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2章 粛清と祭
第53話 本来の姿
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僕は全身が脱力し、今まで味わったことの無い快感に包まれる。
まるで、全神経が下半身に集中し、その快感の余韻が、太鼓を叩いた後のように全身へ響き渡る。
水の波紋が広がるように、手足の末端まで、ジワジワ、ビリビリと伝わっていく。
脳内に、幸福感と絶望感が同時に訪れた。
なんてこった。
…………失敗だ。
射精してしまった。
りさの膣内へ。
正常位で、間違いなく、しっかり中出ししている。
挿入してすぐだ。
早かった。
どうする?
打つ手なしか?
考えろ。
考えるんだ。
まだ何かできるはず。
耐えられなかったのなら仕方ない。
次の手を考えるんだ。
羽化するのか?
……ここで?
まだ大丈夫か?
とにかく、まずはりさの状態だ。
彼女の顔は赤く蒸気していて、嬉しそうに目を潤ませている。
可愛い。
僕の心臓が高鳴る。
ピクピクと全身を震わせ、どこか恥ずかしそうな感じもあった。
胸辺りも赤らんで、しっとり汗をかいている。
ピンクの乳首は両方とも勃起していて、眺めるだけでも吸いつきたくなった。
僕はつい、りさの完璧過ぎるボディに見惚れるが、そんな場合ではない。
視点が自然と下がってしまう。
繋がった僕とりさの股間を見て、冗談ではなく本当に鼻血が出そうだ。
これはマズい。
腰を引こうとしたが、両足でホールドされているので抜けなかった。
出したのに、まだ僕のモノは硬いままだ。
このままもう一回戦できるくらいだ。
だが、それはダメだ。
……抑制剤の効果は悪魔のしっぽ1本に対して、1回分の効果のみ。
飲んでから一発目だけだ。
連続射精しても単に精子が出るだけになる。
一応、マリンのしっぽもあるが、抑制剤の生成には自分の精子を取り込んでもらって12時間以上経過が必要。
マリンとの性交渉は一度も無い。
ちなみに、今ここにいないアカリに関しては、以前に口内射精していたが、サキュバス化する前の話だし、そもそも膣内で出さないと生成量が5分の1にも満たないとアカリは言っていた。
つまり抑制剤はもう無い。
抑制剤が子宮に吸収されるまで、余分に精子を入れてはならない。
多少なら問題ないが、精子の量が抑制剤を上回ると外へ押し出されてしまう。
このまま続けると抑制剤の効果自体を打ち消しかねない。
りさが下から腰を振っている。
僕は最後の神頼みで、彼女をイかせる事にした。
「せーちゃん、もう出してもーたん?ウチの膣内、そんな良かったんやなぁ」
「りさ、凄い気持ち良かったよ」
「そうなん?でも、まだ硬いやん、もしかして、アンタのおちんぽ、もっとやりたがってんのちゃう?」
「……そうかも」
「んふふ、ほな、もっと突いてもええで」
「うん、激しくしても大丈夫?」
「ええよ、ウチ、速くされんのも好きやねん」
「分かった」
僕は、腰を徐々に速くしていく。
快感はあるが、一度射精しているので、しばらくは耐えられる。
最後の悪あがきのようなものだが、もし今、抑制剤が効果を発揮しようとしているなら、ここでイかせれば多少はプラスに働くかもしれない。
ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん
「んお"っ、お"ぉ……ええやん……お"、んっ、すごい、いい、あっ、んっん"」
りさが唸るように喘いでいる。
射精したことで勢いが出たのか、腰を振るのも楽だ。
「ぜ、ぜーちゃん、ええでっ、ウチ、うちうちうち、お"お"、そこ、そこやで…………ぐぶぅ、う"ん……ええで……やれば出来るやん、……うち、できる子、好きやで………お"、お"まんこ、スゴイ、お"まんこが、おちんぽに、づかれて、……んっ、んんっ…………あ"、……ぞご、……ええで……ええんやで、ぉお"、ぉお"」
ずっと感じている表情だ。
りさのような美少女に、これだけ喘いで貰えるのは、ある意味で光栄なことだ。
僕はそのままピストンを続ける。
出してしまった後悔というか、無念というか、後戻りはできないという虚しさはある。
かといって、ヤケクソになる意味もない。
りさをサキュバスにしてしまったとして、そこからどうするかを考えなくてはならない。
僕がケルビンに言って、保護してもらうというのは不可能なのか。
いや、無理だろう、そんな事が許されているのなら、初めからその話を僕にするはずだ。
僕を仲間に引き入れたのも、サキュバスによる被害をいち早く止めなくてはならない事情があるのだ。
そうでなくては、こんな一般人の自分をデーモンハンターにしようなんて考えないだろう。
絶倫な男なんて、そんなに珍しくはないだろうし、組織立って動いているなら、こんな若造に助けを求めるリスクは冒さない。
またケルビンに窘められるだけだ。
「せーちゃ、ん"、お"、お"、うん……、ええで…………あ"っづ、んっんん………その調子や……ええで………お"」
ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん
「りさっ!りさっ!可愛いよっ、りさ」
僕は囁くようにりさに声をかける。
トロンとした表情で僕を見つめるりさ。
気持ち良さそうで、幸せそうだ。
僕はその顔を見れるのがもう最後の可能性を考えて、悲しくなる。
「せーちゃん、泣いてるん?……そんな気持ちええん?」
「いや、……これは、……違うけど、でも」
「でも?」
ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ
りさは、首を自分の右肩の方へ少し傾げながら腰を僕に合わせるように打ちつける。
明らかに「でも?」の言い方が甘えるようで狙っている。
僕が可愛いと言ったから、可愛く甘えた声を出しているのだろうと分かった。
自分に甘えてくる、スタイル抜群の美少女。
気持ちが昂ってくる。
さっき出したのに、すぐに射精感を高めてくるりさの行為に恐怖すら感じた。
「りさの可愛さに感動して流れた涙だよ」
「ふふっ、意味わからへん」
はにかむように笑うりさ。
意味の分からなさには同意だ。
だが、感動するほどに可愛い事に嘘はない。
僕は変化をつけるために、少し体重をかけて、1番奥までちんぽを突き入れる。
「お"お"、大胆な……入ってくるぅ」
「痛くない?」
「だい……じょう……ぶ」
「ほんと?……こっちの方が好きかなって思って」
「な"にが……」
「こうやってさ」
「ふぐぅ、お"ぶっ」
僕は最奥、Pスポットの辺りで、軽く円を描くように動きながらブルブルと震えてみる。
「あ"あ"あ"っ、あ"あ"あ"っ、ダメダメ、……あ"あ"あ"っ」
すごく良い反応だ。
さっきも騎乗位でこの振動が、かなり効いていた。
なら、正常位でも効くかも知れないと思ったが、成功らしい。
「コレ、好きだよね」
「う"ん、う"ん、すき、好き好き好きぃ……好き、好き、好き、好き、好き、お"、好き、好き、好き、好き」
りさが表情をトロンとさせたまま、うわごとの様に好き好きと繰り返している。
よく、壊れたおもちゃの様な、という形容をしているのを見るが、まさにそんな感じだった。
そろそろりさは限界なようだ。
僕は突き入れたペニスを震わせながら、彼女を抱きしめる。
すると、りさも好き好きと言いながら僕の背中に手を回してきた。
「好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、す……んちゅうっ、ん"むぅ」
りさにキスをする。
口の中に舌を入れて、舐めてみる。
それに応えるりさ。
「んっ、れろれろ、んっんっ、好き、んぅ……んっ、んむっ、しゅき、んっしゅきんっ、好きっ……ん、んむっ、んふっ、ふふっ、好き、んちゅっ、あー、レロレロ、んっ、んっちゅっ、んちゅ」
口内が熱く、りさの舌が柔らかくて気持ち良かった。
射精したおかげで、りさの舌を抵抗感なく味わえている。
柔らかくて気持ちよく、脳が溶けそうだ。
たぶん、りさも気持ちいいのだろうなと感じる。
僕は下半身をバイブの様に震わせながら、りさがイクのを待った。
僕も気持ち良いが、自分でコントロールしている分、さすがに耐えられる。
ラストスパートだ。
僕は震わせながらも奥にグリグリと突き入れ、細かくピストンした。
この動きはこちら側の負担も大きいが、きっと気持ち良くなってくれるはず。
「んむぅっ、あ"むっ、んむっ、んむっ、んむっんっんっむぅむぅ」
りさのディープキスが力任せになり、舌を僕の口の奥に押し付けてくる。
僕の背中を抱く両腕が強くなり、何かに耐えているようだった。
痛くないか聞きたいところだったが、彼女のキスが激しくて口を離せなかった。
この行為、本人もイこうとしている。
気持ち良くて、このまま果てようと思っているんだろう。
だから、僕を逃さないようにガッチリとホールドしているのだ。
体位を変えずに、奥で、小さく速いピストンを続ければ限界を迎えるはずだ。
僕は無心で腰を小さく振り続ける。
ぱちゅぱちゅ、ぱちゅぱちゅ、ぱちゅぱちゅ
小さな水音が聞こえる。
そろそろイキそうな様子だ。
膣の中がキュッと締まり、熱くてぬるぬるだ。
不思議と、濡れているのに引き締まっているので全く抜ける気配は無かった。
精子を搾り取るのがまんこだが、その器官としての役割は完璧にこなしている。
身体が抱き締められてるのと同じ力で、膣壁にちんぽが抱き締められていると感じる。
気持ちいい。
だが、自分が気持ち良くなることを優先してはいけない。
りさをイかせるんだ。
冷静さを欠いてはいけない。
耐えるんだ。
僕は、冷静になる為に、根源的なセックスについて考えてみた。
性行為とはなにか。
女が男に求める行為の中で、1番原始的で本能的な活動。
それが、好きな男との性行為。
正直なところ、りさにとって理想的な男が僕だとはとても思えない。
だけど、僕にとってりさは理想的な女性ではある。
サキュバス化が近い女の子でなかったら、僕が彼女とえっちする事は無かっただろうと思うと、運命的な物を感じる。
もし、普通に出会っていたら、りさとは友達になれただろうか?
