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ランペイジ!
ダブル土下座
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| 藤堂 京介
二人は抱き合ったままこちらを見ながら黙ってしまった。目をグルグルさせながら。
でも、友達…ではないような。仲間…でもないような。不思議な二人だ。なんだろうか。
二人のスマホに写っている画像、カメラを首から下げている二人…
見覚えのない二人が僕の写真を撮っていた…
いや、なんで?
しかも二人同時も、たまたま?
ストーカー、しかもダブルで?
…バーで蒸留酒を頼むみたいな感じだな…
マスター、ストーカー、ダブル、ロックで。あ、氷小さめで、みたいな。
いや、違くて。
とりあえずスマホの画面を閉じて悟りの魔法を使おう。
でも、瞳の色を見ようにも二人とも目がグルグル回って見にくい。こっちが酔う。なんとか苦労してやっと見た瞳の色は焦りと不安と後悔で一杯だった。つまり、怒られることを恐れている。
僕はこの二人をとりあえず獣人くらいの警戒心を持っていると仮定した。
スマホを見せつけるようにゆっくり振り、注意を引きつける。二人のグルグルがピタリと止むと、さらに左右に大きく振る。
視線がそれぞれ追うのを確認すると、一旦真上にかざし、ゆっくりと見せつけながらジャケットの両ポケットに入れる。
目線がポケットに向いた瞬間を狙い、僕は認識を誤魔化す魔法を薄く振った。
抱き合う彼女達が気づく前に近寄り、頭を撫でた。もちろん弱回復魔法付きだ。
彼女達は気づいたら近くにいた、と言った認識だろう。ミスディレクションとも言う。違うか。魔法だ。魔法。
抵抗する事なく、撫でられ続けた二人は、徐々に強張った身体の力が抜けていった。良かった。何せ離れていてもわかるくらい力いっぱい抱きしめ合っていたんだ。身体痛めちゃうよ。
やっと緊張が解れ、二人が離れ、こちらを向いた。
離れた拍子に見えた黒猫のピンバッジ。と、緑色のリボン…記憶に薄らと引っかかる。
まあいい。それよりこんな子が…盗撮を?
四葉のクローバーが懐かしいのは、元同級生の首藤さん。こっちが問題だな。魔法の盗撮か。映るんだ、魔法。
バレたらバレたで仕方ないか。嘘つけないし。でも普通信じないか。
それにしても、どっちも盗撮か。
どうしようか。先ずは聞き取りからしようか。
「二人ともこれについて、お話してくれないかな?」
再度ポケットから二人のスマホを出し、聞いてみる。
「「ごめんなさいぃぃ」」
二人は前方に倒れ込むように、ゆっくり滑らかに揃って……土下座した。
上手いことハモるな。
◆
「すぐに謝れてえらいね。素直が一番だよ。でも土下座はやめてほしいかな…」
女の子を土下座ダブルとか居た堪れないよ。ドン引きだよ。ストーカーダブルもドン引きだけども。
「ほら、二人とも立って立って。ああ、ああ…汚れちゃってる。せっかく可愛いのに台無しだよ?」
神社は鳥居からお社に続く道は石畳で、それ以外は土だ。首藤さんはショートパンツだし、黒髪の子は膝丈スカートだし。膝擦りむくよ。二人とも可愛いんだし。
「…プロポーズ?」
「…婚約お申込みですか?」
「はは。揶揄わないでよ」
ゆっくり立ち上がった二人はそんな言葉を言ってきた。なんか面白い二人だな。というか見た目は違うけど、似ているのか。にしたって随分と唐突な発言だ。ほぼ初対面だよね?
いや、いつからストーキングしてたかで、彼女たちの中では初対面じゃないし、唐突でもないのか…
そんな事を考えていたら、首藤さんはお願いを口にした。
「青いのかけて欲しい」
「青いのってなんですか? 血?」
「!…」
「緑のも」
「無視しないでください! 緑って何ですか? たぬき?」
「……」
膝の汚れを指差し、青。手のひらの絆創膏を指差し、緑、と。……解析したのか…これは知ってるのはわたしだけで、黒髪の子は知らないという首藤さんからのパスか。
いやカマをかけてきたのか。いや、半分嘘か。なら確信を得るためか。
「……ちょっとここではね。どこか無い?」
「家に来て欲しい。お家デート」
「なっ! さっきすけべって言ってたのに全然違うじゃないですか!……これがロールキャベツ女子!……さすが現役JK…!」
何言ってるかわからない戰慄している間宮さんは置いておいて、首藤さんの瞳の色は点滅してる、か…
「……うん、いいよ。行こうか。でもその前に二人のこと、改めて教えてくれないかな?」
◆
さっきは唐突だったから改めて自己紹介をした。元同級生の首藤絹子さんと中学2年生の間宮晴風さん。彼女は後輩だった。
二人は同時に互いを指差し、
首藤さんは間宮さんをストーカーと言い、私は違う、という。
間宮さんは首藤さんをストーカーと言い、私は違いますから、という。
……仲良いな、君たち。
つまりどうやら、どちらも僕のストーカーらしい。やっぱりダブルで、か……いや、なんで?
