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6.本気?
「オーッホッホッホッホッホ! 地べたを這いつくばって食らうがいいわ!!」
高笑いとともにわたくしは、手にしていた箱からひと握り、中身をぶちまけた。
干したトウモロコシやそのほかの穀物類、お弁当を作った際に出た野菜くずなどが、芝生が途切れた先の土の上にぽとぽとと落ちる。
わっと集まってきたのは、学園に棲みついている小鳥たちだ。
ほどよく人に慣れ、のんびりとした性格の彼らとお友達になってみようと思いついたのはつい最近のこと。
寂しすぎる思いつきだ。でもやってみると想像以上に癒やされる。手や肩にのってきてくれる子たちもいるし。
ピーピーチーチーと歓声をあげながら、小鳥たちがわたくしがまいた餌をついばむ。
わたくしはそんなほのぼのとした光景を見下ろし、さらに高笑い。
「意地汚いわね、しょせん畜生ですわ!」
『さあたくさんお食べ~』『おいしい? よかったわね』が罵倒変換されて口から飛びだしてくるけれど、気にしない。
人間と違って小鳥たちは言葉がわからないし、今は放課後。裏庭には誰もいな――。
「ほほえましい光景だな、ヴェスカ嬢」
ギエエエエエ!!
光の速度で振り向けば、ロアン様が立っていた。
今日は騎士団の制服姿。
お昼休みにいらっしゃらなかったので油断していたけれど、騎士団の訓練のあと直接ここへきたらしい。
もうやだ、恥ずかしい。
『できれば今すぐ忘れてください!』と言いたいのに口から出てくるのは「覗き見なんていいご趣味ですわね(嘲笑)」だし!
膝から崩れ落ちつつ黒歴史を生産し続けているわたくしを見て、ロアン様は「ふむ」と呟いた。
「照れているのか、ヴェスカ嬢?」
なんでわかるんですか?
「大丈夫だ、とても愛らしくて、天使が舞いおりてきたのかと思うほどだったよ」
…………。
わたくしはとても呆けた顔をしていたと思う。鳥に餌を撒きながら高笑いしていた悪役令嬢が膝から崩れ落ちたとして、照れていると理解できる人間がいるだろうか。しかもこんなふうにフォローするだろうか。
いつもなら逸らす視線がばっちりあってしまうくらいには、わたくしは放心していた。
ぼんやりとロアン様を見上げる。なぜかロアン様は顔を赤らめ、ほほえみを深くした。
なんで?
手がさしだされる。わたくしはその手をとって、よろよろと立ちあがった。
ロアン様はまだわたくしを見つめていたけれど、不意にぽつりと呟いた。
「……ヴェスカ嬢、君は美しいな」
「ロアン様はお可哀想に。今さら気づくなんて、目がお悪いのね」
つっけんどんで厭味ったらしいわたくしの即答。
それでも、ロアン様は楽しそうに目を細めた。
「そうかもしれない、本当の君はもっと輝いているのかも」
「……ッ!」
騎士らしいさっぱりとした外見に、穏やかな声でそんなことを言われたら、心臓がドキドキと鼓動を跳ねさせる。
わたくしは慌てて口を押さえた。
このタイミングで罵倒はしたくない。
――ほほえみ返せたらいいのに。
心の底からそう思う。
うつむいて何も言わないわたくしの髪に、ロアン様が触れた。ふわりと甘い香りは、百合のもの。
ただし、いつもとは違う重みが、髪を飾る別の存在を教えてくれる。
わたくしはそっと髪に触れた。
百合の花びらのなめらかな感触の下に、硬質で繊細な曲線があった。
これは……髪飾り?