女の子は、男を選ぶ時に、生存に有利な遺伝子を持っていそうな男を選ぶと、何かの本で読んだ事がある。
理由は明確で、男と違って、より強い子孫を増やす役割が、女性にはあるからだ。
女性を妊娠させても、その後に生物的な負担のない男とは違い、女性の場合、子供を産む為に、数ヶ月は普通に生活する事がままならなくなる。
女の子は、セックスのリスクが高い。
だから、芸能人や、プロのスポーツ選手のような、色んな能力の高い男を求める。
逆に能力自体が高くなくとも、落ち着いていて健康的で、よく笑う男は、女性から選ばれやすい、というわけだ。
全ての平均値が高い、健康な男をセックスの相手に選ぶ。
人気者がモテるのは当たり前というわけだ。
…………もっとも、そんな事は、サキュバスにとっては関係ないことだ。
そこを考えると、僕はりさの相手として相応しいとは言えず、もし完全な人間になったら、僕の事なんてすぐに忘れてしまうかもしれない。
何だか、やるせない気持ちだ。
……だけど、そうなると、……天使であるゆかは、僕の何を見て好意を持ってくれたのだろう?
しかも処女だったし。
「ぷはぁ」
りさが唇を離した。
「りさ、気持ちいい?」
「…………イク」
「どうしたの?」
「イク……イクイクイク…………んっ」
「りさ、可愛い」
「んんっ………イ…………ク………」
りさの腕の力が強くなり、僕もそれに合わせて彼女を抱き締めた。
「…………イク」
びくんっ!
と、りさの身体が大きく跳ねた。
膣壁がキュッと締まる。
僕のペニスにも快感が伝わり、射精感が高まった。
グっと耐える。
僕はりさを抱き締めた。
左の耳元で、彼女の吐息を感じる。
「はぁ、……んっ、…………イク………んっ……んっ」
長く痙攣しているようだ。
本当なら、ここで抑制剤を精子と共に射出できれば言う事は無かったのだが。
もう、仕方ない。
りさが気持ち良さそうにビクビクとしているのを見て、納得するしかない。
長い痙攣が終わり、息を整えるりさ。
ようやく落ち着いたようだ。
「イっちゃった………………え?」
突然、寒気がした。
背筋が凍る。
今まで暑かった部室の中に吹雪でも起こったのかと感じるほどだ。
恐る恐るりさを見ると、何だか、様子がおかしい。
そもそも、目の色が違う。
いや、比喩では無く、実際のカラーだ。
今まで、目が青みがかっていたのが、黒くなっている。
黒い瞳。アジア、というか、日本人らしい目の色……。
「あの、玉元くん、…………ですよね」
「…………はい?」
玉元くん?
「ウチの事…………抱いてます?」
「はい、……抱いてます」
……りさが、りさでは無い。
いや、りさはりさなのだが、さっきまでと空気感が全然違ったのだ。
もしかしてコレは…………。
「ウチ、玉元くんに変なこと言ってましたよね」
「変なこと?……と、申しますと?」
「あの、ぜったい、今、入ってますよね」
「入ってるってのは、あの、アレのことですよね」
「そうです。お腹の中に…………なんか、入ってるんですよ」
「……僕の、その、何というか」
りさが青ざめている。
彼女の呼吸が、さっきとは別の意味で乱れているように感じる。
不安と恐怖が入り混じったような、そんな感情が伝わってくる真剣さがあった。
「あの、一回、抜いて貰ってもいいでしょうか?」
「もちろん」
ちゅぽん、と、ペニスが抜けると、中から、ドロドロと白い精液と、抑制剤が流れ出てくる。
ちなみに抑制剤は、ほぼ透明だが、微かに青紫っぽい色が混じっているので、注意深く見れば識別は可能だ。
精液も時間が経つと透明になるので、抑制剤が見分けやすくなるそうだ。
まだ見分けた事はないが。
りさは上半身を起こし、自分で膣口に手を当てる。
その様子は、普通の女の子が、中出しされて困惑しているようにしか見えなかった。
「なんで、中に出したんですか?」
僕のことを見るりさ。
周囲に「え?」「何?」「んっ?」と、どよめきが起こる。
今のは、まふゆ、ゆい子、きょうこの声だ。
「……いえ、あの、事情があって」
僕は一瞬、絶句しそうになるのを、気合いで振り絞るように返答した。
「中出ししないといけない事情なんてあるんですか?」
氷のような口調から、明らかにりさが怒っているように見えた。
「無いです」
…………いや待て、コレは非常事態だ。
どう切り抜ける。
「あの、…………ちょっと、洗ってきます」
りさが立ちがる。
「……ぁあー、すごい垂れてくるやんコレ……もぉおおー」
彼女は自分の右手で僕の精液をすくう様にして取り、机の上にあったティッシュで拭いた。
りさは、制服の上だけザッと羽織ると、そのまま部室を出ようとする。
出る前に止まり、僕の方に向き直った。
「……あっ!玉元くん、そこに居てや!絶対やでっ、他の子らも見張っといてや」
僕は、せかせかと出ていくりさと、ドアが閉まるのを確認すると、チラッとあやかを見る。
背後からマリンの声がした。
「なんだアイツ?おかしくね?」
……そうか、マリンには、僕が抑制剤を使った事は伝えてなかった。
ちゆも反応した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
僕を心配している様子だ。
ちゆの声を聞いて、安堵する。
さすがに、いくら予想はできた事とは言え、あれだけ急変するとショックは大きい。
……これは、成功した…………のか?
「ありがとう、ちゆちゃん、僕は大丈夫だよ」
僕は、自分のパンツとスラックスを履きながらちゆに返事をした。
マリンがりさが出ていったドアの方をずっと見ている。
「りさってヤツ、散々よがってたクセに、急にビビって洗いに行くとか、情緒おかしいだろ?」
マリンは本当に不思議がっている。
本来なら喜ぶべき事のはずだが、りさの急変っぷりに、不安感が高まっていたせいで、正直、ちゆとマリンの言葉に助けられた。
心のどこかで、抑制に成功したら、りさからは、感謝とはいかなくとも、好意的には見てもらえるだろうとタカを括っていたのだ。
自覚のない楽観視だ。
予想外の反応では無い。想定可能な範囲で、コレはむしろ自然な反応だ。
なぜ覚悟できてなかった。
僕はバカだ。
……状況を理解して貰うのは絶望的な気がした。
だけど、どうしたら納得して貰えるのか全く分からない。
僕1人では無理だ。
手を見ると、軽く震えている。
……僕は今、恐怖を感じている。
ちゆとマリンには感謝だ。
まさか、純人間になったりさではなく、サキュバスの2人に慰められるとは予想外だった。
ある意味で、付き合いの濃さだけで言えば、この2人以上の関係はなかなかいない。
居てくれて良かった。
……ともかく、りさはさっきまでの行為をどう感じているのか、それが問題だ。
ここを明確にしておかないと、これからの抑制活動に支障をきたし兼ねない。
そうこうしてると、まふゆとゆい子が近付いてきた。
この2人も、りさの行動に困惑している様子だ。
「玉元さん、りさちゃん急に焦ってましたね。どうしたんでしょうか?玉元さんも平気ですか?」
心配してくれるまふゆ。
ゆい子も怪しんでいる。
「私がタマモトくんとやってた時は何も言わなかったのに、変だよね。急に人が変わったみたい。部長はどう思う?」
あやかに振るゆい子。
「……私から見ても、さっきと別人みたいだった。何か事情があるのかな?」
「例えば?」
ゆい子が反応する。
「…………二重人格、とか?」
「そんなわけ無いでしょ、部長、ミステリー読み過ぎ!」
「そうかなぁ、けど、そうでも言わないと納得できない変化だよアレは」
ゆい子のツッコミに、あやかも反論せざるを得ないくらい雰囲気が変わったのだ。
「私、先帰りますね」
後ろで聞いていたきょうこが帰ると言い出した。
そう言えば、すでに時計は19時を過ぎている。
「では、私も先に失礼することにします。りさちゃんの事は部長にお任せ致しますので、よろしくです」
まふゆも帰ると言い出した。
「あー、じゃあ私も帰るよまふゆ。帰りにお店寄ろうよ、お腹空いちゃった」
焦って帰ろうとするゆい子。
たぶん、りさの尋常では無い反応に対して怖がっている。この場に同席するのが気まずいのだろう。
ゆい子は僕と、思いっきりセックスしているので、色々聞かれるかもしれないし、逃げたくなる気持ちも分かる。
……だが、りさには、皆んなで僕を見張る様に言われている。
それを聞いておきながら、3人も帰宅すると言うのは、何か身の危険を感じているのではないだろうか。
きょうこが僕らの方を見て軽く会釈し、その後、しっかり頭を下げて出ていくまふゆ。
バタバタと小物をカバンに突っ込み、帰り支度をして教室を出ようとするゆい子。
僕の前を通り過ぎる時に、ゆい子が囁く。
「タマモトくん、えっち、またやろうねっ」
「え?」
「ふふっ、じゃーねぇ」
ドキッとした。
ゆい子は、僕とのセックスが本当に楽しかったようだ。
それ自体は嬉しい。僕の方は耐えるのに苦労はしたが、それだけ気持ち良かったのは間違いない。
だけど、次にする時は、抑制剤を飲む事になる。
そうなると、どうなるんだろう。
少し不安だ。
……とにかく、りさの現状を確認してからだ。
残された、あやか、マリン、ちゆ。
僕が特に仲のいい3人と言っても良い。
……こうなると、アカリが居ないのが少し心細い。
この状況を打破できそうなのはアカリくらいだろう。
抑制に関して詳しいのはアカリだ。
一応、携帯でメッセージを入れる事にした。
『成功したっぽいんだけど、様子がちょっとおかしい。ゆか達に何も無ければ戻ってきて欲しい』
すぐには既読が付かない。
待つしか無いだろう。
僕だけで切り抜けられるだろうか?
