見習いサキュバス学院の転入生【R18】

悠々天使

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2章 粛清と祭

第63話 蝶よ踊れ

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 ソフィーの母親は、娘が自分ほど優秀では無い事に苛立ちを感じていた。


 たかが中学生、されど中学生。


 もし、才能があったとしたら、それこそシンのように、飛び級並みの学習速度を見せていたとしてもおかしくはない。


 中学2年の娘が、クラスで10番目くらいの通知簿を持ってきた時は目を疑った。

 ソフィーの母は、自分の過去を振り返っても、そんな通知簿、のだ。

「ソフィアですらこんな成績を付けられるなんて。あなたの中学校って、優秀な生徒がたくさんいるのね」

 実の娘に言った言葉。

 これは本音だ。

 何故なら、娘がでトップである事は、当たり前なのだから。

 だが、ソフィーの通っている中学校は全国では平均レベル。

 決して、難関中学というわけでもない。

 中学受験をしなかったのは、という考えがソフィーの両親の間では常識だったからだ。

 皮肉にも、その常識が間違ってない事は、妹夫婦の息子であるシンが証明してしまっている。

 聞いた話だと、シンが小学6年の頃には、全国的に難関と言われている地元の大学の過去問で合格点を叩き出していた。

 本人いわく、まだギリギリの合格ラインだそうだが、そもそも小学生で大学受験の勉強が出来ている時点で神童と呼ばれてもおかしくは無いだろう。

 ただ、ソフィーの母親は、シンの成績について触れる事は一度もなく、あくまで、という主張だけをし続けていた。

 ソフィーの母親が娘の自慢をして、シンの母親がそれを持ち上げる。

 もちろん、シンの母親の言う事はいつも決まっている。

「ソフィアちゃんに比べたら、うちのシンなんて、全然ダメで……」

 コレはもはや形式的とでも言って良いくらいの常套句じょうとうくになっていて、この言葉を食卓で聞かなかった事はほとんど無いくらいだったそうだ。

 母親姉妹の上下関係。

 妹の息子より、姉である自分の娘が出来ない筈はない。

 それは、本能的な対抗意識が引き起こしていた現象と言っても良いだろう。

 ちなみに、父親兄弟でも同じではあったが、彼らの場合は少し毛色が違った。

 兄を尊敬していたシンの父は、ソフィーの能力を別の視点で褒めていたのだ。

「ソフィアちゃんは、素晴らしい女性だ。感性豊かで、愛らしいだけでなく、大事な場面では歳の割に落ち着いている。将来の会社の代表に相応しい子だ」

 こう褒められると、ソフィーの父も満更ではない。

「いやいや、お前の息子だって、あの歳で高校の勉強ができてるんだろ?それに、経営戦略の本を読んでいるところを見たぞ。天才なんじゃないか?さすがは俺らの血筋だな」

 と、実力は認めていたようだ。

 そう言う意味では、母親ほどバチバチの関係ではなく、上下関係は緩やかだ。

 それでも、自分たちのを優秀だと言う事でバランスを取る事は忘れてなかったが。

 この関係性については、ソフィーとシンも気付いている。

 子供ながらに気を遣って、シンは自分の小学校での失敗談を話し、本当ならその場で伝えたかった事を我慢していた。

 それは例えば、小学生読書感想文の全国大会で表彰されたり、全国の小学生スピーチコンテストで準優勝したり、夏休みに描いた風景画で最優秀賞を受賞したり、といった、自分の格を上げるような話題についてだ。

 せめて、ソフィーも何か受賞していれば話題を出しやすかったのだが、残念ながら、ソフィーの自慢といえば、地区の交通安全の標語が佳作になったくらいで、目立った賞状も無かったのだ。