まあ、発生の理由はわからないけど、現状はわかった。
歴は二人とも長くおおよそ3年に渡るそうだ………ストーキングってそんなに長い期間するもんなの?
昔から僕は勘が良かった。と思っていたけど……人族の傑出した才能を持つのはむしろこの二人だよ。全っ然、気付かなかったし。
「…京介くん、ごめんなさい」
「藤堂さん、すみませんでした」
推し黙る僕に不安を感じたのか、しおらしい態度で謝ってくる。まあ反省しているのは色でわかるから良いとして。
悟りの魔法で見た瞳の色はチラチラと謀りと嘘を示していた。この点滅の仕方は、誰かを庇ってるのかな? 二人とも? でも庇いあってるわけじゃない…
「ね、二人はどんな罰がいいかな?」
でも、うそはよくないね。
◆
「ついて来ないで」
「いーじゃないですか!」
「ふ」
「なんですか」
「いつもと違う」
「…私だって妄想拗らせてることくらいわかってますよ~…でもこんなチャンス見逃せませんし…」
「条件」
「…なんですか」
「森を抜けて」
「……だめ、です」
「…今日のこと内緒」
「………わかり、ました」
道案内として先行する二人はひそひそと内緒話をしていた。でも僕、耳良いんだ。難聴系じゃないんだ。すっとぼけたりはするけど。
森を抜けて…? 何かの比喩かな…? 向こうに綺麗な湖があるんです! くらいにしか使わないと思うんだけど。
「まあまあ、僕からもお願いしていいかな? 二人とも同じこと……してたんだよね?」
すると二人は、ゆっくり振り返りながら滑らかな動作で…………ダブルで揃って土下座した。
「「ごめんなさいぃぃ」」
仲良いな君たち……だからそれやめて。
二人は抱き合ったままこちらを見ながら黙ってしまった。目をグルグルさせながら。
でも、友達…ではないような。仲間…でもないような。不思議な二人だ。なんだろうか。
二人のスマホに写っている画像、カメラを首から下げている二人…
見覚えのない二人が僕の写真を撮っていた…
いや、なんで?
しかも二人同時も、たまたま?
ストーカー、しかもダブルで?
…バーで蒸留酒を頼むみたいな感じだな…
マスター、ストーカー、ダブル、ロックで。あ、氷小さめで、みたいな。
いや、違くて。
とりあえずスマホの画面を閉じて悟りの魔法を使おう。
でも、瞳の色を見ようにも二人とも目がグルグル回って見にくい。こっちが酔う。なんとか苦労してやっと見た瞳の色は焦りと不安と後悔で一杯だった。つまり、怒られることを恐れている。
僕はこの二人をとりあえず獣人くらいの警戒心を持っていると仮定した。
スマホを見せつけるようにゆっくり振り、注意を引きつける。二人のグルグルがピタリと止むと、さらに左右に大きく振る。
視線がそれぞれ追うのを確認すると、一旦真上にかざし、ゆっくりと見せつけながらジャケットの両ポケットに入れる。
目線がポケットに向いた瞬間を狙い、僕は認識を誤魔化す魔法を薄く振った。
抱き合う彼女達が気づく前に近寄り、頭を撫でた。もちろん弱回復魔法付きだ。
彼女達は気づいたら近くにいた、と言った認識だろう。ミスディレクションとも言う。違うか。魔法だ。魔法。
抵抗する事なく、撫でられ続けた二人は、徐々に強張った身体の力が抜けていった。良かった。何せ離れていてもわかるくらい力いっぱい抱きしめ合っていたんだ。身体痛めちゃうよ。
やっと緊張が解れ、二人が離れ、こちらを向いた。
離れた拍子に見えた黒猫のピンバッジ。と、緑色のリボン…記憶に薄らと引っかかる。
まあいい。それよりこんな子が…盗撮を?
