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秘密の関係
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「はぁ……、疲れた」
農園から帰宅してすぐにジャケットを脱ぎ、ベストのボタンを外すと、リオネルはソファに横になった。シャツの襟に指を入れて、ネクタイを緩める。
その手を大きな手が掴んだ。
「お疲れ様です、リオネルさん。スーツのままで寝ちゃ駄目ですよ」
耳触りのいい、低い声がリオネルの耳に降ってくる。
「ん、じゃあ、脱がしてよ」
適度な疲労感が、リオネルの瞳を妖艶に細めさせる。柔らかくウェーブした鳶色の髪の青年はギシリと音を立てて、ソファに膝をついた。着古したシャツにスウェットのズボン。気を抜いた服装でもどこかさまになっている青年は、リオネルに覆い被さるようにして口づけた。
「脱がすだけじゃ、済まないですけど……」
「いいよ?」
リオネルの挑戦的な瞳に、青年は激しいキスで返した。さっきの唇が触れるだけのものとは違う。舌を絡めた濃厚なキス。混ざり合った唾液を飲み込んだリオネルの喉がコクリと鳴った。
「アノル……ベッドがいい」
甘えるように耳元で囁かれて、青年・アノルは軽々とリオネルを抱き上げた。片手でリオネルの体を支え、もう片方の手で器用に服を脱がせながら、寝室に向かう。リオネルはアノルの腕の中でされるがままだ。
寝室は間接照明だけが灯っていた。ベッドに優しくおろされたリオネルはすでにシャツとズボンを剥がれ、下着と靴下だけになっていた。年齢に反して幼い見た目をしたリオネルのそんな姿は、煽情的だ。オレンジの明かりが、リオネルの肌を艶かしく照らしている。
アノルはリオネルを見下ろしながら乱暴にシャツを脱いで、割れた腹筋を露わにした。ズボンに手をかけると、リオネルが待ち切れないように、下着を脱ごうと身をくねらせているのに気づく。職場では完璧を求めてキビキビと働いているくせに、ベッドではおぼつかない手元で下着を脱ぐのにも手間取っている。そのギャップにアノルの心臓が絞られるように甘く痛んだ。
「酔っ払ってるんですか? リオネルさん」
そう言って優しく笑いながら、アノルはリオネルの下着を脱がし、股間に顔を埋めた。
14年前、リオネルの婚約者が死んだ。町長の秘書を務め、次のリーダーを担う優秀な男だった。リオネルは彼の意志を引き継ぐ形で、次期町長のポストに収まった。28歳となった今、リオネルは町長代理を務めている。
かつて地上で流行った病によって、人類は男だけが生き残る片翼のエデンとなった。人々は汚れた大地を離れて、空を征く巨大な船で生活している。船の上には街が形成され、そこで暮らす多くの人が、自分たちが空飛ぶ船に住んでいることを忘れていた。
リオネルはそのことを知る、数少ない人間の1人だった。アノルもまたその内の1人だ。町長として、この船・アルゴーの舵取りをするリオネルの部下として働いている。
「誕生会、オレも行きたかったな」
1度果てて、休憩を挟んでいる時、アノルはポツリと言った。
「行ってどうするのさ、知り合いもいないのに」
「それは、リオネルさんが紹介してくれたらいいじゃないですか」
「なんて説明するのさ?」
「それは……こ、恋人とか」
顔を真っ赤にしてアノルがそんなことを言う。リオネルは白けた顔をして、ベッドから体を起こした。
「あのさ、アノル。こうゆう関係になる前にも言ったけど、僕はお前と付き合う気も、結婚する気もないから。お前と僕はただのセフレ」
リオネルは可愛い顔をして、アノルの心を突き刺す言葉を次々に吐く。2人の力関係を示すように、リオネルがアノルの体の上に跨った。見下すようにアノルを見るリオネルの空色の瞳は、嗜虐性に満ちていた。
「お前は僕を気持ちよくしてればいいんだよ」
言いながら、リオネルの手がアノルのものを掴み、柔らかな穴に誘った。いやらしい言葉とは裏腹に、頬を真っ赤に染めて顔を歪ませながら、腰を落としてアノルのものを受け入れるリオネルに、奥ゆかしさを感じる。
アノルは抱き潰したい思いに駆られながら、微かな振動にも敏感に反応して腰をくねらせるリオネルをゆっくりと突き上げた。
付き合っているとか、付き合っていないとか、今はそんなことはどうでもいい。冷たいことを言っていても、積極的に受け入れてくれることが嬉しくて、アノルは傷つけないように、壊さないように、けれども確かな快楽を与えるように、リオネルを抱いた。