 なんだったら、標語でもシンの方が何件も優秀賞を取っている。佳作などなく、出せば全て優秀賞か最優秀賞だ。

 審査員の中でも、次のシンの標語はどんな面白いものかと、話題になってるほどだったらしい。

 もはや、受賞レベルなのは前提になっているというわけだ。

 だが、それを春祭家の食卓で話題にする事はほぼ無かった。

 しかし、それはある意味では当然と言える。

 毎週のように何かを受賞するシンの話なんかしていたら、意図せずに妹の息子を褒め続けるだけの会話になってしまうからだ。

 それは嫌だろう。姉として。

 逆に言えば、それだけシンが規格外だったと言うわけだ。

 ソフィーの母は、それに薄々気付きつつも、かといってそのまま受け入れる事はできなかった。

 むしろ、気付かなかった、という事にしておいた方が精神衛生上良いくらいだ。

 母親にとって子どもは何よりも大切な存在であると同時に、自分自身のステータスの一部でもある。

 優秀であればあるほど周囲へ誇張して話し、そうでなければ理由を付けて隠そうとする。

 良い事だけであればまだしも、もし子どもが何か軽犯罪でもしようものなら、すぐにママ友たちのヒエラルキー最下層だ。

 それで言うと、父親の方が子どもに対して客観的になりやすく、良い意味でも悪い意味でも冷静なことが多い。

 生物としても、父が子を社会的に鍛えることは理に適っている。

 実社会での能力を重視するのが父親だとすれば、世間に溶け込ませる事を重視するのは母親だろう。

 そういう意味では、母と子は一心同体になり易い。

 それは自らが腹を痛めて産むのだから当然かもしれない。

 むしろそう考える事によって、より愛情が深まるとも言える。

 飛び抜けて優秀とまではいかなくとも、自分と同程度以上の存在であって欲しい。

 ソフィーの母にはそのプライドがあった。

 そもそも、子どもの教育に無感情でいるなんて、とても普通の感覚では不可能だ。

 だからこそ、シンから見ても、ソフィーには優秀であって貰わなくてはならなかった。

 自分が目立つと、ソフィーの母親が傷付く。

 そして、彼女の怒りの矛先が、最終的にどこへ向かうのか……。


 その事を9歳のシンはすでに知っていた。


 ソフィーの役目。

 それは春祭家の後を継いで、代表取締役社長となり、安定した経営を続ける事。

 あくまで、シンはサポーター。

 これが覆る事は、決して無いのだ。

 春祭家にとっての誤算。

 おそらくそれは、ソフィーの方よりも、シンの方にあったのではないかと僕は思った。

 シンの才能は、自分自身だけには留まらない。

 例えばこんな事もあった。

 ある日、全国読書感想文コンクールの表彰状を見て、シンの母はシンに言った。

「シン、私はあなたの母親になれて、とっても幸せよ」

「そうなの?なんでさ」

「だって、こんな立派な賞、私の人生で一度も貰った事なかったもの」

 シンはキョトンとする。

 母が喜ぶ事自体は、素直に嬉しい。

 だが、彼には疑問もあった。

「こんなのが欲しいなんて、母さんは変わってるね」

「どうして?あなたは表彰されたのよ?誇らしいと思うのは、母親として当然でしょ?」

「俺は何もやってないよ」

「そう?だって、受賞したじゃない」

「それは、学校で書かされただけで、俺が書きたくて書いたわけじゃないし」

「……それはそうだけど、真面目に読書して、真面目に書いた証拠じゃない、凄いわ」