「お兄ちゃん、時見さんと上手く話せそう?」
「……わからん」
「ちゆが話そうか?」
「気持ちだけ貰っとくよ、ありがとう」
「タマモト、もしかしてピンチか?」
「………まぁ、ピンチなのかも知れないね」
「参謀でも人の心が読めない時もあるんだなぁ」
「僕を何だと思ってんだよ」
「まっ、何かあったらフォローしてやるよ」
「頼むよ」
「任せろっ!」
マリンがグッと力こぶを見せてくる。
ちなみに、力こぶは、ちまっとしていて迫力は無い。
サキュバスの力は羽根やしっぽによる物らしく、腕の筋肉自体には関係ないようだ。
たしかに、そうでなくてはちゆの力に関しての説明がつかない。
「玉元くん、ごめんねなんか」
あやかが謝ってくる。
「なんであやかが謝るんだよ」
「りさちゃんって、変わってるから、……先に言えば良かったなって」
「……ありがとう。だけど、今回は僕のふるまいに原因があると思うから、あやかが気にする事じゃないよ」
「そうかな?」
「そうそう、だから、気にしないで」
「うん、玉元くんがそれで良いなら」
実際、あやかは全く関係がない。
コレはあくまで、抑制剤の効果による変化だ。
りさが帰ってきたら、まずこの悪魔測定器で確認だ。
たぶん、完全に人間になっているとは思うのだが、どうだろう?
ドアが開き、りさがハンカチで手を拭きながら戻ってきた。
表情はさっきより落ち着いている。
何も言わず、自分のショーツとスカートを穿き、制服も着直すと、長い黒髪を整えながら僕らの方を見た。
キリッとした目付きで周りを見渡す。
たぶん、まふゆ達が帰ったのを確認してイラっとしたのかもしれない。
りさは美少女だ。
だが、今はさっきよりも更に高潔に見えて美少女感が増している。
迂闊に触れられそうもない。
当たり前と言えば当たり前だ。
そもそも、そういう容姿なのだから。
本来の人間の美女らしい一面が出ていると思うべきだろう。
心なしか、あやか、ちゆ、マリンも緊張している様子だ。
怖いのだろう。
たしかに、今のりさは怖い。
身長も165くらいあるので、それなりに威圧感も出ている。
穏便に終わるだろうか?
「なに?皆んな帰ったん?ウチ置いて」
これにはあやかが応える。
「私がいるでしょ?」
「部長がおるんは当たり前やろ、部員、うちしかおらんくなるやん」
「玉元くんとマリンちゃんも部員だよ」
「その2人は仮入部やろ?残ってって言った3人が3人ともおらんくなってるやん」
「それは、……りさちゃんの人望の問題であって、私は関係ありません」
あやかが凄い返し方をしている。
喧嘩腰に感じるが、それで良いのか?
「部長、うちの事、ほんまは嫌いなんとちゃう?」
「なんでそう思うの?」
「うち、言いたい事ハッキリ言うタイプやん」
「うん」
「せやから、煙たいと思とんとちゃうん?」
「思ってないよ」
「ほんまに?うちのハキハキしたところ、気になってへんの?」
「別に。私もハッキリ言うタイプだから、同じだと思うよ」
「でも部長は皆んなから慕われてるやんか」
「そうなの?」
「せやで、ハッキリ言うてんのに」
「ハッキリ言おうが言うまいが、好かれる人は好かれるし、そうじゃない人は好かれないと思うよ」
怯むりさ。
ぐうの音も出ないようだ。
明らかに、部長以外の部員が帰ってしまった事の不満をあやかにぶつけている様だが、そこはさすがのあやか、全く押されていない。
喧嘩を売る相手としては、あやかは強過ぎる。
りさの負けだ。
「ま、ええねん、そんな些細な事は。で、まずは玉元くん、アンタの事なんやけど」
あやかには何を言っても勝てない事を察したのか、僕へ矛先を戻した様だ。
「はい、何でしょう」
「そこに正座して!」
「えぇえ」
「つべこべ言わんと、ほらっ、そこにっ」
僕は渋々正座する。
敬語では無くなったが、怒りは加速しているように感じる。
自分の股の精液を洗い流している間に、何か込み上げてくるものがあったのだろうか。
僕の目の前に来るりさ。
見上げると、やはり脚が長くて綺麗だ。これが美脚というやつか。
と、ぜんぜん関係ないことを考えてしまう。
しかし、この感じでは悪魔測定器をこっそり当てるのが難しそうだ。
「で、本題なんやけど」
「はい」
「なんで、ウチに中出ししてんっ」
「……それは、あの、中出しをしたかったからです」
「はぁあああああ!!」
凄いキレている。
怒りは続いてるようだ。どうすれば良いのか。
「玉元くんは、中出ししたい子には、誰でも中出ししてるん!?」
「いや、それは違うよ」
「さっき中出ししたかったて言うてたで!」
「だから、……同意して貰ってるって言うか、お互いに好意があるって前提でやってるからさ」
「うち、いつ同意したんっ!」
「同意って言うとアレなんだけど、ほら、僕の事を好きって言ってたし」
顔を赤らめるりさ。
ここにきて初めての反応だ。
怒ってるが、記憶はちゃんとあるようだ。
それならまだ突破口もある。
全部忘れられていたら何を言ってもダメだが、覚えているなら逆転できる。
「好きなんて、……言うてたかなぁ」
チラチラとあやかを見るりさ。
「言ってたよ、せーちゃん、好き好き好き好きーっ!ってね」
あやかがハッキリと言う。
ちゆとマリンもウンウンと首を縦に振る。
何となく、ちゆとマリンの方が怯えているように見える。
りさが怖いようだ。
考えてみたら、マリンって元々かなり気が弱かった。忘れていた。
「…………せやかてなぁ」
「もしかして、忘れてたの?」
あやかが、続ける。
「……覚えとるけど」
「でしょ?証人、何人いると思ってるの?」
「あの子達、帰ってなかったら、言ってないて言うてたかもしらんやん」
「ほらね、そう言うところだよ、りさちゃん」
「なんなん?」
「前から言おうと思ってたんだけど、りさちゃん、自分の事になると、都合良く後輩の子とか、気の弱い同級生とか巻き込んで味方にしようとするよね。なんで3人共、りさちゃんの事を待たずに帰ったのか分かる?」
「そんなの、知らへんよ」
「りさちゃんのために、嘘をつくのが嫌だから……違う?」
「分からんやん、そんなん」
「りさちゃん、そんな事やってたら、誰も味方になってくれないよ」
「部長、うちに対して厳しいんとちゃう?」
「ぜんぜん厳しくないよ。私、優しいでしょ」
「どこが」
「ちゃんと話を聞いてあげようと思って、部室を開けておいてあげたんだから」
「え!?部長、ウチのこと閉め出す気やったん?」
「そんなことしないよ、ちゃんとスカートとか荷物は部室の外に移動させといてあげるよ」
「ウチのこと置いて、皆んなで帰る気やったんや」
「そりゃそうでしょ、私だってりさちゃん1人のワガママで部室開けとくのヤだもん。皆んなは帰ったし、私は部長だから、責任を持って施錠して、りさちゃんの荷物は外に出す。ね?おかしくないでしょ?」
「……うぅ、そんなん、職権乱用や」
あやかの言葉に勢いを失うりさ。
よく分からないが、りさの温度はかなり下がっている。
凄い。
部長でもあり、委員長でもあるあやかは、やはり只者ではない。
……と、そんな、あやかに頼りっぱなしで良い訳がない、なんと言えばりさは納得するだろうか。
あやかは追撃の手を緩めようとはしない。
「逆でしょ?部室の私物化をしていたのはどっちなの?」
「……そんなん………ウチは、だって」
「今までは見過ごしてあげてたけど、この部室で、課題の写真も出さずに、自分のグラビアもどきのえっちな写真ばっかり撮って、それで部活って言える?部室って、学院から貸してもらってるのよ?りさちゃんの頭でもそれは分かるよね?最低限、入学はできてるんだから」
「……うち、まぁまぁ優等生やん」
「あなたくらいのレベルで優等生ぶられるのって、正直不快なのよね」
「…………ごめんなさい」
りさが謝っている。信じられない。
「ほんとに優等生なんだったら、部室の私物化は今後、2度としないでね。次したら部長権限であなたを退部にします」
りさが退部宣告を受けている。
凄い攻撃力だ。
「……はい、もうしません」
結局、写真部には在籍したいんだなりさは。
部長があやかだし、副部長があのしっかり者のまふゆだもんなぁ。居心地の良い部活なのだろう。
優しいしっかり者が多い部活というのは、自然と人が集まる。
楽しく活動する為には、治安維持のためのルール作りが重要だ。
野球やサッカーだって、審判がしっかり機能してなくては楽しめない。
あやかとまふゆがいるだけで、活動レベルは格段に上がるのだろう。
実際、まふゆは写真への取り組み方が真摯だった。
芸術性の高い写真を撮りたいみたいな事も言っていた。
りさがこの部に所属したがるのは分かる。
「そっ、なら、話を続けても良いよ、私はここで本読んでるから」
あやかはそう言うと、カバンから分厚い文庫本を取り出し、椅子に座って読み始めた。
スマホやタブレットではなく、文庫本で読むあやかに、また凄味を感じてしまう。
ちなみにあやかはスマホアプリにも詳しいので、敢えて紙で読んでいると補足しておく。
「……で、りさ、何だったっけ?」
僕は落ち込んでいるりさに声を掛けた。
「あの、玉元くん、ウチ、なんか変やったんやんか」
「どう変だったの?」
「何かな、恥ずかしいんやけど」
「うん」
「えっちだったんよ」
「りさが?」
「せやねん」
「えっちなのは、そうだけどさ。もしかして、りさって、昔はえっちじゃ無かったの?」
「ううん、昔からえっちやったで」
「じゃあ、なんで急にそんな事を」
「なんやろ、ウチな、皆んなに美人やって言われてて、実際、写真撮って貰っても、綺麗やんか」
「まぁ、確かに」
自分で言うのはどうかとは思うが、これだけ美少女だと、自他共に認めてもそれは仕方ないかもしれない。
「それで、アイドルとか、女優さんとか、憧れてたんよ」
「そうだったんだ」
「うん、そんで、ウチ、色々やってみたんやけどな」
「役者さんとかってこと?」
