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着陸
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どこまでも広がり、限りなく澄んだ青空。
この上ない晴天が覆う地上は春の陽気に包まれていた。
そんな一見するとのどかな雰囲気の中、いつもより騒がしい場所があった。
かなたに地平線を見せるほど広大な離着陸場、膨大な質量に耐えうる頑強な舗装の施されたそれは、空に向かって大きく口を広げていた。
周囲には管制塔が聳え立ち、はるか上空からの来客を今か今かと待ち構えている。
『地球防衛軍所属第参拾陸艦隊に告ぐ、十一番着陸場へ着陸せよ。繰り返す、十一番着陸場へ着陸せよ』
管制官が宇宙艦隊に対して着陸の指示を行う。宇宙艦隊を構成する各艦はそれに従い指定された着陸場を目指していく。
『第参拾陸艦隊を構成する全十七隻の艦艇の収容準備が整いました。着陸が完了し次第、順次船渠に格納します』
管制官たちは着陸場地下の宇宙艦艇用船渠と連絡を取り合いながら着陸後の作業手順を確認する。
彼らは管制室に備え付けられている複数の画面を見つめながらそれぞれの仕事を全うしていた。
この時すでに対象の艦隊は大気圏内をゆっくりと降下しており、複数の艦艇が着陸することを考えるともたもたしている暇はない。
地上に備え付けられた電探と各艦艇の保有する電探で互いの距離を測る。
宇宙船の離着陸には電探が欠かせず、そこから得られた情報を基に的確に離着陸指示を与える必要がある。
わずかな失敗が大きな事故を招く恐れのある中、各員緊張感をもって業務に徹する。それは宇宙船の乗組員も同様であった。
「地上の管制塔からの指示通り、本艦隊は地球防衛軍松島中央基地十一番着陸場へ着陸する。各艦艇は旗艦である本艦に続き、順次着陸せよ」
着陸にかかわる情報が次々と各艦に伝達され、それぞれの船は着陸準備に取り掛かる。そしてこちらもまた地上からの情報などを基に精密な操艦が求められていた。
「こちら順調に降下中。現在高度六万米」
離着陸に関しては自動制御装置なども機能しているため、人間の行う作業は限られている。しかし装置に不具合が発生した場合など、常に最悪の事態を想定して行動しなければならない。
現に操縦室では各員が各々の担当する計器などを確認しながら異常など起きていないか気を配っている。
真空を航行していた宇宙船が大気圏に突入するときは特に船体に負荷がかかりやすく、様々な装置の破損を招く危険地帯となる。
光子力推進器、電探、船内空調などの重要な装備に損耗が生じていないか、常に神経をとがらせる。
そんな乗組員たちの努力の甲斐もあってか、各艦さしたる問題もなく順調に高度を下げていった。
地上で管制官が機械の画面とにらめっこしている中、いよいよ宇宙船が肉眼で見える距離まで降下してきていた。
最初は空に浮かぶ小さな粒に過ぎないものだったが、見る見るうちに巨大化し視界を覆いつくさんばかりの巨体をこれでもかと見せつけてくる。
それもそのはず、地球防衛軍の保有する宇宙船は小型のものでも数十米、超大型艦になると全長三百米を優に超えるものまで存在する。
現に、今まさに地球に帰還しようとしている第参拾陸艦隊旗艦の宇宙戦艦やくもは全長三百四十米を誇る弩級戦艦である。
それだけ巨大な船が降りてくれば、その迫力に圧倒されるのも無理はない。
ましてや間近で見ようものなら恐怖すら感じるかもしれない。
そんな巨大な戦艦がゆっくりゆっくりと地面に近づく。
船の底部には光子力推進機や半重力推進器が取り付けられており、膨大な質量をもつ船の重量を支えている。
果てしない大きさの金属の塊がそれら人類科学の英知によって空に浮かぶさまはまさに圧巻の光景であった。
この上ない晴天が覆う地上は春の陽気に包まれていた。
そんな一見するとのどかな雰囲気の中、いつもより騒がしい場所があった。
かなたに地平線を見せるほど広大な離着陸場、膨大な質量に耐えうる頑強な舗装の施されたそれは、空に向かって大きく口を広げていた。
周囲には管制塔が聳え立ち、はるか上空からの来客を今か今かと待ち構えている。
『地球防衛軍所属第参拾陸艦隊に告ぐ、十一番着陸場へ着陸せよ。繰り返す、十一番着陸場へ着陸せよ』
管制官が宇宙艦隊に対して着陸の指示を行う。宇宙艦隊を構成する各艦はそれに従い指定された着陸場を目指していく。
『第参拾陸艦隊を構成する全十七隻の艦艇の収容準備が整いました。着陸が完了し次第、順次船渠に格納します』
管制官たちは着陸場地下の宇宙艦艇用船渠と連絡を取り合いながら着陸後の作業手順を確認する。
彼らは管制室に備え付けられている複数の画面を見つめながらそれぞれの仕事を全うしていた。
この時すでに対象の艦隊は大気圏内をゆっくりと降下しており、複数の艦艇が着陸することを考えるともたもたしている暇はない。
地上に備え付けられた電探と各艦艇の保有する電探で互いの距離を測る。
宇宙船の離着陸には電探が欠かせず、そこから得られた情報を基に的確に離着陸指示を与える必要がある。
わずかな失敗が大きな事故を招く恐れのある中、各員緊張感をもって業務に徹する。それは宇宙船の乗組員も同様であった。
「地上の管制塔からの指示通り、本艦隊は地球防衛軍松島中央基地十一番着陸場へ着陸する。各艦艇は旗艦である本艦に続き、順次着陸せよ」
着陸にかかわる情報が次々と各艦に伝達され、それぞれの船は着陸準備に取り掛かる。そしてこちらもまた地上からの情報などを基に精密な操艦が求められていた。
「こちら順調に降下中。現在高度六万米」
離着陸に関しては自動制御装置なども機能しているため、人間の行う作業は限られている。しかし装置に不具合が発生した場合など、常に最悪の事態を想定して行動しなければならない。
現に操縦室では各員が各々の担当する計器などを確認しながら異常など起きていないか気を配っている。
真空を航行していた宇宙船が大気圏に突入するときは特に船体に負荷がかかりやすく、様々な装置の破損を招く危険地帯となる。
光子力推進器、電探、船内空調などの重要な装備に損耗が生じていないか、常に神経をとがらせる。
そんな乗組員たちの努力の甲斐もあってか、各艦さしたる問題もなく順調に高度を下げていった。
地上で管制官が機械の画面とにらめっこしている中、いよいよ宇宙船が肉眼で見える距離まで降下してきていた。
最初は空に浮かぶ小さな粒に過ぎないものだったが、見る見るうちに巨大化し視界を覆いつくさんばかりの巨体をこれでもかと見せつけてくる。
それもそのはず、地球防衛軍の保有する宇宙船は小型のものでも数十米、超大型艦になると全長三百米を優に超えるものまで存在する。
現に、今まさに地球に帰還しようとしている第参拾陸艦隊旗艦の宇宙戦艦やくもは全長三百四十米を誇る弩級戦艦である。
それだけ巨大な船が降りてくれば、その迫力に圧倒されるのも無理はない。
ましてや間近で見ようものなら恐怖すら感じるかもしれない。
そんな巨大な戦艦がゆっくりゆっくりと地面に近づく。
船の底部には光子力推進機や半重力推進器が取り付けられており、膨大な質量をもつ船の重量を支えている。
果てしない大きさの金属の塊がそれら人類科学の英知によって空に浮かぶさまはまさに圧巻の光景であった。
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