もう何年もこんな関係を続けてきた。アノルにはリオネルの気持ちのいいところが手に取るようにわかっていた。
農園から帰宅してすぐにジャケットを脱ぎ、ベストのボタンを外すと、リオネルはソファに横になった。シャツの襟に指を入れて、ネクタイを緩める。
その手を大きな手が掴んだ。
「お疲れ様です、リオネルさん。スーツのままで寝ちゃ駄目ですよ」
耳触りのいい、低い声がリオネルの耳に降ってくる。
「ん、じゃあ、脱がしてよ」
適度な疲労感が、リオネルの瞳を妖艶に細めさせる。柔らかくウェーブした鳶色の髪の青年はギシリと音を立てて、ソファに膝をついた。着古したシャツにスウェットのズボン。気を抜いた服装でもどこかさまになっている青年は、リオネルに覆い被さるようにして口づけた。
「脱がすだけじゃ、済まないですけど……」
「いいよ?」
リオネルの挑戦的な瞳に、青年は激しいキスで返した。さっきの唇が触れるだけのものとは違う。舌を絡めた濃厚なキス。混ざり合った唾液を飲み込んだリオネルの喉がコクリと鳴った。
「アノル……ベッドがいい」
甘えるように耳元で囁かれて、青年・アノルは軽々とリオネルを抱き上げた。片手でリオネルの体を支え、もう片方の手で器用に服を脱がせながら、寝室に向かう。リオネルはアノルの腕の中でされるがままだ。
寝室は間接照明だけが灯っていた。ベッドに優しくおろされたリオネルはすでにシャツとズボンを剥がれ、下着と靴下だけになっていた。年齢に反して幼い見た目をしたリオネルのそんな姿は、煽情的だ。オレンジの明かりが、リオネルの肌を艶かしく照らしている。
アノルはリオネルを見下ろしながら乱暴にシャツを脱いで、割れた腹筋を露わにした。ズボンに手をかけると、リオネルが待ち切れないように、下着を脱ごうと身をくねらせているのに気づく。職場では完璧を求めてキビキビと働いているくせに、ベッドではおぼつかない手元で下着を脱ぐのにも手間取っている。そのギャップにアノルの心臓が絞られるように甘く痛んだ。
「酔っ払ってるんですか? リオネルさん」
そう言って優しく笑いながら、アノルはリオネルの下着を脱がし、股間に顔を埋めた。
14年前、リオネルの婚約者が死んだ。町長の秘書を務め、次のリーダーを担う優秀な男だった。リオネルは彼の意志を引き継ぐ形で、次期町長のポストに収まった。28歳となった今、リオネルは町長代理を務めている。
かつて地上で流行った病によって、人類は男だけが生き残る片翼のエデンとなった。人々は汚れた大地を離れて、空を征く巨大な船で生活している。船の上には街が形成され、そこで暮らす多くの人が、自分たちが空飛ぶ船に住んでいることを忘れていた。
リオネルはそのことを知る、数少ない人間の1人だった。アノルもまたその内の1人だ。町長として、この船・アルゴーの舵取りをするリオネルの部下として働いている。
「誕生会、オレも行きたかったな」
1度果てて、休憩を挟んでいる時、アノルはポツリと言った。
「行ってどうするのさ、知り合いもいないのに」
「それは、リオネルさんが紹介してくれたらいいじゃないですか」
「なんて説明するのさ?」
「それは……こ、恋人とか」
顔を真っ赤にしてアノルがそんなことを言う。リオネルは白けた顔をして、ベッドから体を起こした。
「あのさ、アノル。こうゆう関係になる前にも言ったけど、僕はお前と付き合う気も、結婚する気もないから。お前と僕はただのセフレ」
リオネルは可愛い顔をして、アノルの心を突き刺す言葉を次々に吐く。2人の力関係を示すように、リオネルがアノルの体の上に跨った。見下すようにアノルを見るリオネルの空色の瞳は、嗜虐性に満ちていた。
「お前は僕を気持ちよくしてればいいんだよ」
言いながら、リオネルの手がアノルのものを掴み、柔らかな穴に誘った。いやらしい言葉とは裏腹に、頬を真っ赤に染めて顔を歪ませながら、腰を落としてアノルのものを受け入れるリオネルに、奥ゆかしさを感じる。
アノルは抱き潰したい思いに駆られながら、微かな振動にも敏感に反応して腰をくねらせるリオネルをゆっくりと突き上げた。
付き合っているとか、付き合っていないとか、今はそんなことはどうでもいい。冷たいことを言っていても、積極的に受け入れてくれることが嬉しくて、アノルは傷つけないように、壊さないように、けれども確かな快楽を与えるように、リオネルを抱いた。
もう何年もこんな関係を続けてきた。アノルにはリオネルの気持ちのいいところが手に取るようにわかっていた。
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