「せやねん、せやけど、ウチ、歌もダンスも下手やし、空気読めへんし、役者やっても棒やから、お客さんにめっちゃ叩かれたんやんか」
「そっかー、プロの世界は厳しいからね」
「そう、それで、なんでこんな頑張ってんのに叩かれるんやろうって思たんよ」
「結果はともかく、頑張ること自体は良い事だよ」
「ありがと、……そんで、ウチ腐ってもうて」
「腐る?なに?ボーイズラブにハマったとか、そう言う意味?」
「ちゃうてっ!なんでやっ」
恥ずかしそうに笑うりさ。
笑顔が可愛い。
やっぱり、普通にしてるとりさは可愛く見える。怒ると怖いが。
「ってことは、夢を諦めたってこと?」
「ウチな、周りに美人やって言われてたやん?」
「……そう聞いたけど、それで?」
ついさっきだが。
「うちよりそうでも無いって思ってた子が、アイドルになったり、役者で有名なったりして人気になっていって、自信無くしてもーて」
「そりゃなぁ、……仕方ないよね」
身近な存在が有名になると、僻んでしまうのは有りがちな事だ。
例えば、小学生の同級生が、大人になってから一流のパティシエとしてテレビやネットで活躍していたら、最初は別人では無いかと疑うだろう。
もし、学生時代に自分よりもお菓子作りが下手な子だったとしたら尚更だ。
自分の事は過大評価し、友達の事は過小評価する。
当たり前と言えばそうだ。
いつでも、自分に都合の良い世界であって欲しいと思うものなのだから。
「そんでな、うちの魅力って何やろうって思い返してんな」
「うん」
「何やと思う?」
「なんだろう?」
「当ててみて」
「……声が大きい、とか」
「真面目に考えーやっ!」
りさが怒る。
だが、悪くない。落ち着いている様子だ。
「分かったって、だけど、……そっか、アレだ。足が速い」
「ふざけとん?」
「違うって!じゃあなに!?」
「なんでや、見てみぃ、ウチの身体、このえっちな身体に決まってるやん」
「……そんなの当てられるかぁ!」
「玉元くん、ウチの身体、隅から隅まで楽しんだ癖に、なんなんっ!」
「魅力を聞かれて、キミの身体ですね、なんて言えるかよ」
「ウチの大事なとこ、あんなに舐め回しといて分からんとかあり得へんわ……あーっ、思い出しただけで恥ずかしいわっ!」
一応記憶はしっかりあるようだ。
どういう心情の変化があったんだろう。
「で、結局、その自慢の身体で何したんだよ」
「ネットでウチの生放送したんやで」
「そっか、それでバズったんだ」
「バズってへんよ」
「バズってへんのかーい!」
「ふふっ、せやねん」
楽しそうに笑うりさ。
「それで、放送は何したんだよ」
「色々やったで、顔は隠してたんやけど、歌ったりダンスしたり、ボイスドラマもやったなぁ」
「でも、ダメだったんだ」
「コメントでは褒めてはくれたんやけどなぁ」
身体を見るのが目的の人だけが集まったんだろうな。
歌が上手かったら相乗効果でバズったかも知れないけど、無理だったか。
「それで、続かなかったの?」
「ううん、ある時から、そこそこファン増えたんやで、バズっては無いけど」
「へぇー、凄いじゃん、何やったの?」
「ふふっ、オナニーや」
「おなっ、ゴホゴホっ……」
急にオナニーと言うからびっくりして咽せてしまった。
「うちの身体見たいって言うコメント増えたから、ちょっとずつサービスしてたんやけど、いつの間にか全裸でアソコ弄ってたんよ」
「そっか、でも、何はともあれ、人気が出て良かったじゃん」
「……せやけどな、こんなん、人気って言うんやろか」
「知らないよっ!」
「女の子のオナニーて、身体普通でもバズってない?」
「バズってるよ、アレこそ、どのフェチズムが刺さってるのか未知の領域だよね」
「せやろー、せやから、うち、初めはこのえっちな身体が良いんやと思ってたのに、うちより体型微妙な子がどんどん人気になって、ウチもう、どうでも良くなったんよ」
「別に人の好みなんてそれぞれなんだから、いちいち気にしない様にした方が良いって」
「そうなんやろか」
「そうそう」
「そんでな、放送もうほとんどせんようになったんやけど」
「うん」
「オナニーにはハマってしまって」
「……なるほどね」
「うち、毎日、おもちゃで気持ち良くなってもーて…………って、なんでこんな事アンタに話さなアカンねんっ!」
急に怒るりさ。
「勝手に話し始めたんだろ、僕は話してくれなんてひと言も言ってないからな」
「なんやねん!うちの身体、イジりたい放題に弄って、うちがどんだけ気持ちよかったか、知らへんやろっ!」
「知らないよっ、てか気持ち良かったんなら良いじゃんか」
「でもなっ!それで中出ししてええわけちゃうでっ」
「いっぱい中に出してって言ったのは誰だよっ!」
また頬を真っ赤に染めるりさ。
自分の言った事を思い出したようだ。
「……うち、言うてたな」
「そうだよ、言われなきゃ出してなかったよ」
「そっか……それは、早とちりやな」
そうは言ったが、この言い訳は実はズルい。
何故なら、あの時点では出してないというだけで、実際は、りさをイかせてから中出しをするつもりだったからだ。
だが、りさの沸点は、勝手に中出しをした、という点だ。
なら、お願いされたから中に出したと言う事にしておけば解決だ。
今回の件で、抑制剤を出す時は、言質を取る必要が出てきた。
性欲で暴走する見習いサキュバスと違い、人間化したら普通の女の子の思考に戻る、というか、変化するという事が分かった。
これを踏まえて西園寺キラリの抑制を考えると、ケルビンの戦略の意図が見えてくる。
確かに、抑制前にしっかり口説くことによって、いざ人間の女の子の思考に変化したとしても状況を受け入れやすくなる。
ゆい子にしてもそうだ。
抑制する前に、セックスする事に違和感を持たせない様にしなくてはならない。
本当に一筋縄ではいかないという事だ。
しかも、人間になってから、あなたはサキュバスになるかも知れなかったんですとか言ったところで、信じてもらえないだろう。
とにかく今回は、結果オーライだ。
僕は悪魔測定器をこっそりとポケットから出す。
「りさ、僕はこれからも君とは良い関係を築きたいと思ってるんだ」
「ウチと都合のええ関係になりたいん?」
「そんなこと言ってないだろ」
「ウチに中出しした事実は消えへんのやで」
「そりゃそうだよ」
「明日から、ウチは玉元くんに襲われへんように気をつけなアカンな」
「気を付けなくても、もうやらないからさ」
「一回こんな事があったら、絶対またどっかで触るやろ」
「触らないって」
「嘘やっ!」
「じゃあ、言われたところしか触らない」
「触らせへんで」
「そんなに嫌ならもういいよ、さぁ、もう帰ろう」
「話は終わってへんで」
「どうしろって言うんだよ」
「あ、せや、分かった、催眠術やな」
「催眠?なに?」
「うちがえっちになるように、催眠術掛けたんやろ?」
「りさがオナニー配信してたのは僕とは関係ないだろ」
「それは、今ちゃうで」
「だけど、その頃からえっちだったんじゃん」
「それは、そうやけど、何か今はちゃう気分なんやって」
「そんな事言われても、しちゃった事はもう取り返しつかないんだからさ」
「そうやって、女の子を騙してるんや」
「騙してないって」
「ウチが妊娠したらどうするん」
「そうなった時は、責任取るよ」
「ゆい子ちゃんにも出しとるよな」
「出してないって!我慢したよ、危なかったけど」
「ほんまに?ゆい子ちゃんビクってしてたで、アレそうちゃうん?」
「違うよ、アレはゆい子がイっただけで、僕は耐えた。……てかそこも覚えてたのか」
「当たり前やろ、ゆい子ちゃんばっかり見て、うちの事、ほっといたやん」
「何だよ、やっぱり僕にして欲しかったんじゃん」
「ちゃうて、ちゃうんやて、あー、ウチほんまどーなってしもたん?何かえっちなことばっかり頭に浮かぶんやけど」
「知らないよ、僕にして欲しいんじゃないの?」
「して欲しくないわ!」
「例えば何をして欲しいって?」
「……えっと、股のとこ舐めて欲しい」
「クンニして欲しいんだ。舐められるの好きなの?」
「……好きやで」
「どこが良いの?」
「クリちゃん」
「クリトリスをくにくにして欲しいの?」
「クリちゃん、……くにくに」
りさが股をモゾモゾさせながら左右に揺れている。
「それで?」
顔が真っ赤になって、両頬に両手を当てるりさ。
「くにくにぃ……くにくに」
「気持ちいい?」
「くにくに気持ちいい………はっ!だからっ!催眠術かけんのやめーやっ!」
両手を握りしめてバタバタしながら怒るりさ。
「かけてないって!」
「誘導尋問や」
「うるさいなぁ、もう」
バンっと、本を閉じたあやかが立ち上がる。
「もうっ、何の話してんのよっ!そんなこと話すんなら続きは明日にして!じゃあ、部室閉めるから出ていきなさいっ!」
「「ごめんなさいっ」」
今だ!
あやかが怒ったタイミングで、りさに悪魔測定器を後ろから二の腕部分に当ててみた。
結果は、オールグリーン。
成功だ。
上手くいった理由はまだ分からない。
絶頂のタイミングも、出す前と、後、どちらに効果があったのか、そこが明確ではないのだ。
後から絶頂させた方に効果があったのか、無かったのか。
それとも、2回とも効果が出ていたのか、そこが問題だ。
アカリにも聞いてみる必要がありそうだ。
携帯を確認すると、アカリから返信が来ていた。
『すぐ戻れそうにない。できれば帰り、プリウムに来て欲しい』
どうしたんだろう?
ゆか達と何かあったんだろうか。
明日の夜のこともマリンと相談しなくてはいけない。
今はマリンと話す方を優先だ。
今日は朝から色々と大変だった。1日でここまで気持ちが上下するのも珍しい。
最近はずっとそうだが……。
明日は更に壮絶な戦いになるだろう。
むしろ本当の試練は明日だ。
冥界のザクロが相手だ。
何が起こるか想像もつかない。
こんなことくらいで疲れている場合ではない。
……とりあえず、抑制は上手くいって良かった。
これからも、りさとは仲良くしていけるだろうか?