「別に真面目にやった覚えはないけどね」

「だとしてもよ、母さんは嬉しいわ」

「そうなんだ、そんなに嬉しいなら、また貰えるように書いてあげるよ」

「本当に?そんな事できるの?」

「できるさ、感想文には法則があるんだ」

「法則?公式みたいなものってこと?」

「そうさ、母さんにも教えてあげるよ」

「そんなの、私、シンみたいに頭が良いわけじゃ無いから……」

「俺に任せなって。それに、頭の良し悪しなんて、本当は存在しないさ。母さんと俺は違う人間なんだから」

 シンの母は、息子の言葉に頭を傾げる。

「そうなの?」

「母さんも表彰されたいんでしょ?」

「……私は、その」

「さっき、人生で一度も貰った事ないって言ってたじゃないか、ってことは、欲しいって事でしょ?表彰状」

 シンの母は動揺する。

 なぜなら、シンの評価は自分の評価とほぼイコールだと考えていたのだから。

 だが、息子はそんな自分の常識を、いとも簡単に覆してくる。

「………そんなつもりで言ったわけじゃなかったんだけど」

「いいからさ、俺の言う通りにしてみてよ」

「分かったわ」


 その後、シンの教えた通りにシンの母がエッセイを書くと、見事エッセーコンテストで入賞した。




 ⭐︎





「姉ちゃん、いよいよ明日だね」



 シンがピアノの前で座っているソフィーに声を掛けた。

 ソフィーは汗だくで麦茶を飲んでいる。

 汗を拭くためのハンドタオルを渡すシン。

 可愛いペンギンが刺繍されているピンクのタオルだ。

 取引先との懇親会を明日に控えて、彼女は緊張した面持ちだった。


「やれる事はやったつもりだけど、本当にこんなので良かったの?」

 タオルで汗を拭くソフィー。

「こんなのって……、俺の指導に文句を言うつもりなのか姉ちゃんは」

「……そういうわけじゃ無いんだけど、なんか不安で」

「ほほぉ、何が不安なのか教えて貰おうか?」

 ジトーっとした目で言及するシン。

「シンのこのカリキュラムだと、私、普通に弾くだけって感じなんだもん」

 シンは少し考える。

「姉ちゃんは、ブロッコリーは好きかい?」

「……なによ突然」

「いいからさ、答えてみてよ」

「あんまり好きじゃないけど……」

「なら、いつもは、食卓に出されたらどうやって食べてるの?」

「……マヨネーズかけて食べてる」

「美味しい?」

「うーん、美味しいって言えるかは分からないけど、それだと、けっこう食べられるかな」

「なら、マヨネーズ単体で食べる事はある?」

「あるわけ無いじゃん、あり得ないでしょ?」

「あり得ない………なんてのは、ちょっと言い過ぎだろ?」

「…………でも身体に悪いと思う」

「なんで?マヨネーズなんて、卵黄と、お酢と植物油くらいだろ?低糖質だから、ダイエット中にも使える。確かに、カロリーは高いけど、そのまま食べたからって風邪を引いたりしないさ」

「そりゃそうだけど、でも、………身体に悪いと思う」

「根拠は?」

「しらない」

「想像ってわけだ」

「……うん、べつに、マヨネーズだけ食べたいとか思った事ないもん」

「そうなんだ。まぁ、量によっては中性脂肪が増える原因になる可能性はあるけどね」

「ほら、そうなんじゃん」

「どんな食品でも摂り過ぎはダメだろ。極論を聞きたいわけじゃない。それにしても、普段、俺より遥かにマヨネーズを口にしている姉ちゃんが、そんなにマヨネーズを嫌ってるとは思わなかったね」

「嫌ってなんかないよ。……だってさ、お砂糖とかも、そのまま食べないじゃん」

「うん、そうだね、偉い!さすが俺の姉ちゃんだ」

「またバカにして、ほんとに怒るよ!!そもそもブロッコリーの話じゃないの?」

「そうだよ、俺がしてるのは、ブロッコリーの話だ」

「うん」

「ブロッコリーが好きな人も、ブロッコリー単体に対して、何も調味料を付けずに食べる事は少ないと思うんだ」

「まぁ……そうね」

「なら、姉ちゃんは、ブロッコリーを食べる事は身体に良いと思うかい?」

「うん、良いと思う」

「なんで?」

「だって、ブロッコリーだし……」

「へぇー、ブロッコリーって身体に良いんだ、だけど、マヨネーズをかけても良いのかい?身体に悪くなっちゃうよ?」

 耐えられずにソフィーが怒った。

「んもおおおお、ちょっとかけるくらいだったら良いでしょ!?何が言いたいの!!?」

 シンが笑う。

「それなんだ、姉ちゃんは、新鮮なブロッコリーになれば良い」

「……意味わかんない!!!」

「とにかく、明日は、最高の品質のブロッコリーを頼むよ」

「ブロッコリー嫌いだもん!!」

「アハハ、分かった分かった、じゃあ、最後のテストをして、明日に備えようか」

 シンが部屋を出て行こうとドアを開けると、後ろからソフィーが叫ぶ。

「シンほんと嫌い!!」



「ブロッコリーと、どっちの方が嫌い?」



「シン!!」


「ふふ、じゃ、明日の演奏会、楽しみにしてるよ、お休み」


 バタンとドアを閉める。


 ソフィーは、手に持っていたハンドタオルをドアに向かって投げたが、かなり手前でヒラヒラと舞って落ちた。






 ⭐︎




 当日の朝。

 400人以上は入れるだろうホテルの一室を貸し切った懇親会は、ソフィーの年齢を考慮して、昼間に行われる事になっていた。

 11時から開場し、立食パーティーの合間で、ピアノの演奏会を挟むという流れだ。

 演奏は11時30分から12時までの30分間。

 曲目に関しては、カノンを弾くことは決まっていたが、それ以外は好きに弾いても構わないという事だった。

 ソフィーは、新調したダークブラウンのドレスを着て、独特のオレンジの髪をハーフアップにし、銀色の蝶のバレッタを付けて参加した。


 その姿は、まさに、春祭家のご令嬢に相応しく、普段シンに見せている口うるさい姉とは思えない程だった、……らしい。

 本人は口うるさいつもりは無いそうなので、シンいわく、という事になる。

 学校の勉強に躓いているとはいえ、マナーや、何気ない所作に関してはソフィーも一流だ。

 14歳にして、その気品は同年代を遥かに凌駕している。

 確かにソフィーは見た目も美人なのだが、それは単なる容姿に留まらず、その振る舞いの中にこそあった。

 後に、僕とソフィーについて話した時も、この点はシンも高く評価していたらしい。

 まぁ、当のソフィーにとっては、弟にそんな評価をされたところで腹が立つだけなのかも知れないが……。

 ちなみに、シンも9歳ながらにフォーマルな服装はしていたらしいが、出発時に蝶ネクタイをソフィーに弄られてイライラしていたらしい。

 気持ちは察するが、弄られているシンはシンで気にはなるので、見てみたいとは思った。

 2人の両親は終始上機嫌で、挨拶回りに余念がない。

 それもその筈だ。

 会社の重役が集まる大手取引先の懇親会で、自分の娘を、次期代表としてお披露目できるなど、こんな嬉しい事はないだろう。

 一方で、大きなパーティー会場に慣れないソフィーはずっとシンにくっ付いていたらしく、今回の主役が自分だと言う事にプレッシャーで足が震えていたようだ。

 シンにとっても緊張感のあるイベントに変わりない。

 だが、ソフィーにとってはその数倍、いや、数十倍の緊張感だったかも知れない。

 なんせ、パーティー開始早々に、自分の名前が呼ばれて、サーチライトで照らされたのだから、さぞかし心臓が飛び出る思いだっただろう。

 ソフィーの父の、大手取引先、社長。

 改めて再会して、じっくりと彼を見る。

 優しそうだが、かなり貫禄のある男だったそうだ。

 彼の力強い声で紹介され、顔がこわばるソフィー。

「………とまぁ、色々と前置きは致しましたが、なんと言っても本日のメインは、あの、春祭家のご令嬢、春祭ソフィアさんの生演奏です!!」

 社長の気前の良い声音で会場が盛り上がる。

 ソフィーは、照らされたライトの中で、精一杯のお辞儀をした。

 拍手の中に、「ソフィアちゃーん!」と、名前を呼ぶ声もチラホラと聞こえ、初披露にも関わらず、すでにファンを獲得している様子だった。

 さすがソフィー、と言ったところか。

 ここから、こうなった経緯を社長が説明する。

「本日、彼女にこの会場へお越しいただいたのは、他でもない私自身の指名でございましてね。先週、たまたま春祭家にお邪魔しておりましたところ、どこからか神秘的な音色が耳に届きまして。私はまた、てっきりプロの先生が隣の部屋でピアノを弾いてらっしゃるのかと思って、大変感動しておりましたら、音が止んで、足音と共に目の前に現れたのは、このような可憐なお嬢様ではありませんか。私は耳だけでなく、目も心も奪われてしまいましてね」

 ここで、野次が飛ぶ。おそらく同年代で、知り合いの社長仲間かもしれない。

「惚れたとか言うんじゃないだろーなっ!!」

「いくら何でも若過ぎるだろー!」

「奥さんの前でそんな事言って良いのかー!?」

「また不倫疑惑かー!?」

「店だけにしとけよなぁ!!」

 盛り上がる光景。

 シンのスーツの袖を力一杯握るソフィー。

 大人にこれだけメインで注目されることは、人生で初めての経験だったらしく、かなり汗が出たらしい。

 怖いのだろうと、シンはすぐに分かったようだ。

 続ける社長。

「皆さん、お気持ちは分かりますがご静粛に。………もちろん、包み隠さず申し上げれば、その瞬間に私は彼女に惚れました。……と言っても、決していかがわしい意味では無く、まさに彼女の未来に惚れたのです。……若く、美しい、次の世代を担う存在。それはひとえに、この国の未来であり、希望。そこにわずかであっても投資したいと、あなた方も思いませんか?……私は思います。そして、その価値を今日、皆さんに伝える為にお越しいただいたのです。おや?信じられないですか?構いません構いません、是非そのままの心でいてください。さぁ、彼女の演奏に耳を傾けましょう。そうすれば、私の言葉にも信ぴょう性が増すというもの。さぁ、こちらへどうぞ」

