47 / 72
四、生まれたままで
45 東鬼
しおりを挟むこれまで以上に時間をかけた。
ゆっくりと、じっくりと。
今まで、こんなに気を使って、丁寧に優しく、誰かに触れたことなんて、タク以外にはなかった。
タクが何を言っても聞こえねえように、耳の穴に布切れを突っ込んでおいたのは正解だった。
おれ自身が興奮してるせいで、呼吸と心臓の音がうるせえ。
その騒音がタクの声をかき消してくれた。
今のおれにとって、タクの声はまずい。
何を言われても高ぶってあおられる、突っ込みてえ衝動を止めらんなくなる。
タクの声を聞いていてえけど、ダメだ。
もう前みてえに暴走はしねえ。
タクの信用を無下にできねえ。
タクの信頼を勝ち取るんだ。
人の姿でのちんぽじゃなく、鬼の姿の珍宝を受けいれてもらうために。
おれは、ただひたすら耐え続けた。
声は聞こえてねえが、タクはたぶん、早くしろとか、もう大丈夫とか、そんなことを言ってんだろう。
おれが暴走しねえようにって気を使って、我慢すんだろう。
タクに痛いのを我慢させてたまるか。
マットレスに仰向けで転がされ、両足を全開にしてケツを上げたあられもない姿で、ガクガクと震えるタクのケツマンに、太めのディルドが二本入るようになるまで、何時間かかったのか。
ほんの数分なのか。
集中しすぎて、よく分かんねえ。
タクに口移しで水を飲ませながら、その度に泣きそうな顔で、怒ってるような感じのタクをめちゃくちゃに可愛がる。
これまで触れてこなかった乳首にも吸い付いたが、鬼の頭の大きさだと、舌だけでゴマ粒探して舐めてるみてえだ。
乳首の開発は人間の姿でやるか。
あー?
ペシペシ?
……ぜんっぜん飲めてねえ、口移しできてねえって?
コップよこせ?
確かにちょっとこぼしすぎか。
鬼の口だと牙がはみ出てっから、傷つけねえようにすんのが難しい。
汗とおれがこぼした水で濡れてるタクがエロい、舐めてえ……。
あー、ダメ?
クッソ、なんも聞こえてねえのに、目で伝えてくるとか反則じゃね?
なんで怒ってるって感情を出すのがうまくなってんだよ。
作り笑顔なら聞いたことあっけど、視線で怒りを伝える需要なんかねえだろ?
コップで水を飲ませた後で、チョチョっと口の中を舐めてやると、タクはすぐに息をきらす。
ただ、息が苦しいだけか?
鬼の舌が人よりもでかくて分厚いからかもしんねえ。
気がつかなかったってことにして、べろっべろに顔中を舐めて、うめぇ、舐めんの最高ぅ!って一人で盛り上がってハスハスしてたら、タクの雰囲気が明らかにやべえ感じになってきた。
顔を舐めるくれえ良いだろ?
本当は全身を舐めまわしてぇんだからよ!!
塗った薬を舐めるな、絆創膏が剥がれちまうからやめろ!って叱られたのは、ちゃんと覚えてんよ!
息をきらしてるタクが、呼吸を整えんのに必死になってる間に、ケツマンをグリグリほぐす。
痛くねえように、グリグリっつーより、グニッグニッか?
もう、鬼の指でも三本くれえ入んじゃねえか。
隙間を覗き込んでみれば、柔らかくほぐれて緩んだ腹ん中が見える。
真っ赤に熟れて、美味そうだ。
指を突っ込みてえ、直接タクの中に触れてえ。
怪我させたくねえから、おれが鉤爪を引っこ抜くか食いちぎったらできっかな?
ああでも、血まみれの指を突っ込んだら、タクが怒るか。
あ……そんなら舐め……え、ダメ?
舐めんのダメか?
マジかー?
タク、お前すっげえな!
なんで、おれの考えてることが筒抜けなんだ?
あいてぇ。
さすがに鼻先を拳で殴られると、ちょっとだけ痛えよ。
爪のたってねえ猫パンチくれえ?
なんか、タクがだんだんと暴力的になってんのって、おれが原因じゃねえか?
もしかして、鬼嫁化も頼りねえおれを守ろうとして!?
やっべえ、キュンってきたー!!
あれだ、母性愛強すぎる母熊になってんだ!
タクー!愛してんぞー!!
尻用のローションを垂らして、中に注ぎ込んで、さらに追加して、二本目も空になった頃、ようやくもう大丈夫じゃねえかな、って思えるようになった。
ほぐれきったタクのケツマンは、ディルドを引き抜いても、パックリと口を開いちまっている。
エッロぉいなー。
ドロッドロに緩んで、ダラダラとヨダレを垂らしてるみてえで、突っ込んでってねだってねえか?
エロい、突っ込みてえ。
ゆっくりするぞ、暴走しねえ。
そのために、ひたすらおっさんどもを投げまくってきたんだ!!