僕は人間になったりさと、どう付き合っていくのが正解かで頭の中がぐるぐる回っている。
相性は悪くないとは思うが、どうなんだろうか。
ちなみに、挿入前の愛液の味は苦かった。
まるで、全神経が下半身に集中し、その快感の余韻が、太鼓を叩いた後のように全身へ響き渡る。
水の波紋が広がるように、手足の末端まで、ジワジワ、ビリビリと伝わっていく。
脳内に、幸福感と絶望感が同時に訪れた。
なんてこった。
…………失敗だ。
射精してしまった。
りさの膣内へ。
正常位で、間違いなく、しっかり中出ししている。
挿入してすぐだ。
早かった。
どうする?
打つ手なしか?
考えろ。
考えるんだ。
まだ何かできるはず。
耐えられなかったのなら仕方ない。
次の手を考えるんだ。
羽化するのか?
……ここで?
まだ大丈夫か?
とにかく、まずはりさの状態だ。
彼女の顔は赤く蒸気していて、嬉しそうに目を潤ませている。
可愛い。
僕の心臓が高鳴る。
ピクピクと全身を震わせ、どこか恥ずかしそうな感じもあった。
胸辺りも赤らんで、しっとり汗をかいている。
ピンクの乳首は両方とも勃起していて、眺めるだけでも吸いつきたくなった。
僕はつい、りさの完璧過ぎるボディに見惚れるが、そんな場合ではない。
視点が自然と下がってしまう。
繋がった僕とりさの股間を見て、冗談ではなく本当に鼻血が出そうだ。
これはマズい。
腰を引こうとしたが、両足でホールドされているので抜けなかった。
出したのに、まだ僕のモノは硬いままだ。
このままもう一回戦できるくらいだ。
だが、それはダメだ。
……抑制剤の効果は悪魔のしっぽ1本に対して、1回分の効果のみ。
飲んでから一発目だけだ。
連続射精しても単に精子が出るだけになる。
一応、マリンのしっぽもあるが、抑制剤の生成には自分の精子を取り込んでもらって12時間以上経過が必要。
マリンとの性交渉は一度も無い。
ちなみに、今ここにいないアカリに関しては、以前に口内射精していたが、サキュバス化する前の話だし、そもそも膣内で出さないと生成量が5分の1にも満たないとアカリは言っていた。
つまり抑制剤はもう無い。
抑制剤が子宮に吸収されるまで、余分に精子を入れてはならない。
多少なら問題ないが、精子の量が抑制剤を上回ると外へ押し出されてしまう。
このまま続けると抑制剤の効果自体を打ち消しかねない。
りさが下から腰を振っている。
僕は最後の神頼みで、彼女をイかせる事にした。
「せーちゃん、もう出してもーたん?ウチの膣内、そんな良かったんやなぁ」
「りさ、凄い気持ち良かったよ」
「そうなん?でも、まだ硬いやん、もしかして、アンタのおちんぽ、もっとやりたがってんのちゃう?」
「……そうかも」
「んふふ、ほな、もっと突いてもええで」
「うん、激しくしても大丈夫?」
「ええよ、ウチ、速くされんのも好きやねん」
「分かった」
僕は、腰を徐々に速くしていく。
快感はあるが、一度射精しているので、しばらくは耐えられる。
最後の悪あがきのようなものだが、もし今、抑制剤が効果を発揮しようとしているなら、ここでイかせれば多少はプラスに働くかもしれない。
ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん
「んお"っ、お"ぉ……ええやん……お"、んっ、すごい、いい、あっ、んっん"」
りさが唸るように喘いでいる。
射精したことで勢いが出たのか、腰を振るのも楽だ。
「ぜ、ぜーちゃん、ええでっ、ウチ、うちうちうち、お"お"、そこ、そこやで…………ぐぶぅ、う"ん……ええで……やれば出来るやん、……うち、できる子、好きやで………お"、お"まんこ、スゴイ、お"まんこが、おちんぽに、づかれて、……んっ、んんっ…………あ"、……ぞご、……ええで……ええんやで、ぉお"、ぉお"」
ずっと感じている表情だ。
りさのような美少女に、これだけ喘いで貰えるのは、ある意味で光栄なことだ。
僕はそのままピストンを続ける。
出してしまった後悔というか、無念というか、後戻りはできないという虚しさはある。
かといって、ヤケクソになる意味もない。
りさをサキュバスにしてしまったとして、そこからどうするかを考えなくてはならない。
僕がケルビンに言って、保護してもらうというのは不可能なのか。
いや、無理だろう、そんな事が許されているのなら、初めからその話を僕にするはずだ。
僕を仲間に引き入れたのも、サキュバスによる被害をいち早く止めなくてはならない事情があるのだ。
そうでなくては、こんな一般人の自分をデーモンハンターにしようなんて考えないだろう。
絶倫な男なんて、そんなに珍しくはないだろうし、組織立って動いているなら、こんな若造に助けを求めるリスクは冒さない。
またケルビンに窘められるだけだ。
「せーちゃ、ん"、お"、お"、うん……、ええで…………あ"っづ、んっんん………その調子や……ええで………お"」
ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん
「りさっ!りさっ!可愛いよっ、りさ」
僕は囁くようにりさに声をかける。
トロンとした表情で僕を見つめるりさ。
気持ち良さそうで、幸せそうだ。
僕はその顔を見れるのがもう最後の可能性を考えて、悲しくなる。
「せーちゃん、泣いてるん?……そんな気持ちええん?」
「いや、……これは、……違うけど、でも」
「でも?」
ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ
りさは、首を自分の右肩の方へ少し傾げながら腰を僕に合わせるように打ちつける。
明らかに「でも?」の言い方が甘えるようで狙っている。
僕が可愛いと言ったから、可愛く甘えた声を出しているのだろうと分かった。
自分に甘えてくる、スタイル抜群の美少女。
気持ちが昂ってくる。
さっき出したのに、すぐに射精感を高めてくるりさの行為に恐怖すら感じた。
「りさの可愛さに感動して流れた涙だよ」
「ふふっ、意味わからへん」
はにかむように笑うりさ。
意味の分からなさには同意だ。
だが、感動するほどに可愛い事に嘘はない。
僕は変化をつけるために、少し体重をかけて、1番奥までちんぽを突き入れる。
「お"お"、大胆な……入ってくるぅ」
「痛くない?」
「だい……じょう……ぶ」
「ほんと?……こっちの方が好きかなって思って」
「な"にが……」
「こうやってさ」
「ふぐぅ、お"ぶっ」
僕は最奥、Pスポットの辺りで、軽く円を描くように動きながらブルブルと震えてみる。
「あ"あ"あ"っ、あ"あ"あ"っ、ダメダメ、……あ"あ"あ"っ」
すごく良い反応だ。
さっきも騎乗位でこの振動が、かなり効いていた。
なら、正常位でも効くかも知れないと思ったが、成功らしい。
「コレ、好きだよね」
「う"ん、う"ん、すき、好き好き好きぃ……好き、好き、好き、好き、好き、お"、好き、好き、好き、好き」
りさが表情をトロンとさせたまま、うわごとの様に好き好きと繰り返している。
よく、壊れたおもちゃの様な、という形容をしているのを見るが、まさにそんな感じだった。
そろそろりさは限界なようだ。
僕は突き入れたペニスを震わせながら、彼女を抱きしめる。
すると、りさも好き好きと言いながら僕の背中に手を回してきた。
「好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、す……んちゅうっ、ん"むぅ」
りさにキスをする。
口の中に舌を入れて、舐めてみる。
それに応えるりさ。
「んっ、れろれろ、んっんっ、好き、んぅ……んっ、んむっ、しゅき、んっしゅきんっ、好きっ……ん、んむっ、んふっ、ふふっ、好き、んちゅっ、あー、レロレロ、んっ、んっちゅっ、んちゅ」
口内が熱く、りさの舌が柔らかくて気持ち良かった。
射精したおかげで、りさの舌を抵抗感なく味わえている。
柔らかくて気持ちよく、脳が溶けそうだ。
たぶん、りさも気持ちいいのだろうなと感じる。
僕は下半身をバイブの様に震わせながら、りさがイクのを待った。
僕も気持ち良いが、自分でコントロールしている分、さすがに耐えられる。
ラストスパートだ。
僕は震わせながらも奥にグリグリと突き入れ、細かくピストンした。
この動きはこちら側の負担も大きいが、きっと気持ち良くなってくれるはず。
「んむぅっ、あ"むっ、んむっ、んむっ、んむっんっんっむぅむぅ」
りさのディープキスが力任せになり、舌を僕の口の奥に押し付けてくる。
僕の背中を抱く両腕が強くなり、何かに耐えているようだった。
痛くないか聞きたいところだったが、彼女のキスが激しくて口を離せなかった。
この行為、本人もイこうとしている。
気持ち良くて、このまま果てようと思っているんだろう。
だから、僕を逃さないようにガッチリとホールドしているのだ。
体位を変えずに、奥で、小さく速いピストンを続ければ限界を迎えるはずだ。
僕は無心で腰を小さく振り続ける。
ぱちゅぱちゅ、ぱちゅぱちゅ、ぱちゅぱちゅ
小さな水音が聞こえる。
そろそろイキそうな様子だ。
膣の中がキュッと締まり、熱くてぬるぬるだ。
不思議と、濡れているのに引き締まっているので全く抜ける気配は無かった。
精子を搾り取るのがまんこだが、その器官としての役割は完璧にこなしている。
身体が抱き締められてるのと同じ力で、膣壁にちんぽが抱き締められていると感じる。
気持ちいい。
だが、自分が気持ち良くなることを優先してはいけない。
りさをイかせるんだ。
冷静さを欠いてはいけない。
耐えるんだ。
僕は、冷静になる為に、根源的なセックスについて考えてみた。
性行為とはなにか。
女が男に求める行為の中で、1番原始的で本能的な活動。
それが、好きな男との性行為。
正直なところ、りさにとって理想的な男が僕だとはとても思えない。
だけど、僕にとってりさは理想的な女性ではある。
サキュバス化が近い女の子でなかったら、僕が彼女とえっちする事は無かっただろうと思うと、運命的な物を感じる。
もし、普通に出会っていたら、りさとは友達になれただろうか?
女の子は、男を選ぶ時に、生存に有利な遺伝子を持っていそうな男を選ぶと、何かの本で読んだ事がある。
理由は明確で、男と違って、より強い子孫を増やす役割が、女性にはあるからだ。
女性を妊娠させても、その後に生物的な負担のない男とは違い、女性の場合、子供を産む為に、数ヶ月は普通に生活する事がままならなくなる。
女の子は、セックスのリスクが高い。
だから、芸能人や、プロのスポーツ選手のような、色んな能力の高い男を求める。
逆に能力自体が高くなくとも、落ち着いていて健康的で、よく笑う男は、女性から選ばれやすい、というわけだ。
全ての平均値が高い、健康な男をセックスの相手に選ぶ。
人気者がモテるのは当たり前というわけだ。
…………もっとも、そんな事は、サキュバスにとっては関係ないことだ。
そこを考えると、僕はりさの相手として相応しいとは言えず、もし完全な人間になったら、僕の事なんてすぐに忘れてしまうかもしれない。
何だか、やるせない気持ちだ。
……だけど、そうなると、……天使であるゆかは、僕の何を見て好意を持ってくれたのだろう?
しかも処女だったし。
「ぷはぁ」
りさが唇を離した。
「りさ、気持ちいい?」
「…………イク」
「どうしたの?」
「イク……イクイクイク…………んっ」
「りさ、可愛い」
「んんっ………イ…………ク………」
りさの腕の力が強くなり、僕もそれに合わせて彼女を抱き締めた。
「…………イク」
びくんっ!
と、りさの身体が大きく跳ねた。
膣壁がキュッと締まる。
僕のペニスにも快感が伝わり、射精感が高まった。
グっと耐える。
僕はりさを抱き締めた。
左の耳元で、彼女の吐息を感じる。
「はぁ、……んっ、…………イク………んっ……んっ」
長く痙攣しているようだ。
本当なら、ここで抑制剤を精子と共に射出できれば言う事は無かったのだが。
もう、仕方ない。
りさが気持ち良さそうにビクビクとしているのを見て、納得するしかない。
長い痙攣が終わり、息を整えるりさ。
ようやく落ち着いたようだ。
「イっちゃった………………え?」
突然、寒気がした。
背筋が凍る。
今まで暑かった部室の中に吹雪でも起こったのかと感じるほどだ。
恐る恐るりさを見ると、何だか、様子がおかしい。
そもそも、目の色が違う。
いや、比喩では無く、実際のカラーだ。
今まで、目が青みがかっていたのが、黒くなっている。
黒い瞳。アジア、というか、日本人らしい目の色……。
「あの、玉元くん、…………ですよね」
「…………はい?」
玉元くん?
「ウチの事…………抱いてます?」
「はい、……抱いてます」
……りさが、りさでは無い。
いや、りさはりさなのだが、さっきまでと空気感が全然違ったのだ。
もしかしてコレは…………。
「ウチ、玉元くんに変なこと言ってましたよね」
「変なこと?……と、申しますと?」
「あの、ぜったい、今、入ってますよね」
「入ってるってのは、あの、アレのことですよね」
「そうです。お腹の中に…………なんか、入ってるんですよ」
「……僕の、その、何というか」
りさが青ざめている。
彼女の呼吸が、さっきとは別の意味で乱れているように感じる。
不安と恐怖が入り混じったような、そんな感情が伝わってくる真剣さがあった。
「あの、一回、抜いて貰ってもいいでしょうか?」
「もちろん」
ちゅぽん、と、ペニスが抜けると、中から、ドロドロと白い精液と、抑制剤が流れ出てくる。
ちなみに抑制剤は、ほぼ透明だが、微かに青紫っぽい色が混じっているので、注意深く見れば識別は可能だ。
精液も時間が経つと透明になるので、抑制剤が見分けやすくなるそうだ。
まだ見分けた事はないが。
りさは上半身を起こし、自分で膣口に手を当てる。
その様子は、普通の女の子が、中出しされて困惑しているようにしか見えなかった。
「なんで、中に出したんですか?」
僕のことを見るりさ。
周囲に「え?」「何?」「んっ?」と、どよめきが起こる。
今のは、まふゆ、ゆい子、きょうこの声だ。
「……いえ、あの、事情があって」
僕は一瞬、絶句しそうになるのを、気合いで振り絞るように返答した。
「中出ししないといけない事情なんてあるんですか?」
氷のような口調から、明らかにりさが怒っているように見えた。
「無いです」
…………いや待て、コレは非常事態だ。
どう切り抜ける。
「あの、…………ちょっと、洗ってきます」
りさが立ちがる。
「……ぁあー、すごい垂れてくるやんコレ……もぉおおー」
彼女は自分の右手で僕の精液をすくう様にして取り、机の上にあったティッシュで拭いた。
りさは、制服の上だけザッと羽織ると、そのまま部室を出ようとする。
出る前に止まり、僕の方に向き直った。
「……あっ!玉元くん、そこに居てや!絶対やでっ、他の子らも見張っといてや」
僕は、せかせかと出ていくりさと、ドアが閉まるのを確認すると、チラッとあやかを見る。
背後からマリンの声がした。
「なんだアイツ?おかしくね?」
……そうか、マリンには、僕が抑制剤を使った事は伝えてなかった。
ちゆも反応した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
僕を心配している様子だ。
ちゆの声を聞いて、安堵する。
さすがに、いくら予想はできた事とは言え、あれだけ急変するとショックは大きい。
……これは、成功した…………のか?
「ありがとう、ちゆちゃん、僕は大丈夫だよ」
僕は、自分のパンツとスラックスを履きながらちゆに返事をした。
マリンがりさが出ていったドアの方をずっと見ている。
「りさってヤツ、散々よがってたクセに、急にビビって洗いに行くとか、情緒おかしいだろ?」
マリンは本当に不思議がっている。
本来なら喜ぶべき事のはずだが、りさの急変っぷりに、不安感が高まっていたせいで、正直、ちゆとマリンの言葉に助けられた。
心のどこかで、抑制に成功したら、りさからは、感謝とはいかなくとも、好意的には見てもらえるだろうとタカを括っていたのだ。
自覚のない楽観視だ。
予想外の反応では無い。想定可能な範囲で、コレはむしろ自然な反応だ。
なぜ覚悟できてなかった。
僕はバカだ。
……状況を理解して貰うのは絶望的な気がした。
だけど、どうしたら納得して貰えるのか全く分からない。
僕1人では無理だ。
手を見ると、軽く震えている。
……僕は今、恐怖を感じている。
ちゆとマリンには感謝だ。
まさか、純人間になったりさではなく、サキュバスの2人に慰められるとは予想外だった。
ある意味で、付き合いの濃さだけで言えば、この2人以上の関係はなかなかいない。
居てくれて良かった。
……ともかく、りさはさっきまでの行為をどう感じているのか、それが問題だ。
ここを明確にしておかないと、これからの抑制活動に支障をきたし兼ねない。
そうこうしてると、まふゆとゆい子が近付いてきた。
この2人も、りさの行動に困惑している様子だ。
「玉元さん、りさちゃん急に焦ってましたね。どうしたんでしょうか?玉元さんも平気ですか?」
心配してくれるまふゆ。
ゆい子も怪しんでいる。
「私がタマモトくんとやってた時は何も言わなかったのに、変だよね。急に人が変わったみたい。部長はどう思う?」
あやかに振るゆい子。
「……私から見ても、さっきと別人みたいだった。何か事情があるのかな?」
「例えば?」
ゆい子が反応する。
「…………二重人格、とか?」
「そんなわけ無いでしょ、部長、ミステリー読み過ぎ!」
「そうかなぁ、けど、そうでも言わないと納得できない変化だよアレは」
ゆい子のツッコミに、あやかも反論せざるを得ないくらい雰囲気が変わったのだ。
「私、先帰りますね」
後ろで聞いていたきょうこが帰ると言い出した。
そう言えば、すでに時計は19時を過ぎている。
「では、私も先に失礼することにします。りさちゃんの事は部長にお任せ致しますので、よろしくです」
まふゆも帰ると言い出した。
「あー、じゃあ私も帰るよまふゆ。帰りにお店寄ろうよ、お腹空いちゃった」
焦って帰ろうとするゆい子。
たぶん、りさの尋常では無い反応に対して怖がっている。この場に同席するのが気まずいのだろう。
ゆい子は僕と、思いっきりセックスしているので、色々聞かれるかもしれないし、逃げたくなる気持ちも分かる。
……だが、りさには、皆んなで僕を見張る様に言われている。
それを聞いておきながら、3人も帰宅すると言うのは、何か身の危険を感じているのではないだろうか。
きょうこが僕らの方を見て軽く会釈し、その後、しっかり頭を下げて出ていくまふゆ。
バタバタと小物をカバンに突っ込み、帰り支度をして教室を出ようとするゆい子。
僕の前を通り過ぎる時に、ゆい子が囁く。
「タマモトくん、えっち、またやろうねっ」
「え?」
「ふふっ、じゃーねぇ」
ドキッとした。
ゆい子は、僕とのセックスが本当に楽しかったようだ。
それ自体は嬉しい。僕の方は耐えるのに苦労はしたが、それだけ気持ち良かったのは間違いない。
だけど、次にする時は、抑制剤を飲む事になる。
そうなると、どうなるんだろう。
少し不安だ。
……とにかく、りさの現状を確認してからだ。
残された、あやか、マリン、ちゆ。
僕が特に仲のいい3人と言っても良い。
……こうなると、アカリが居ないのが少し心細い。
この状況を打破できそうなのはアカリくらいだろう。
抑制に関して詳しいのはアカリだ。
一応、携帯でメッセージを入れる事にした。
『成功したっぽいんだけど、様子がちょっとおかしい。ゆか達に何も無ければ戻ってきて欲しい』
すぐには既読が付かない。
待つしか無いだろう。
僕だけで切り抜けられるだろうか?