 ソフィーは、社長の伸ばした手を取り、壇上に上がる。

 グランドピアノが、会場の中心に置かれていて、ぐるりと囲うように大人達が彼女を見ていた。

 まさにメイン。

 部屋の端で、装飾品のように置いてあるピアノを弾くのとはわけが違う。

 シンはすぐに気付いた。

 ソフィーのかつてない程の緊張感と不安感に。


 ソフィーの両親は、娘を全く疑う様子はない。

 信じ切っている。

 そう、この演奏に、何の心配もしていないのだ。

 それゆえに、ソフィーが両親を直視する事はできない。

 父親の期待も、母親の圧力も、彼女の緊張を和らげるものではなかった。

 ソフィーは、シンの父親の顔をチラッと見る。

 心配そうに自分を眺める優しい大人の男性。

 ソフィーは、シンの父親を誰よりも信頼していた。

 自分の1番の理解者は彼だと思っていたのだ。

 だから、シンの父親の顔を見て気持ちが少し落ち着いた。

 社長から、「では、あの時の感動を、皆さんにも」と、バトンを投げられる。


 会場が静まり返る。


 いつでも弾いて良い。


 自分に託された時間。

 自分の為に与えられた発表の場。

 この上ないチャンス。


 それは分かっていた。


 いつでも弾いて良いのだ。


 時刻は11時38分。


 カチカチと、静まり返ったパーティ会場で、時計の秒針の音が聞こえた。


 スポットライトが自分に当たり、全身が熱い。



 分かる。



 そうだ、ソフィーはアガっていたのだ。



 完全に会場の空気に呑まれている。


 自信は無い。

 あるはずが無かった。


 時刻は11時42分になった。

 社長の挨拶から、5分ほど経過している。


 ソフィーは自分でも驚いていた。



 全く、両手が上がらないのだ。

 膝の上で、石のように動かない手。


 全身の、どこに筋肉があるのかも忘れてしまったようだった。


 自分の腕が、自分の意思で上がらない。

 そんな経験、今までしたことは無かった。

 過去、緊張感で震える事はあった。

 最悪、震えたとしても、弾き始めさえすれば落ち着くと思っていた。

 だって、今までがそうだったのだから。


 だから、この現状を受け入れられなかった。


 恐怖で動けない。


 視界から色が消えた。世界がモノクロになる。


 ソフィーは、蛇に睨まれたカエルのように、ただただピアノの前に座ったまま硬直した。


 経験したの事ない、かつてないほどの恐怖。


『ごめん、お父さん、お母さん』


『私、…………弾けない』


 ソフィーは目眩がした。


 たぶん、私は一音も出す事なく、このまま倒れるのだろう。

 そう、ソフィーは思った。

 徐々に意識が遠のいていくのを感じた。


 もし、社長がうちに来たあの日、カノンを弾いていたのが、シンではなく自分だったなら、この場で自信満々にピアノの腕を披露していたに違いない。

 自分はそういう人間だ。

 ソフィーはそれを自覚していた。

 彼女は、自分を売り込む事に躊躇いなど無かったのだ。

 それが出来ないような性格ではない。

 ただ、今回だけは違った。


 みんなが期待しているのは私ではない。

 弟の、シンの演奏だ。

 そして、彼との差を完全に自覚してしまっている。

 もし、シンが自分より下手だと、たとえ勘違いであったとしても思えていたのなら、ここで腕が上がらないなんて事は無かった。


 だって、それはそうだ。


 自分こそ、この場に相応しい人間なのだから。




 …………だが、今は知ってしまっている。



 シンと自分の差を。



 埋められる自信など、1ミリも無い。


 なのに、私はこの場でシンの代理としてピアノを弾こうとしている。




 むりだ。




 ソフィーの目が霞む。

 潤んで、涙が溢れている。



 私は、もうダメだ。


 限界だった。

 身体がふらついている。今にも気絶しそうだ。

 私はこれからどうなるのだろうとソフィーは思う。



 父には失望されるだろう。



 母には幻滅されるだろう。




 ガッカリしたと、今日の夜、食卓で話されるだろう。


 悔しい。


 悔しい悔しい悔しい。


 それでも、腕は重く、どんなに力を入れようとしても鍵盤の上に上がってはくれなかった。







 周囲のどよめきが、遠くなった耳に聞こえた。



 失望だ。




 きっと、なんなんだあの子は、と、どよめいている。


 私だって、アレだけ派手に紹介された社長令嬢が、ピアノの前で微動だにしなかったら失笑してしまう。

 他人事なら良かった。

 そういう同級生を今まで散々見てきたし、自分とは違うと馬鹿にしてきた。

 それが、今、ブーメランで自分に刺さっている。


 私はなんて愚かだったんだ。


 愚か者は、

 今までは、自分を客観視出来なかったから平気だったのだ。

 高級なレストランで周りを気にせず騒いでいるのは小さい子供くらいだ。

 大人が何も配慮せずに騒いでいたら正気を疑う。

 私は今まで、自分が馬鹿にしていた同級生以下だったのだ。



 ソフィーはそう思った。




「なんだ?あの子?」


 どよめきの中で聞こえる若い男性の声。


 やはり言われている。



 そう思った瞬間、耳元で聞き慣れた声がした。



「ねーちゃん!」


 白黒の視界が急に色付く。



 シンだ。




 だが、いつもと違って甘えた声だった。



「ねぇ、ねーちゃん!!ずるいよー、僕も弾くうううー!」



「え?……シン?」


 シンが駄々をこねるようにバタバタと足踏みをしている。


 まるでだ。


 彼もドレスアップしているので、こんな動きをしたら、破れるんじゃ無いかと心配になった。


 だが、一瞬で分かる。


 シンは、自分の為に演技をしてくれている。

 社長が言った。


「皆さん、彼はですね、ソフィアさんの弟で、えっと、……名前は?名簿、ほらそこのキミ、名簿だ。………うん、あ、あー、そうそう、シン君っていう子で、………えっと、随分とお姉ちゃんっ子だそうで、ハッハッハ、これは困りましたなぁ」

 少し焦ってはいるが、これはチャンスだ。

 ソフィーは、社長に声を掛けた。

「……あの、すいません弟が。……こういう場所には慣れてないので、私が離れると不安になってしまうんです。良かったら、一緒に弾かせて貰えませんか?少し弾けば落ち着くと思いますので」


「え?……あぁ、それはもちろん。今日は君のためのショーだ。好きに弾いていただいてけっこうだ……確かに、シン君にこういう場は、まだ早かったかもね。申し訳ない、私も気が付かなかった」

