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第一王子レオンハルト
しおりを挟む私の名前はレオンハルト。
この国の第一王子だ。
私は先日、長年の婚約者であるオリビア嬢との婚約を破棄した。
彼女のことは嫌いではなかったのだが、彼女には全くと言っていいほど女性としての魅力を感じることができなかった。
彼女には申し訳ないが、私はマリーという可憐な少女に惹かれてしまったのだ。
その結果、国を乱したとして王位継承権を失ってしまったが、そのことに後悔はない。むしろ清々しい気持ちすらある。
真実の愛の前には地位など些細な問題なのだ。
しかし、そんな私の幸せは長く続かなかった。
サンカレア公爵の暴挙から平和がようやく戻ってきた頃のこと、私が自室で寛いでいると、一人の男が訪ねてきた。
その男は宰相の息子で学園時代には私と共に学園の顔「スター4」と呼ばれていた男だった。
彼は開口一番こう言った。
「殿下、最近、恋愛小説が民衆の間で流行っていることをご存知ですか?」
私は鷹揚に頷いた。
「うむ。そのことか。もちろん知っているぞ。私とマリーを祝福してくれているのだろう? 嬉しいことだ」
オリビアとの婚約を破棄し、マリーとの真実の愛を取った私を民衆は支持したのだ。
身分差を越えた大恋愛の末に結ばれた二人というものに皆、心を打たれたのだろう。この話は美談として小説や演劇として王国中に広まったのだ。
しかし、宰相の息子は首を振った。
「いえ、そうではありません。殿下。最初こそそういう見方もあったかもしれません。しかし、今では違うのです。今、巷では身分違いの恋を描いた物語ではなく、婚約者を奪われた令嬢の復讐物語に熱狂が集まっているのです」
「なんだと……?」
私は衝撃を受けた。
「どういうことなのだ!? なぜそのようなことになっている!? あれだけ私たちの恋路を応援してくれたではないか!?」
「はい。最初はそうでした。しかし、時が流れ、新しい価値観が生まれてくるにつれて、だんだんとそのように変わっていったのです」
そう言って宰相の息子は1冊の本を取り出した。
「これが現在人気がある作品です」
私は差し出された本をパラリとめくってみた。
そこには美しい絵とともに男女の恋模様が描かれている。
「く、くだらない。こんなものが本当に人気があるのか?」
「はい。それが現実なのです。残念ながら……」
「バカな……」
私は膝から崩れ落ちた。
男女は誰がどう見ても私とマリーではないか……これはその男女が転がるように不幸になっていく物語だ。
「嘘だ! 信じられない! なぜだ!? なぜこのようなことになった!?」
「殿下、これは事実です。受け入れてください。もう遅いのです。全て手遅れなのです……」
「そ、そんなことはない。出版を停止させれば良いではないか!?」
「難しいでしょう。もう数多く出回ってしまっていますから……」
「な、なら! この作者を処罰すればいい!」
そうだ。作者に謝罪文を書かせればいい。そうすればこの馬鹿な流行も収束することだろう。
「調べましたが、さすがに殿下を模した物語です。徹底して痕跡を消しています。作者の身元を調べるのは難しいでしょう。恐らく貴族が裏にいると思いますが、現在殿下に敵対する者が多いので、絞り込むのは容易ではありません……」
ドンっ!と、私は机を殴りつけた。真実の愛を選んだ私とマリーを悪し様に描くなど言語道断! あまりにも許せない!
「ぐぬぬ。くそっ! 誰なんだ!? これを書いた小説家は! 著オリビア~ンだとふざけたペンネームだ! こいつはいったい誰なんだ!? 見つけ出して罰してやるぞ!」
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