四葉のクローバーが懐かしいのは、元同級生の首藤さん。こっちが問題だな。魔法の盗撮か。映るんだ、魔法。
バレたらバレたで仕方ないか。嘘つけないし。でも普通信じないか。
それにしても、どっちも盗撮か。
どうしようか。先ずは聞き取りからしようか。
「二人ともこれについて、お話してくれないかな?」
再度ポケットから二人のスマホを出し、聞いてみる。
「「ごめんなさいぃぃ」」
二人は前方に倒れ込むように、ゆっくり滑らかに揃って……土下座した。
上手いことハモるな。
◆
「すぐに謝れてえらいね。素直が一番だよ。でも土下座はやめてほしいかな…」
女の子を土下座ダブルとか居た堪れないよ。ドン引きだよ。ストーカーダブルもドン引きだけども。
「ほら、二人とも立って立って。ああ、ああ…汚れちゃってる。せっかく可愛いのに台無しだよ?」
神社は鳥居からお社に続く道は石畳で、それ以外は土だ。首藤さんはショートパンツだし、黒髪の子は膝丈スカートだし。膝擦りむくよ。二人とも可愛いんだし。
「…プロポーズ?」
「…婚約お申込みですか?」
「はは。揶揄わないでよ」
ゆっくり立ち上がった二人はそんな言葉を言ってきた。なんか面白い二人だな。というか見た目は違うけど、似ているのか。にしたって随分と唐突な発言だ。ほぼ初対面だよね?
いや、いつからストーキングしてたかで、彼女たちの中では初対面じゃないし、唐突でもないのか…
そんな事を考えていたら、首藤さんはお願いを口にした。
「青いのかけて欲しい」
「青いのってなんですか? 血?」
「!…」
「緑のも」
「無視しないでください! 緑って何ですか? たぬき?」
「……」
膝の汚れを指差し、青。手のひらの絆創膏を指差し、緑、と。……解析したのか…これは知ってるのはわたしだけで、黒髪の子は知らないという首藤さんからのパスか。
いやカマをかけてきたのか。いや、半分嘘か。なら確信を得るためか。
「……ちょっとここではね。どこか無い?」
「家に来て欲しい。お家デート」
「なっ! さっきすけべって言ってたのに全然違うじゃないですか!……これがロールキャベツ女子!……さすが現役JK…!」
何言ってるかわからない戰慄している間宮さんは置いておいて、首藤さんの瞳の色は点滅してる、か…
「……うん、いいよ。行こうか。でもその前に二人のこと、改めて教えてくれないかな?」
◆
さっきは唐突だったから改めて自己紹介をした。元同級生の首藤絹子さんと中学2年生の間宮晴風さん。彼女は後輩だった。
二人は同時に互いを指差し、
首藤さんは間宮さんをストーカーと言い、私は違う、という。
間宮さんは首藤さんをストーカーと言い、私は違いますから、という。
……仲良いな、君たち。
つまりどうやら、どちらも僕のストーカーらしい。やっぱりダブルで、か……いや、なんで?
まあ、発生の理由はわからないけど、現状はわかった。
歴は二人とも長くおおよそ3年に渡るそうだ………ストーキングってそんなに長い期間するもんなの?
昔から僕は勘が良かった。と思っていたけど……人族の傑出した才能を持つのはむしろこの二人だよ。全っ然、気付かなかったし。
「…京介くん、ごめんなさい」
「藤堂さん、すみませんでした」
推し黙る僕に不安を感じたのか、しおらしい態度で謝ってくる。まあ反省しているのは色でわかるから良いとして。
悟りの魔法で見た瞳の色はチラチラと謀りと嘘を示していた。この点滅の仕方は、誰かを庇ってるのかな? 二人とも? でも庇いあってるわけじゃない…
「ね、二人はどんな罰がいいかな?」
でも、うそはよくないね。
◆
「ついて来ないで」
「いーじゃないですか!」
「ふ」
「なんですか」
「いつもと違う」
「…私だって妄想拗らせてることくらいわかってますよ~…でもこんなチャンス見逃せませんし…」
「条件」
「…なんですか」
「森を抜けて」
「……だめ、です」
「…今日のこと内緒」
「………わかり、ました」
道案内として先行する二人はひそひそと内緒話をしていた。でも僕、耳良いんだ。難聴系じゃないんだ。すっとぼけたりはするけど。
森を抜けて…? 何かの比喩かな…? 向こうに綺麗な湖があるんです! くらいにしか使わないと思うんだけど。
「まあまあ、僕からもお願いしていいかな? 二人とも同じこと……してたんだよね?」
すると二人は、ゆっくり振り返りながら滑らかな動作で…………ダブルで揃って土下座した。
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