「いえいえ、これも良い経験なので。寛大なお心遣い、感謝致します」

 ソフィーは立ち上がって頭を下げる。

 すると、シンは、そのソフィーの動作を見様見真似するかのように、大袈裟に頭を下げた。

「かんだいな、お、こころずかい、感謝いたします!!ねぇねぇ、姉ちゃん、かっこいい?ぼく、かっこいい??」

 大きな声ではしゃぐシン。

 普段とは全く違う彼の振る舞いに、冷や汗が出るソフィー。

「ハイハイ、カッコいいわよ、シン」

「やったぁー!!」

 シンが喜ぶ様子を見て、周囲が和む。



 ソフィーは、シンと2人でピアノの前に座る。


 すると、さっきまでの緊張感が嘘のように消えていた。


 こんなフォローが出来るなら、もっと早くして欲しかったくらいだと思った。


「シン、じゃあ、弾くわよ、良い?」

「うん、ねーちゃん、ぼくの演奏に着いてこれるかな!?ふふふっ」


 どっと、笑いが起きる。


 周囲からすれば、この弟が調子に乗っているようにしか見えないだろう。


 また冷や汗が出てくる。


 ここまで真実と乖離があると、もはや演奏で隠さなくてもバレないのでは?とさえ思った。


「いくよ!姉ちゃん!!ぼくに続いて」

 元気に声を上げるシン。



「仕方ないわねっ!」



 弾き始めるシンに合わせて、ソフィーも指を動かす。


 凄い。


 レッスンの時と全く同じように弾くことができる。

 何も不安を感じない。

 両手の指先が、自分の思うままに動いた。

 手が自由に動く事に違和感があるなんて、今まで生きてきて初めての経験だった。

 本当に、今日は初めての経験のオンパレードだ。

 ソフィーは頭が追いつかないくらいだった。

 演奏は、初めだけシンがリードしてくれたが、すぐにそのまま自分がメインで弾けるようにパスを回してくれた。


 シンは分かっている。

 あくまで、今日の演奏はソフィーのものなのだ。

 メインはソフィーが弾かなくてはならない。


 だが、それではクオリティに差が生まれる。


 ソフィーは不安感を抱きながら弾き続ける。


 だが、途中から、それが勘違いだと気付いた。



 何故なら、ソフィーの演奏をシンが弾き始めたからだ。



 演奏は瞬く間に一流のそれへと変貌する。


 周囲の空気が変わるのを肌で感じた。


 聴き入っている。


 会場がカノンに呑まれている。

 あくまでメインで弾いているのは私。

 では、シンは何をやっているんだ?

 ソフィーはシンの手元を横目で確認する。





 だが、シンが何をどう弾いているのか、







 心臓が高鳴る。







 シンは、………弾いているんだ?