「お兄ちゃん、時見さんと上手く話せそう?」
「……わからん」
「ちゆが話そうか?」
「気持ちだけ貰っとくよ、ありがとう」
「タマモト、もしかしてピンチか?」
「………まぁ、ピンチなのかも知れないね」
「参謀でも人の心が読めない時もあるんだなぁ」
「僕を何だと思ってんだよ」
「まっ、何かあったらフォローしてやるよ」
「頼むよ」
「任せろっ!」
マリンがグッと力こぶを見せてくる。
ちなみに、力こぶは、ちまっとしていて迫力は無い。
サキュバスの力は羽根やしっぽによる物らしく、腕の筋肉自体には関係ないようだ。
たしかに、そうでなくてはちゆの力に関しての説明がつかない。
「玉元くん、ごめんねなんか」
あやかが謝ってくる。
「なんであやかが謝るんだよ」
「りさちゃんって、変わってるから、……先に言えば良かったなって」
「……ありがとう。だけど、今回は僕のふるまいに原因があると思うから、あやかが気にする事じゃないよ」
「そうかな?」
「そうそう、だから、気にしないで」
「うん、玉元くんがそれで良いなら」
実際、あやかは全く関係がない。
コレはあくまで、抑制剤の効果による変化だ。
りさが帰ってきたら、まずこの悪魔測定器で確認だ。
たぶん、完全に人間になっているとは思うのだが、どうだろう?
ドアが開き、りさがハンカチで手を拭きながら戻ってきた。
表情はさっきより落ち着いている。
何も言わず、自分のショーツとスカートを穿き、制服も着直すと、長い黒髪を整えながら僕らの方を見た。
キリッとした目付きで周りを見渡す。
たぶん、まふゆ達が帰ったのを確認してイラっとしたのかもしれない。
りさは美少女だ。
だが、今はさっきよりも更に高潔に見えて美少女感が増している。
迂闊に触れられそうもない。
当たり前と言えば当たり前だ。
そもそも、そういう容姿なのだから。
本来の人間の美女らしい一面が出ていると思うべきだろう。
心なしか、あやか、ちゆ、マリンも緊張している様子だ。
怖いのだろう。
たしかに、今のりさは怖い。
身長も165くらいあるので、それなりに威圧感も出ている。
穏便に終わるだろうか?
「なに?皆んな帰ったん?ウチ置いて」
これにはあやかが応える。
「私がいるでしょ?」
「部長がおるんは当たり前やろ、部員、うちしかおらんくなるやん」
「玉元くんとマリンちゃんも部員だよ」
「その2人は仮入部やろ?残ってって言った3人が3人ともおらんくなってるやん」
「それは、……りさちゃんの人望の問題であって、私は関係ありません」
あやかが凄い返し方をしている。
喧嘩腰に感じるが、それで良いのか?
「部長、うちの事、ほんまは嫌いなんとちゃう?」
「なんでそう思うの?」
「うち、言いたい事ハッキリ言うタイプやん」
「うん」
「せやから、煙たいと思とんとちゃうん?」
「思ってないよ」
「ほんまに?うちのハキハキしたところ、気になってへんの?」
「別に。私もハッキリ言うタイプだから、同じだと思うよ」
「でも部長は皆んなから慕われてるやんか」
「そうなの?」
「せやで、ハッキリ言うてんのに」
「ハッキリ言おうが言うまいが、好かれる人は好かれるし、そうじゃない人は好かれないと思うよ」
怯むりさ。
ぐうの音も出ないようだ。
明らかに、部長以外の部員が帰ってしまった事の不満をあやかにぶつけている様だが、そこはさすがのあやか、全く押されていない。
喧嘩を売る相手としては、あやかは強過ぎる。
りさの負けだ。
「ま、ええねん、そんな些細な事は。で、まずは玉元くん、アンタの事なんやけど」
あやかには何を言っても勝てない事を察したのか、僕へ矛先を戻した様だ。
「はい、何でしょう」
「そこに正座して!」
「えぇえ」
「つべこべ言わんと、ほらっ、そこにっ」
僕は渋々正座する。
敬語では無くなったが、怒りは加速しているように感じる。
自分の股の精液を洗い流している間に、何か込み上げてくるものがあったのだろうか。
僕の目の前に来るりさ。
見上げると、やはり脚が長くて綺麗だ。これが美脚というやつか。
と、ぜんぜん関係ないことを考えてしまう。
しかし、この感じでは悪魔測定器をこっそり当てるのが難しそうだ。
「で、本題なんやけど」
「はい」
「なんで、ウチに中出ししてんっ」
「……それは、あの、中出しをしたかったからです」
「はぁあああああ!!」
凄いキレている。
怒りは続いてるようだ。どうすれば良いのか。
「玉元くんは、中出ししたい子には、誰でも中出ししてるん!?」
「いや、それは違うよ」
「さっき中出ししたかったて言うてたで!」
「だから、……同意して貰ってるって言うか、お互いに好意があるって前提でやってるからさ」
「うち、いつ同意したんっ!」
「同意って言うとアレなんだけど、ほら、僕の事を好きって言ってたし」
顔を赤らめるりさ。
ここにきて初めての反応だ。
怒ってるが、記憶はちゃんとあるようだ。
それならまだ突破口もある。
全部忘れられていたら何を言ってもダメだが、覚えているなら逆転できる。
「好きなんて、……言うてたかなぁ」
チラチラとあやかを見るりさ。
「言ってたよ、せーちゃん、好き好き好き好きーっ!ってね」
あやかがハッキリと言う。
ちゆとマリンもウンウンと首を縦に振る。
何となく、ちゆとマリンの方が怯えているように見える。
りさが怖いようだ。
考えてみたら、マリンって元々かなり気が弱かった。忘れていた。
「…………せやかてなぁ」
「もしかして、忘れてたの?」
あやかが、続ける。
「……覚えとるけど」
「でしょ?証人、何人いると思ってるの?」
「あの子達、帰ってなかったら、言ってないて言うてたかもしらんやん」
「ほらね、そう言うところだよ、りさちゃん」
「なんなん?」
「前から言おうと思ってたんだけど、りさちゃん、自分の事になると、都合良く後輩の子とか、気の弱い同級生とか巻き込んで味方にしようとするよね。なんで3人共、りさちゃんの事を待たずに帰ったのか分かる?」
「そんなの、知らへんよ」
「りさちゃんのために、嘘をつくのが嫌だから……違う?」
「分からんやん、そんなん」
「りさちゃん、そんな事やってたら、誰も味方になってくれないよ」
「部長、うちに対して厳しいんとちゃう?」
「ぜんぜん厳しくないよ。私、優しいでしょ」
「どこが」
「ちゃんと話を聞いてあげようと思って、部室を開けておいてあげたんだから」
「え!?部長、ウチのこと閉め出す気やったん?」
「そんなことしないよ、ちゃんとスカートとか荷物は部室の外に移動させといてあげるよ」
「ウチのこと置いて、皆んなで帰る気やったんや」
「そりゃそうでしょ、私だってりさちゃん1人のワガママで部室開けとくのヤだもん。皆んなは帰ったし、私は部長だから、責任を持って施錠して、りさちゃんの荷物は外に出す。ね?おかしくないでしょ?」
「……うぅ、そんなん、職権乱用や」
あやかの言葉に勢いを失うりさ。
よく分からないが、りさの温度はかなり下がっている。
凄い。
部長でもあり、委員長でもあるあやかは、やはり只者ではない。
……と、そんな、あやかに頼りっぱなしで良い訳がない、なんと言えばりさは納得するだろうか。
あやかは追撃の手を緩めようとはしない。
「逆でしょ?部室の私物化をしていたのはどっちなの?」
「……そんなん………ウチは、だって」
「今までは見過ごしてあげてたけど、この部室で、課題の写真も出さずに、自分のグラビアもどきのえっちな写真ばっかり撮って、それで部活って言える?部室って、学院から貸してもらってるのよ?りさちゃんの頭でもそれは分かるよね?最低限、入学はできてるんだから」
「……うち、まぁまぁ優等生やん」
「あなたくらいのレベルで優等生ぶられるのって、正直不快なのよね」
「…………ごめんなさい」
りさが謝っている。信じられない。
「ほんとに優等生なんだったら、部室の私物化は今後、2度としないでね。次したら部長権限であなたを退部にします」
りさが退部宣告を受けている。
凄い攻撃力だ。
「……はい、もうしません」
結局、写真部には在籍したいんだなりさは。
部長があやかだし、副部長があのしっかり者のまふゆだもんなぁ。居心地の良い部活なのだろう。
優しいしっかり者が多い部活というのは、自然と人が集まる。
楽しく活動する為には、治安維持のためのルール作りが重要だ。
野球やサッカーだって、審判がしっかり機能してなくては楽しめない。
あやかとまふゆがいるだけで、活動レベルは格段に上がるのだろう。
実際、まふゆは写真への取り組み方が真摯だった。
芸術性の高い写真を撮りたいみたいな事も言っていた。
りさがこの部に所属したがるのは分かる。
「そっ、なら、話を続けても良いよ、私はここで本読んでるから」
あやかはそう言うと、カバンから分厚い文庫本を取り出し、椅子に座って読み始めた。
スマホやタブレットではなく、文庫本で読むあやかに、また凄味を感じてしまう。
ちなみにあやかはスマホアプリにも詳しいので、敢えて紙で読んでいると補足しておく。
「……で、りさ、何だったっけ?」
僕は落ち込んでいるりさに声を掛けた。
「あの、玉元くん、ウチ、なんか変やったんやんか」
「どう変だったの?」
「何かな、恥ずかしいんやけど」
「うん」
「えっちだったんよ」
「りさが?」
「せやねん」
「えっちなのは、そうだけどさ。もしかして、りさって、昔はえっちじゃ無かったの?」
「ううん、昔からえっちやったで」
「じゃあ、なんで急にそんな事を」
「なんやろ、ウチな、皆んなに美人やって言われてて、実際、写真撮って貰っても、綺麗やんか」
「まぁ、確かに」
自分で言うのはどうかとは思うが、これだけ美少女だと、自他共に認めてもそれは仕方ないかもしれない。
「それで、アイドルとか、女優さんとか、憧れてたんよ」
「そうだったんだ」
「うん、そんで、ウチ、色々やってみたんやけどな」
「役者さんとかってこと?」
「せやねん、せやけど、ウチ、歌もダンスも下手やし、空気読めへんし、役者やっても棒やから、お客さんにめっちゃ叩かれたんやんか」
「そっかー、プロの世界は厳しいからね」