精神集中!!
頭の中でおっさんどものヘッタクソな受け身を思い出して、少しでも珍宝が萎えることを願う。
タクの中に入ってねえのに、触ってもねえのに、もう数えきれねえほど垂れ流してるから、珍宝から金玉までザーメンでぐっちゃぐちゃだ。
え、耳?
ひく、とる?
ああ、布か、忘れてた。
「……ホ!なんれ、へんりしないんらよっ、ふあんになるらろぉ!」
泣きかけの子供みてえな口調で言うタクをよく見れば、時間をかけすぎたのか、すでに疲れ切った顔をしていた。
慌てて時間を確認したら、半日近く、タクのケツマンをほぐしてたらしい。
集中しすぎた。
いくらタクの中に入りてえからって、自分の行動に引くわ。
どんだけ必死なんだよ、おれぇ。
「みうっ!」
「はいっ!」
温かい白湯を口移しで飲ませようとしたら、鼻先を拳で殴られた。
鼻が弱点だと思われたのか?
痛えっていってもデコピンくれえにしか感じねえけど、タクがおれを守ろうとして凶暴化してんのかと思うと、新鮮すぎてなんか嬉しい。
あれか、言葉で言っても通じねえから拳で教えるってやつか?
反論したくても、前科がありすぎて反論できねえ、つれえー!!
タク以外にやられたら、ふざけんな!ってフルボッコ返しにしてやるとこだけど、タクだと甘えてじゃれついてくる猫にしか見えねえ。
「のめうっ」
どっからどう見てもヘロヘロになってるくせに、目に灯してる光だけは強いままだ。
おれが聞こえてなかっただけで、ずっとなんか言ってたのかもしんねえ。
ゆっくりと体を起こし、ゴクゴクと音を立てながら、保温ボトルを逆さにしたタクが、大きく息をついた。
「耳をふさぐなよ!」
「タクの声を聞くと、止めらんなくなる!」
「え、ええ、本気か?」
「おう!」
「それなら仕方ない、のか」
タクよぉ、おれが言うのもなんだけど、簡単に信じすぎじゃね?
嘘じゃねえけど、心配になるぞ。
「それなら、次から、止まってほしいとか、やめてほしい時はタップするから……タップであってるよな?」
柔道どころか、スポーツや格闘技に縁がないタクが、タップアウトのことを知ってると思わなかった。
まあ、柔道だと「参った!」って言うんだけどな。
「タッくん、正直に言うともう疲れた、今はどんな感じだ?」
「いつでも突っ込める!」
「そ、そう、え、あ、うん」
おれが自信を持って返事をした途端、白湯を飲んでため息をついていたタクが、挙動不審に目を反らす。
多分だけど、尻をいじくりすぎて感覚がおかしくなっちまってんだろう。
広がってっかどうか、自分じゃ見えねえしな。
「今なら、タクの手首も入るぞ」
「何が悲しくて、自分の手を尻に突っ込まないといけないんだ」
おれは「頑張ったんだぜ」と伝えたかっただけなのに、うまく伝わんなかったようで、タクが無表情になっちまった。
うええ失敗した。
「そうだな、突っ込むのは手じゃねえよな」
「それで?」
「それで?って?なんかあんのか?」
「え……」
タクが目を瞬いておれを見るので、なんだろう?と見つめ返す。
「おれ、なんか、また変なこと言ったか?」
「……もういいよ」
深々とため息をついたタクが、おれの鼻先に触れた。
「持ち上げてくれ」
「え?!」
「お前の上に乗る」
「ええ!?」
「早くしろよ!」
おれの首に両手を伸ばしたタクは、下半身の感覚がなくなっちまってんのか、自分で体を持ち上げられねえようだ。
「俺は、一度くらい自然な流れでしたいんだけどな」
「ええええと、何を?」
「……お前にムードとか、いろいろと期待した俺が悪いのか、ごめん」
「なに?!おれはなにを失敗したんだよ!?」
タクがマットレスの上に用意してあるスポーツタオルを、おれの首にかけるように言う。
素直に言われた通りにして、上半身をタクに向けてかがめると、その両端を握って体を引き起こした。
クソ、身長差が憎いな。
そのまま、床にあぐらをかくおれの腰の上に登ろうと四苦八苦してる姿を見て、かわええなーと思ってたら睨まれた。
「見てないで、早く持ち上げてくれよ」
「は、はいっ」
タクの両脇に手のひらを入れて、そっと持ち上げる。
軽い、順調に肉がついてるはずなのに、軽すぎる。
「タッくん」
タオルを握りしめ、おれの首にぶら下がっているような状態のタクが、胸に頬を押し当ててくる。
ばくばくうるせえ心臓の音を聞かれてるのか?
顔を隠したまま、タクがおれの胸元で呟いた。
「やっとお前のちんぽうを受け入れられる」
「~っっ」
優しくする。
おれはお前のもんだ、タク。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
86
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる