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戦が始まってしまいそうですわⅠ
しおりを挟む「あ、あれ? わたくしは一体……」
気が付くとそこは自室のベッドの上でした。
窓から差し込む朝日が眩しいです。
昨日の記憶が途中から曖昧になっています。
確か殿下に婚約を一方的に解消されて……そこからどうなったんでしょう?
「あっ! お嬢様、お目覚めですか!?」
「ええ、おはようございます。ソフィア」
部屋の入口で専属メイドのソフィアが声をあげます。
わたくしが起きたことに気が付いて、慌てて駆け寄ってきました。
「大丈夫ですか!? どこか具合の悪い所とかありませんか!?」
「ええ、特に問題はないみたいですわ」
「よかったぁ~」
わたくしの言葉を聞いて、心底安心した表情を浮かべるソフィア。
彼女はわたくしが生まれる前からこの屋敷で働いている使用人です。
わたくしにとって姉のような存在であり、信頼できる数少ない友人でもあります。
「それでわたくしはどうしてここで寝ているのでしょう?」
「覚えていないんですか? お嬢様は殿下に婚約破棄を宣言されたあと、ショックで倒れたんです」
「そうだったのですね……」
しかし、殿下があそこまでマリーさんにお熱だったとは正直予想外でした。
はぁ……。これからどうすればいいのかしら。
「そうだ! お父様にご報告をしなくては!」
「待ってください!」
「っ! いきなり大きな声を出してどうかしましたか、ソフィア?」
「お、お嬢様……今、旦那さまに会われるのはちょっとマズいです」
「なぜですの? わたくしたちお父様に今回のことを説明しないといけませんわ」
「それはそうなのですけど……」
「はっきり言ってくれないと分かりませんわよ? それにこのまま何も言わないわけにはいきませんもの」
「うぅ……」
いつもはっきりと物事を言うソフィアにしては珍しい態度です。
そんなに言いづらいことなのでしょうか……。
「オリビアぁあああ! 大丈夫かぁあああ!?」
すると突然、部屋の扉が大きな音を立てて開きました。
「あら、お兄様じゃないですか。朝から騒々しいですよ」
「おおぉ! 目覚めたのだな! 体はなんともないのか!?」
「はい、わたくしはなんともありませんわ」
「そうか! そうか!」
わたくしの無事を確認すると、嬉しさのあまり涙を流すお兄様。
まったく昔から暑苦しい人ですこと。
「ほら、お兄様。もう泣くのはやめてください。恥ずかしいではありませんか」
「すまん、オリビア。だが本当に心配したんだぞ!」
「それは感謝していますが、あまり大袈裟にしないでくださいませ」
「何が大袈裟なものか! 婚約破棄だぞ! お前がどれほど傷付いたか想像もつかん! 父上など戦の準備を始めたぞ!」
「ええっ!? なんですって!?」
あまりにも衝撃的な言葉が聞こえてきて、わたくしは自分の耳を疑いました。
思わず、ソフィアの方を向くとアチャ~という顔をしています。
「あ、あの、ソフィア……。それは本当なのでしょうか?」
「はい。病み上がりにはショックが強いかと思いまして、差し控えておりました」
ソフィアはそう言うと、わたくしの手を握ってウウォーと泣いているお兄様に若干呆れた顔を向けました。
しかし、そんな大事になっているのであれば尚更、お父様とお話ししなければなりません。
「ソフィア、お父様を呼んでくださいまし。それとお母様にもお願いしますわ……」
「——その必要はない」
わたくしがソフィアにそう頼もうとした瞬間、部屋の扉がゆっくり開いたのでした。
そこには鬼の兜を被り、先祖代々の鎧に身を包んだお父様がいたのです。
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