとシャツを引き裂かれた。
「白……ッ」
まるで強姦するように激しい欲が襲い来る。
もう長らく共に暮らして、幾度情を重ねたか分からない。だが、周がこれほどまでに激しく求めてくることは今までに無かった。いつもやさしく、そして熱く、愛おしむように抱いてくれた。でも今日の彼は違う。
覚えておけ、冰――。
俺はマフィアで、お前はその伴侶だということを。
まるでそう云うかのように凶暴なくらいに奪われて、冰はその焔の熱さを嫌というほど覚えさせられるのだった。文字通り、心も身体も――周焔の伴侶であることを叩き込まれんばかりに、熱くて激しい焔渦巻く地中深くに引き摺り込まれるかのようだ。
二人でいれば――決してこの手と手を離さなければ、例えどんな業火の中でも怖くはない。そんな思いが脳裏を過ぎり、気が遠くなって意識を失うほどに激しく長く、永遠と思えるほどに永い夜の渦中に二人で堕ちていったのだった。
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