「君の美しさには敵わないが」
「――……」
いつもの、よくわからない贈り文句のはずなのに。
まっすぐに見たロアン様の瞳は、どこまでも高い青空の色で、わたくしを包み込むようだった。
「おこがましい願いかもしれないが――この髪飾りをつけて、俺のことを思いだしてほしい」
やさしいまなざしに、穏やかな声色。それらが示すのは、揺らぐことのない感情。
唐突に、わたくしは悟った。
これまで、他人事のようにツッこんできたけれども。
ロアン様は本気でわたくしと結婚するつもりなのだ。
高笑いとともにわたくしは、手にしていた箱からひと握り、中身をぶちまけた。
干したトウモロコシやそのほかの穀物類、お弁当を作った際に出た野菜くずなどが、芝生が途切れた先の土の上にぽとぽとと落ちる。
わっと集まってきたのは、学園に棲みついている小鳥たちだ。
ほどよく人に慣れ、のんびりとした性格の彼らとお友達になってみようと思いついたのはつい最近のこと。
寂しすぎる思いつきだ。でもやってみると想像以上に癒やされる。手や肩にのってきてくれる子たちもいるし。
ピーピーチーチーと歓声をあげながら、小鳥たちがわたくしがまいた餌をついばむ。
わたくしはそんなほのぼのとした光景を見下ろし、さらに高笑い。
「意地汚いわね、しょせん畜生ですわ!」
『さあたくさんお食べ~』『おいしい? よかったわね』が罵倒変換されて口から飛びだしてくるけれど、気にしない。
人間と違って小鳥たちは言葉がわからないし、今は放課後。裏庭には誰もいな――。
「ほほえましい光景だな、ヴェスカ嬢」
ギエエエエエ!!
光の速度で振り向けば、ロアン様が立っていた。
今日は騎士団の制服姿。
お昼休みにいらっしゃらなかったので油断していたけれど、騎士団の訓練のあと直接ここへきたらしい。
もうやだ、恥ずかしい。
『できれば今すぐ忘れてください!』と言いたいのに口から出てくるのは「覗き見なんていいご趣味ですわね(嘲笑)」だし!
膝から崩れ落ちつつ黒歴史を生産し続けているわたくしを見て、ロアン様は「ふむ」と呟いた。
「照れているのか、ヴェスカ嬢?」
なんでわかるんですか?
「大丈夫だ、とても愛らしくて、天使が舞いおりてきたのかと思うほどだったよ」
…………。
わたくしはとても呆けた顔をしていたと思う。鳥に餌を撒きながら高笑いしていた悪役令嬢が膝から崩れ落ちたとして、照れていると理解できる人間がいるだろうか。しかもこんなふうにフォローするだろうか。
いつもなら逸らす視線がばっちりあってしまうくらいには、わたくしは放心していた。
ぼんやりとロアン様を見上げる。なぜかロアン様は顔を赤らめ、ほほえみを深くした。
なんで?
手がさしだされる。わたくしはその手をとって、よろよろと立ちあがった。
ロアン様はまだわたくしを見つめていたけれど、不意にぽつりと呟いた。
「……ヴェスカ嬢、君は美しいな」
「ロアン様はお可哀想に。今さら気づくなんて、目がお悪いのね」
つっけんどんで厭味ったらしいわたくしの即答。
それでも、ロアン様は楽しそうに目を細めた。
「そうかもしれない、本当の君はもっと輝いているのかも」
「……ッ!」
騎士らしいさっぱりとした外見に、穏やかな声でそんなことを言われたら、心臓がドキドキと鼓動を跳ねさせる。
わたくしは慌てて口を押さえた。
このタイミングで罵倒はしたくない。
――ほほえみ返せたらいいのに。
心の底からそう思う。
うつむいて何も言わないわたくしの髪に、ロアン様が触れた。ふわりと甘い香りは、百合のもの。
ただし、いつもとは違う重みが、髪を飾る別の存在を教えてくれる。
わたくしはそっと髪に触れた。
百合の花びらのなめらかな感触の下に、硬質で繊細な曲線があった。
これは……髪飾り?
「君の美しさには敵わないが」
「――……」
いつもの、よくわからない贈り文句のはずなのに。
まっすぐに見たロアン様の瞳は、どこまでも高い青空の色で、わたくしを包み込むようだった。
「おこがましい願いかもしれないが――この髪飾りをつけて、俺のことを思いだしてほしい」
やさしいまなざしに、穏やかな声色。それらが示すのは、揺らぐことのない感情。
唐突に、わたくしは悟った。
これまで、他人事のようにツッこんできたけれども。
ロアン様は本気でわたくしと結婚するつもりなのだ。
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