 派手に腕を上下させ、周囲には遊んでいるように見せているが、単なるパフォーマンスとも違う。

 自分の出す音に、何かが補完されている。

 だが、それが全く分からない。



 ただ、ただただ感動的なメロディが会場に響いた。




 だが、ソフィーにはその感動的なメロディが、何から生まれているのかさっぱりわからなかった。

 だが、一つ言えるのは、以前にシンが弾いていたカノンと、今もほぼ同じ感想を抱いているという事だ。


 間違いなく、あの時のカノン、いや、それ以上だった。


 感動で泣いている声も耳に入った。


 分かる。私も泣いたのだ。


 ソフィーはシンの手元を見る。

 だが、何度見ても、

 だが、おそらく、それが、自分の演奏のである事は分かった。


 私の演奏が仮に60点だとしても、シンが40点を補完すれば100点になる。


 それをしているのだ。

 私はシンの演奏に半ば恐怖しながらも、カノンを最後まで引き切る事に成功した。


 会場は、割れんばかりの拍手喝采。


 父は涙し、母は快感に震えたという。


 演奏はここでは終わらず、次の曲目に移る。

 だが、この流れで弾くはずだった曲は、シンの演奏によって止められる。

 わざと、たどたどしく弾く彼の曲は、まさに、自分がシンに見せた、自分の好きな曲、アニメ、『Candy ナッツ』の主題歌、『ティラミス』だった。

 ソフィーは、このシンのキラーパスを受け、弾き始める。


 この曲を知っている人は、この会場には少ないだろう。

 最近アニメ化して、知る人ぞ知ると言った人気作品だが、少女漫画の中でもかなり正統派なラブコメに当たるので、皆んな知らないだろうと思った。

 だが、シンはそれを弾かせてくれるらしい。

 ソフィーは、自分が好きな曲を弾くつもりは全く無かった。

 何故なら、こういった場では、得意な曲、有名な曲、全世代に共通する話題曲を選ぶものだと思っていたからだ。

 そして、それは正しい。

『ティラミス』を弾くなど、この場所に相応しくない。


 だが、それを弾かせて貰えている。

 皆んな、カノンを聴いた後だからか、流れのまま違和感なく受け入れていた。

 嬉しい。

 ピアノを弾く楽しみの中で、ソフィーが最も求めていた瞬間。

 それが、たくさんの観客がいる中で、自分が好きな曲を弾く事。

 そして、今、まさに聴かせたかった曲こそが『ティラミス』だった。

 小さなピアニストとしての、至上の喜び。

 それがこの瞬間だった。


 言うまでもなく、この環境は、シンが作り出したものだ。


 初めからそうだった。

 この懇親会に出席する事に決まったのも、自分の評価が上がったのも、親が喜んだ事も、自分のピアノの腕が上がった事も、緊張せずに弾き切れたことも。


『ティラミス』の後半、ソフィーが弾き終わる前に、シンが壇上から居なくなっていた事に気付いた。


 どこで居なくなったのか分からなかったが、もう大丈夫だった。

 会場は、ソフィーの独壇場。

 最後に得意な曲を一人で披露して、それが終わると立ち上がって深々と頭を下げた。

 自分の力で最後は弾き切った。

 失っていた自信を取り戻せる気がした。

 鳴り止まない拍手。

 顔を上げると、会場の皆んなが自分を歓迎してくれているように感じる。

 今日、ここに来て良かったと、心から思えた瞬間だった。

 だが、その時、真っ先にソフィーの目に映ったのは、取引先の社長や、両親ではなく、シンだった。


 シンは、優しく微笑みを浮かべながら、大きく拍手していた。



 ソフィーには分かる。



 これは、シンにとっては日常の一コマに過ぎない。

 ただ、姉がアガっていたから、少し手助けをした、……その程度だろう。


 だが、ソフィーにとって、この日にどれだけの心境の変化があったか計り知れない。


