異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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ダズンローズの花束

レイパー

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| 永瀬 永遠


「で、堀北六花ほりきた りっかちゃん、先輩? だっけ。恋のアポストル? なんなのこれ? ここで嘘流してるわけ?」

「ひぃぃぃぃ言います! ぐすっ、言いますから! もう蹴らないでください! ぐすっ…私達は…昔、男に酷い裏切り方をされて…それで…ぐすっ、このサイトで裏切った子を探して…ついでに他の酷い事をした男子にもいろんな方法で…探し出して天誅してて…ぐすっ……」


「んで、なんで藤堂京介なわけ?」

「…最近…っすん、サイトにすごく名前が上がるんです…上限の100まで達したのは初めてです! これは今までで一番の悪かも知れません…絶対そうです!」


「あんたらがなんかされたわけじゃないっしょ?」

「けど! …可哀想じゃないですか…裏切られた女の子達が…それに六花も…私達みんな初恋の子に裏切られて…」


「あんたらの初恋とかどうでも良いし…さっき言ったけど、嘘だって。これ見る限り、絶対違う目的でしょ…」

「今から絶対裏切られる子が! 絶対出てきます! ですから!」


「ふー。あのね、わたしも暇ってわけじゃないの。ヒヨコとかタマゴとかの本、買わないといけないの」

「…お料理…ですか? ヒヨコの…活け〆? 流石…私、そんなの無理です」


「あんなふわふわしたやつ首マワして〆るとか猟奇的か。可哀想か。ちげぇーよ。赤ちゃんの本だし。え……名前とかピヨ介って付けたら…あ、ダメ。うわ、わたし今想像したら何か鳥料理全般ダメな感じになる…なんて名前を本につけるし……つかまだ?」

「ふふ、眠らせ姫でも冗談を言うんですね。もう少しです。今日は全員揃いませんが…」


「…まあ、良いんじゃない? その代表が書き込みしたやつ吐くんでしょ」

「無理矢理はダメですよ! …ひとまずはクリア…」


聞こえてるし……こいつ、何か企んでんのか。あ、飛び道具メモリアル五寸釘しかない…まあ、なんとかなるか。





「なん、ここ」

 電車を乗り継いで辿り着いたのは、鎌田。ここら一帯は工場地帯で、その入り組んだ先にある青い建物に案内された。

 この辺りは不況で倒産が相次いだとこだっけ。割と有名だ。周りは全部…廃工場か。おっきな声を出しても無駄か。


「名前は特に無いのですが、ここはネストと呼んでます。まだ誰も来てませんね」

「巣か。んで、だれがねむりたいわけ? 六花ちゃん先輩?」


 まあ、恋のアポストルは全員女子って話だし。大丈夫か。なんか企んでる感じはするけど。

「いえ! 眠らせたいのは藤堂京介。にっくき女の敵、オークキングいたっ───」

「人のダーリンに何て名前つけるし。だからこの書き込み違うって言ったじゃん」


 恋アポの藤堂京介アイコンには+100とあり、中に入ると書き込みの数はその倍以上あった。しかも想い人を探してる感じはなく、私怨って感じがほとんど。ダーリン何に巻き込まれたし。昔からよく巻き込まれて……あれ?


「痛ぁぃ…でも…こんな必死な様子の書き込み…」

「…ちゃんと見るし。だいたいこれ仇うちっぽいし。あれ…なんかマジのやつもある…それにまだダーリンのスケ、10人くらいだし。しかも多分そいつらそんな事言わな…」


「やっぱりオークじゃないですか! クズ! きっと殴ったり、蹴ったりして昏倒させてからズルズルと暗い部屋に連れ込み、意識の戻らないうちに襲ったんだわ…恥ずかしい写真まで撮ったりして…絶対避妊もせずに…なんという…汚らわしい…人の姿をしたモンスター…姫も庇わなきゃいけない理由があるんでしょ! 六花にお話ください! 私達、恋のアポストルが守ります!」

「…」


 それ逆だし。全部私がしたし。汚らわしいのむしろわたしだし…そう他人に…言われたら、なんかだんだん悪い気がしてきた…しかもダーリン、小学生の時より…弱くなってた気がする…そんなダーリン…京くんを…わたしは……あれ? 何か小さな時は…弱味を盾に京くんを…わたし…あれ…


「あっ……そっか…ごめんね、京くん…」

「急に…どうしたんですか? …話してくれるんですね! さあ! さあ!」


 なんで今思い出しへこみしてる時に煽るし……このっ


 ガチャガチャ────


「永遠よぉ よくも弄んでくれたな…」


 ネストの扉が開いたと思ったら、弾除け後藤が入ってきた。いち、に、合計六人…こいつら三年と二年の先輩舎弟じゃん…あんま学校来てないやつらだ。


「恭くん、こいつ? 何、激マブじゃん。本当に良いの?」

「永遠ちゃーん、ごめんねー、恭のやつ拗らせちゃってさー」

「男ってやつをわからせないといけねーて、恭がさー」

「おー、もう一人いんじゃん。こいつもうちの学校のやつ? 恭くんどーする?」

「……一緒にやるか。騒がれると面倒だしな」

「やりい!」


 …こいつらの獣欲の目…マワす気か…レイパーにクラチェンかよ。ザラタン見習えし。何考えてるし。すぐバレるのに…あー、同じ先輩だから堀北六花の繋がり?


