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リリアナ・クォーツ伯爵令嬢のハッピーウェディング
しおりを挟むパパパ、パ~ パパパ、パ~
教会にラッパの音が響き渡り、リリアナさんがお父さまのクォーツ伯爵にエスコートされて入場されました。
「結婚おめでとうございますわ~」
「おめでとう~」
今日はリリアナさんの結婚式です。
純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女は、まるで妖精のように可憐で美しい。
ああ、素敵ですわ。
なんて絵になるんでしょう!
「うぐっ、あぐっ」
あ、クォーツ伯爵が涙でぐちゃぐちゃです。
リリアナさんがばっちいもの見るような視線を向けています。
「うっぐ、えっぐ」
あ、壇上に到着した瞬間、リリアナさんがエスコートを力強く振りほどきました。
伯爵がなんとも言えない悲しい顔をしています。
「リリアナ、綺麗だよ」
「まぁ、エリオットったら。嬉しいわ」
新郎のエリオット辺境伯令息が甘い笑顔を浮かべながら、花嫁の手を取られました。
「素敵ですわ」
学園在籍時に彼とリリアナさんの恋路を応援してきたわたくしとしては感慨深い光景です。
「あ、あ、あ……」
あ、伯爵がとうとう泣き崩れてしまいました。
これはあれです。娘を嫁に出す父親の心境というやつですね。きっと。
「それでは新郎新婦の誓いのキスを……」
神父の言葉に会場が静まり返り、皆の注目が集まります。
リリアナさんは顔を真っ赤に染めながら、そろりと背伸びをしてエリオットさんに唇を寄せていきました。
「きゃー!」
「お似合いよ~」
「幸せにね~」
「リリアナ……リリアナ……」
周囲から歓声が沸き起こります。
一部、どんよりした空気を漂わせる人物がいらっしゃいますが、まわりはそんなことお構いなしです。
そして、2人は幸せそうに微笑みあいました。
***
感動的な結婚式が終わり、式場前にて結婚パーティーが始まります。
「リリアナさん、ご結婚おめでとうございます~」
わたくし、あまりに感動して泣いてしまいました。
「ありがとうございます。オリビアさまのおかげで素敵な旦那様と結ばれることができました!」
「えへへ、照れますわ」
わたくし、今、とても幸せな気分です。
「あのそれでオリビアさま……」
リリアナさんが周りを見渡してから小声になります。
「……小説の続きはいつ発売になりますか?」
「うふふ。来月の末頃を予定しておりますわ」
「まぁ、それは楽しみです!」
そう言ってリリアナさんはパチンと両手を胸の前で合わせました。
実は家族以外ではリリアナさんにだけ、わたくしが恋愛小説家オリビア~ンであることを打ち明けているのです。
「実は出版前のものをリリアナさんように持ってきているのです。是非読んでくださいまし」
「え? いいんですか? やった~! ずっと続きが気になってたんです! すっごく面白いんですもの!」
「うへへ。そう言っていただけると作家冥利につきます~。あとでお届けしますね~」
わたくし、これからも頑張って書いていきますわ! そう決意を新たにしたのでした。
「ちょっと駄目よ、レオくん! お酒なんて飲んじゃ」
わたしくたちが楽しくお喋りをしていると何やら遠くで女性の悲鳴があがりました。
続けてガシャンとガラスの割れる音が響き渡ります。
「なんでしょうか!?」
「行ってみましょう!」
わたくしたちは急いで現場に向かいました。
「ヒック……マリーまで私をそんな目で見るのか!? 私がいつ酒を飲んで、君に暴力を振るったんだ!? 」
騒ぎの中心にはレオンハルト殿下とマリーさんがいらっしゃったのです。
「誤解よ! わたしレオくんをそんな目で見てない!」
「嘘だ! 最近の君は私から逃げてばかりじゃないか! もううんざりだ!」
どうやら痴話喧嘩のようです。
しかし、お酒のせいか言動が怪しくなっています。
「それもこれもあの、オリビア~ンとかいう、ふざけたペンネームの作家のせいだ!」
ぎくり!?
自分の名前が殿下の口から出て、思わず動揺してしまいました。
「ヒック……あいつがあることないことデタラメな物語を書き散らしてくれたおかげで私は散々じゃないか……うん? そこにいるのはオリビアじゃないか!? そうだ……全部お前から始まったんだ!」
そう言ってレオンハルト殿下がフラフラとこちらに近付いてきたのです。
「わわわ、こっちに来ないでくださいませ!」
「黙れ! お前のせいで俺は破滅したんだぞ! あの時、お前がマリーのことに言及しなければ私はまだ王太子のままだった! あの時、全てが狂ったんだ! 責任を取れ!」
「なぜそうなるのですか!? 全てあなたが撒いた種でしょう!?」
「ええい、うるさい!!」
叫んだレオンハルト殿下がこちらに飛びかかったきました。
「きゃあああ!」
「オリビアさま~!」
あぁ、殿下がスローモーションに見えます。
あら? これが俗に言う走馬燈といものでしょうか?
小さい頃からの楽しかった思い出が駆け抜けてゆきます。
お父さま、お母さま、お兄さま、ソフィア、リリアナさん。
そして最近ではミスターXと作品を作り上げた日々……。
全てが愛おしい日々でした……。
「オぉお・リぃい・ビぃい・アぁああ!!!」
あぁ、わたくしはもしかしてここで死んでしまうのでしょうか。
せめて最後に一目だけでも皆に会いたかったですわ。
その時です。殿下がいよいよ迫り、わたくしも覚悟を決めた瞬間でした。
わたくしと殿下の間に割って入る人影があったのです。
「この痴れ者がぁあ!」
「ぐへっ!」
「きゃあっ!」
突然、目の前に現れた人物によって殿下が殴り飛ばされました。
「可憐なる乙女に手を上げるとは言語道断! 天誅!」
※明日21時最終話更新です。
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