 壇上から降りたソフィーに、社長が握手を求める。

「素晴らしい演奏だった。君こそ、未来の代表に相応しい」

 父親の近くへ行くと、しゃがみ込んで、頭を撫でてくれた。

「ソフィア、最高の時間をありがとう。父さん、感動したよ」

 顔がニヤけるソフィー。

 父が自分の実力を褒めてくれた。

 それは滅多にないことだった。

 目的達成。

 これは素直に喜べる。ソフィーは誇らしい気持ちになった。

 そして、緊張するのは、母親の反応だ。

 少し遠慮がちに母の元へ行く。

 すると、柔らかい笑顔を見せてくれた。

 これも珍しいことだ。

 最近、成績が下がっていた事もあり、久しぶりの心からの笑顔に見えた。

「ソフィア、あなたには、ピアニストとしての才能を感じるわ。これは、私には無い才能よ。今、気付いたわ。そういうことだったのね。早く言ってくれれば良かったのに……」

 頭を撫でてくれる母。

 たぶん、母は、自分がピアニストを目指していると思ったのだろうと、ソフィーは感じたらしい。

 実際のところ、ピアニストになりたいと思った事は一度も無かったそうだが、今はそう思って貰った方が都合が良いかもしれないと思った。

 何にしても、母の機嫌が良いことはソフィーにとっては嬉しいことだ。


 最後に、シンの元へ行く。


 シンは静かに微笑み、自分を迎えてくれる。

 ソフィーは照れくさかった。

 あんな地獄のような窮地から救ってくれた相手なのだ。

 弟と言えど、どれだけ感謝してもし足りないくらいだった。

 とはいえ、自分が姉で、将来の春祭社長。

 あまり卑屈な姿は、将来の部下には見せたくないものだ。


 近くまで来て、恥ずかしさが頂点に達し、「えっとー、んっとー」と、言葉にならないままでモジモジしていると、シンが喋った。

「おめでとう、姉ちゃん」

「……なによー、調子に乗らないでよね」

「素晴らしい演奏だったよ、さすがは俺の姉ちゃんだ!」

「アンタが言う?」

「当然だろ、俺が何かしたわけでも無いんだし」

「ハァー?何かしまくりでしょーが!?」

「俺はデタラメにピアノを触っただけだろ?」

「……あー、ハイハイ、そういう事ね、そんなこと言うんだったら、夜、覚悟しなさいよ、シン」

「……ったく、何を勘違いしてんのか知らないけど、凄いのは姉ちゃんだろ?よく頑張ったね」

「ふふっ……ありがとう」

 ついつい嬉しさで笑みが溢れる。

 この瞬間ほどシンが好きだと思ったことは無かったそうだ。

 弟への対抗意識が完全に消えたわけでは無い。

 だが、彼には彼の才能があり、それは、尊敬に値するものであって、決して妬んだり、恨んだりするものでは無いとソフィーは感じた。


 会場の空気が落ち着いてくると、ソフィーは昨日から疑問に感じていたことの答えをシンに伝えようと思った。


「それで、シンの言ってたブロッコリーの話なんだけど」


「………ん?」


「意味、分かった」

「そうなの?」

「アレでしょ?アンタが、……マヨってわけでしょ?」

「……俺は人間だが」

 ドスっと、シンの肩にパンチするソフィー。

「いってーっ!何すんだよ」

「制裁よ」

「なんだそれ、俺はなんもしてねーだろ」

「なんもしまくりでしょーが!!」

「うるさいなー、ほら、ローストビーフあるよ、姉ちゃん好きだろ?」

「ぶっとばすわよ」


 ソフィーが、帰りの車の中で、自分のピアノについて、両親にどれだけ饒舌に語りまくったか、それは、今の姿を見ても想像は容易たやすい事だ。


 シンはその間も、ずっと携帯ゲームをしていたらしい。

 その日以来、ソフィーがシンからゲームを取り上げる事は2度と無かった。
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