「…これ、六花ちゃん先輩の仕込み? スマホいじってたけど」

「違う! 違います! 何ですかこいつら…キョウクン? まさかこいつが藤堂京介!」


 お前もか。弾除け後藤だよ。今はレイパー後藤だよ。しかも他の二人はあんたと同じ学年の同級生だろ。まあ私服だからわからないか。こいつの仕込みじゃない…なら…報復か。


「永遠が入れ上げてたのそいつだろ? 恋アポってやつに載ってたぜ」

「俺の彼女に調べてもらったんだ~永遠ちゃん湊小でしょ? こいつ有名人だよね~何人も女の子に言い寄られてだけど結局一人だけ選んで……あれ? ちゃんとしてるじゃん?クズなのは俺たちでした! はい鍵閉めたっと」

「何? 永瀬ちゃんフラれたのに初恋拗らせてたの~? ははっ、ダサー。もう諦めたら? それにそんな暴力的で足癖悪い女あっちも願い下げだって」

「うーわ、ダサっ」

「ダッサーい」

「……」


 そんな事…わかってるよ。京くんに避けられてたの…記憶に蓋してたし…愛香に盗られた時に蓋したんだった……ちゃんと適切な距離感にして…

 小さな時…あんな目に合わせて…


「は、男をわからせてやる。こいつの怖いのは足技だ。あんまり近くに寄るなよ」

「はいはーい。なら先ずは…こいつからだ! おーっと。ハイハイ、暴れない暴れない。ちょっと手押さえとけよ。マスクとメガネを取りましょーね。おお! こいつもマブいじゃん! ラッキー!」
「つか、こんな奴いた? 何年?」

「いや、いやー! 離して! 助けてあーくん!」

「あん? 彼氏か? すげー燃えるんですけど。永遠ちゃん、じっとしてないとこいつ、殴っちゃうよ?」


「ひっ!」

「…その子には乱暴しないで。わたしを好きにしていいから…」


 これは…罰、かな…ならわたしだけで良いよ。

 昔の事思い出したら咄嗟に反応出来なかった。

 小さな時、みんなが京くんに言い寄ってたの我慢ならなくって、でもわたしは素直じゃなくって。いっつも脅してた…んだった…ははっ、それが返ってきたんだろうな…

 巻き込んでごめんなさい。六花ちゃん先輩。


「ふん、そんなの信じられるかよ。そうだな。パンツ脱げよ。したら足技使えねーだろ」

「………わかった」


 小さな時、わたし京くんのパンツ、みんなの前でズリっと下げてた…どうしても見たくって構って欲しくって……こいつらみたいな顔してたのか…京くんこんな気持ちだったのかな…


「駄目です!姫!ひ、ん──、ん───」

「はいはーい、黙ってストリップ見ようね。後で同じことするから予習しときなよ。ぶはっ、姫だって。頑張って姫───! ははっ」


「…脱いだ、離して」


「おおー素直な良い子じゃん! あれ、何その色気ないパンツ」

「な、なんだ! その毛糸のパンツは…っ、そ、その下もだ」

「恭くん、狼狽えてんじゃん。あれ見せパンだよ。まーまー最初はさせてやっからさ。任せなって」

「永遠ちゃんが毛糸のパンツが見せパンとか。ダッサ。高一だし仕方ないか~今度先輩がもっと色気のあるのプレゼントするからねー」


 …お腹冷やしちゃいけないって思って、あったかいの履いてた。それを…ダサいとか…辛い…ぐすっ…


「ほらどーしたー、脱ーげ、脱ーげ」

「あらら、永遠ちゃん泣いてるじゃーん」

「脱ーげ、脱ーげ…おおっ! いただきました! ノーパン姫の完成でーす!」

「おー純白じゃん。ウェディングじゃん」

「まあ今からパコパコ姫だけど! ぶふー」

「ん──、ん──、」


「………ぐすっ」


 京くん、ボコっておんなじ事したのが返ってきたんだろうな…ごめんね、京くん。ごめんなさい。京くん。こいつらにマワされたら京くんの気が晴れるかな…


「ほら、スカート捲れよ。したらこいつ離してやるよ」

「………」

「おお素直。あとすっこし、あとすっこし」

「あとすっこし、あとすっこ…止まってんぞ。あくしろ。こいつ殴んぞ?」

「んん! ん──、」

「……京くん…助けて…京くん」


「恭くん、なんか助けてって言われてるよ~ってか別のキョウクンかーつれーわ、これつれーわ」

「永遠ぁ、どこまでもコケにしやがって! 煽りやがって! 俺が剥いてやる! おらぁっ!」

「たすけて! 京くん! いや──! やめて! いや!」


 いや! やっぱり京くんだけがいい! 誰にも見られたくない! でも足が出ない! 暗器もない! 五寸釘はいやっ! こんなヤツに! 助けて京くん!!


 キィィィィ────────ン


「はは、叫んでもここには誰も来ないよー…お、お、何か…ハウリング音が…?」


 後藤に飛び掛かられ、わたしが叫んだその時。

 鋼鉄の壁が、音もなく、弾け飛んだ。

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