「そう、それで、なんでこんな頑張ってんのに叩かれるんやろうって思たんよ」
「結果はともかく、頑張ること自体は良い事だよ」
「ありがと、……そんで、ウチ腐ってもうて」
「腐る?なに?ボーイズラブにハマったとか、そう言う意味?」
「ちゃうてっ!なんでやっ」
恥ずかしそうに笑うりさ。
笑顔が可愛い。
やっぱり、普通にしてるとりさは可愛く見える。怒ると怖いが。
「ってことは、夢を諦めたってこと?」
「ウチな、周りに美人やって言われてたやん?」
「……そう聞いたけど、それで?」
ついさっきだが。
「うちよりそうでも無いって思ってた子が、アイドルになったり、役者で有名なったりして人気になっていって、自信無くしてもーて」
「そりゃなぁ、……仕方ないよね」
身近な存在が有名になると、僻んでしまうのは有りがちな事だ。
例えば、小学生の同級生が、大人になってから一流のパティシエとしてテレビやネットで活躍していたら、最初は別人では無いかと疑うだろう。
もし、学生時代に自分よりもお菓子作りが下手な子だったとしたら尚更だ。
自分の事は過大評価し、友達の事は過小評価する。
当たり前と言えばそうだ。
いつでも、自分に都合の良い世界であって欲しいと思うものなのだから。
「そんでな、うちの魅力って何やろうって思い返してんな」
「うん」
「何やと思う?」
「なんだろう?」
「当ててみて」
「……声が大きい、とか」
「真面目に考えーやっ!」
りさが怒る。
だが、悪くない。落ち着いている様子だ。
「分かったって、だけど、……そっか、アレだ。足が速い」
「ふざけとん?」
「違うって!じゃあなに!?」
「なんでや、見てみぃ、ウチの身体、このえっちな身体に決まってるやん」
「……そんなの当てられるかぁ!」
「玉元くん、ウチの身体、隅から隅まで楽しんだ癖に、なんなんっ!」
「魅力を聞かれて、キミの身体ですね、なんて言えるかよ」
「ウチの大事なとこ、あんなに舐め回しといて分からんとかあり得へんわ……あーっ、思い出しただけで恥ずかしいわっ!」
一応記憶はしっかりあるようだ。
どういう心情の変化があったんだろう。
「で、結局、その自慢の身体で何したんだよ」
「ネットでウチの生放送したんやで」
「そっか、それでバズったんだ」
「バズってへんよ」
「バズってへんのかーい!」
「ふふっ、せやねん」
楽しそうに笑うりさ。
「それで、放送は何したんだよ」
「色々やったで、顔は隠してたんやけど、歌ったりダンスしたり、ボイスドラマもやったなぁ」
「でも、ダメだったんだ」
「コメントでは褒めてはくれたんやけどなぁ」
身体を見るのが目的の人だけが集まったんだろうな。
歌が上手かったら相乗効果でバズったかも知れないけど、無理だったか。
「それで、続かなかったの?」
「ううん、ある時から、そこそこファン増えたんやで、バズっては無いけど」
「へぇー、凄いじゃん、何やったの?」
「ふふっ、オナニーや」
「おなっ、ゴホゴホっ……」
急にオナニーと言うからびっくりして咽せてしまった。
「うちの身体見たいって言うコメント増えたから、ちょっとずつサービスしてたんやけど、いつの間にか全裸でアソコ弄ってたんよ」
「そっか、でも、何はともあれ、人気が出て良かったじゃん」
「……せやけどな、こんなん、人気って言うんやろか」
「知らないよっ!」
「女の子のオナニーて、身体普通でもバズってない?」
「バズってるよ、アレこそ、どのフェチズムが刺さってるのか未知の領域だよね」
「せやろー、せやから、うち、初めはこのえっちな身体が良いんやと思ってたのに、うちより体型微妙な子がどんどん人気になって、ウチもう、どうでも良くなったんよ」
「別に人の好みなんてそれぞれなんだから、いちいち気にしない様にした方が良いって」
「そうなんやろか」
「そうそう」
「そんでな、放送もうほとんどせんようになったんやけど」
「うん」
「オナニーにはハマってしまって」
「……なるほどね」
「うち、毎日、おもちゃで気持ち良くなってもーて…………って、なんでこんな事アンタに話さなアカンねんっ!」
急に怒るりさ。
「勝手に話し始めたんだろ、僕は話してくれなんてひと言も言ってないからな」
「なんやねん!うちの身体、イジりたい放題に弄って、うちがどんだけ気持ちよかったか、知らへんやろっ!」
「知らないよっ、てか気持ち良かったんなら良いじゃんか」
「でもなっ!それで中出ししてええわけちゃうでっ」
「いっぱい中に出してって言ったのは誰だよっ!」
また頬を真っ赤に染めるりさ。
自分の言った事を思い出したようだ。
「……うち、言うてたな」
「そうだよ、言われなきゃ出してなかったよ」
「そっか……それは、早とちりやな」
そうは言ったが、この言い訳は実はズルい。
何故なら、あの時点では出してないというだけで、実際は、りさをイかせてから中出しをするつもりだったからだ。
だが、りさの沸点は、勝手に中出しをした、という点だ。
なら、お願いされたから中に出したと言う事にしておけば解決だ。
今回の件で、抑制剤を出す時は、言質を取る必要が出てきた。
性欲で暴走する見習いサキュバスと違い、人間化したら普通の女の子の思考に戻る、というか、変化するという事が分かった。
これを踏まえて西園寺キラリの抑制を考えると、ケルビンの戦略の意図が見えてくる。
確かに、抑制前にしっかり口説くことによって、いざ人間の女の子の思考に変化したとしても状況を受け入れやすくなる。
ゆい子にしてもそうだ。
抑制する前に、セックスする事に違和感を持たせない様にしなくてはならない。
本当に一筋縄ではいかないという事だ。
しかも、人間になってから、あなたはサキュバスになるかも知れなかったんですとか言ったところで、信じてもらえないだろう。
とにかく今回は、結果オーライだ。
僕は悪魔測定器をこっそりとポケットから出す。
「りさ、僕はこれからも君とは良い関係を築きたいと思ってるんだ」
「ウチと都合のええ関係になりたいん?」
「そんなこと言ってないだろ」
「ウチに中出しした事実は消えへんのやで」
「そりゃそうだよ」
「明日から、ウチは玉元くんに襲われへんように気をつけなアカンな」
「気を付けなくても、もうやらないからさ」
「一回こんな事があったら、絶対またどっかで触るやろ」
「触らないって」
「嘘やっ!」
「じゃあ、言われたところしか触らない」
「触らせへんで」
「そんなに嫌ならもういいよ、さぁ、もう帰ろう」
「話は終わってへんで」
「どうしろって言うんだよ」
「あ、せや、分かった、催眠術やな」
「催眠?なに?」
「うちがえっちになるように、催眠術掛けたんやろ?」
「りさがオナニー配信してたのは僕とは関係ないだろ」
「それは、今ちゃうで」
「だけど、その頃からえっちだったんじゃん」
「それは、そうやけど、何か今はちゃう気分なんやって」
「そんな事言われても、しちゃった事はもう取り返しつかないんだからさ」
「そうやって、女の子を騙してるんや」
「騙してないって」
「ウチが妊娠したらどうするん」
「そうなった時は、責任取るよ」
「ゆい子ちゃんにも出しとるよな」
「出してないって!我慢したよ、危なかったけど」
「ほんまに?ゆい子ちゃんビクってしてたで、アレそうちゃうん?」
「違うよ、アレはゆい子がイっただけで、僕は耐えた。……てかそこも覚えてたのか」
「当たり前やろ、ゆい子ちゃんばっかり見て、うちの事、ほっといたやん」
「何だよ、やっぱり僕にして欲しかったんじゃん」
「ちゃうて、ちゃうんやて、あー、ウチほんまどーなってしもたん?何かえっちなことばっかり頭に浮かぶんやけど」
「知らないよ、僕にして欲しいんじゃないの?」
「して欲しくないわ!」
「例えば何をして欲しいって?」
「……えっと、股のとこ舐めて欲しい」
「クンニして欲しいんだ。舐められるの好きなの?」
「……好きやで」
「どこが良いの?」
「クリちゃん」
「クリトリスをくにくにして欲しいの?」
「クリちゃん、……くにくに」
りさが股をモゾモゾさせながら左右に揺れている。
「それで?」
顔が真っ赤になって、両頬に両手を当てるりさ。
「くにくにぃ……くにくに」
「気持ちいい?」
「くにくに気持ちいい………はっ!だからっ!催眠術かけんのやめーやっ!」
両手を握りしめてバタバタしながら怒るりさ。
「かけてないって!」
「誘導尋問や」
「うるさいなぁ、もう」
バンっと、本を閉じたあやかが立ち上がる。
「もうっ、何の話してんのよっ!そんなこと話すんなら続きは明日にして!じゃあ、部室閉めるから出ていきなさいっ!」
「「ごめんなさいっ」」
今だ!
あやかが怒ったタイミングで、りさに悪魔測定器を後ろから二の腕部分に当ててみた。
結果は、オールグリーン。
成功だ。
上手くいった理由はまだ分からない。
絶頂のタイミングも、出す前と、後、どちらに効果があったのか、そこが明確ではないのだ。
後から絶頂させた方に効果があったのか、無かったのか。
それとも、2回とも効果が出ていたのか、そこが問題だ。
アカリにも聞いてみる必要がありそうだ。
携帯を確認すると、アカリから返信が来ていた。
『すぐ戻れそうにない。できれば帰り、プリウムに来て欲しい』
どうしたんだろう?
ゆか達と何かあったんだろうか。
明日の夜のこともマリンと相談しなくてはいけない。
今はマリンと話す方を優先だ。
今日は朝から色々と大変だった。1日でここまで気持ちが上下するのも珍しい。
最近はずっとそうだが……。
明日は更に壮絶な戦いになるだろう。
むしろ本当の試練は明日だ。
冥界のザクロが相手だ。
何が起こるか想像もつかない。
こんなことくらいで疲れている場合ではない。
……とりあえず、抑制は上手くいって良かった。
これからも、りさとは仲良くしていけるだろうか?
僕は人間になったりさと、どう付き合っていくのが正解かで頭の中がぐるぐる回っている。
相性は悪くないとは思うが、どうなんだろうか。
ちなみに、挿入前の愛液の味は苦かった。
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