12 / 13
リリアナ・クォーツ伯爵令嬢のハッピーウェディング
しおりを挟むパパパ、パ~ パパパ、パ~
教会にラッパの音が響き渡り、リリアナさんがお父さまのクォーツ伯爵にエスコートされて入場されました。
「結婚おめでとうございますわ~」
「おめでとう~」
今日はリリアナさんの結婚式です。
純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女は、まるで妖精のように可憐で美しい。
ああ、素敵ですわ。
なんて絵になるんでしょう!
「うぐっ、あぐっ」
あ、クォーツ伯爵が涙でぐちゃぐちゃです。
リリアナさんがばっちいもの見るような視線を向けています。
「うっぐ、えっぐ」
あ、壇上に到着した瞬間、リリアナさんがエスコートを力強く振りほどきました。
伯爵がなんとも言えない悲しい顔をしています。
「リリアナ、綺麗だよ」
「まぁ、エリオットったら。嬉しいわ」
新郎のエリオット辺境伯令息が甘い笑顔を浮かべながら、花嫁の手を取られました。
「素敵ですわ」
学園在籍時に彼とリリアナさんの恋路を応援してきたわたくしとしては感慨深い光景です。
「あ、あ、あ……」
あ、伯爵がとうとう泣き崩れてしまいました。
これはあれです。娘を嫁に出す父親の心境というやつですね。きっと。
「それでは新郎新婦の誓いのキスを……」
神父の言葉に会場が静まり返り、皆の注目が集まります。
リリアナさんは顔を真っ赤に染めながら、そろりと背伸びをしてエリオットさんに唇を寄せていきました。
「きゃー!」
「お似合いよ~」
「幸せにね~」
「リリアナ……リリアナ……」
周囲から歓声が沸き起こります。
一部、どんよりした空気を漂わせる人物がいらっしゃいますが、まわりはそんなことお構いなしです。
そして、2人は幸せそうに微笑みあいました。
***
感動的な結婚式が終わり、式場前にて結婚パーティーが始まります。
「リリアナさん、ご結婚おめでとうございます~」
わたくし、あまりに感動して泣いてしまいました。
「ありがとうございます。オリビアさまのおかげで素敵な旦那様と結ばれることができました!」
「えへへ、照れますわ」
わたくし、今、とても幸せな気分です。
「あのそれでオリビアさま……」
リリアナさんが周りを見渡してから小声になります。
「……小説の続きはいつ発売になりますか?」
「うふふ。来月の末頃を予定しておりますわ」
「まぁ、それは楽しみです!」
そう言ってリリアナさんはパチンと両手を胸の前で合わせました。
実は家族以外ではリリアナさんにだけ、わたくしが恋愛小説家オリビア~ンであることを打ち明けているのです。
「実は出版前のものをリリアナさんように持ってきているのです。是非読んでくださいまし」
「え? いいんですか? やった~! ずっと続きが気になってたんです! すっごく面白いんですもの!」
「うへへ。そう言っていただけると作家冥利につきます~。あとでお届けしますね~」
わたくし、これからも頑張って書いていきますわ! そう決意を新たにしたのでした。
「ちょっと駄目よ、レオくん! お酒なんて飲んじゃ」
わたしくたちが楽しくお喋りをしていると何やら遠くで女性の悲鳴があがりました。
続けてガシャンとガラスの割れる音が響き渡ります。
「なんでしょうか!?」
「行ってみましょう!」
わたくしたちは急いで現場に向かいました。
「ヒック……マリーまで私をそんな目で見るのか!? 私がいつ酒を飲んで、君に暴力を振るったんだ!? 」
騒ぎの中心にはレオンハルト殿下とマリーさんがいらっしゃったのです。
「誤解よ! わたしレオくんをそんな目で見てない!」
「嘘だ! 最近の君は私から逃げてばかりじゃないか! もううんざりだ!」
どうやら痴話喧嘩のようです。
しかし、お酒のせいか言動が怪しくなっています。
「それもこれもあの、オリビア~ンとかいう、ふざけたペンネームの作家のせいだ!」
ぎくり!?
自分の名前が殿下の口から出て、思わず動揺してしまいました。
「ヒック……あいつがあることないことデタラメな物語を書き散らしてくれたおかげで私は散々じゃないか……うん? そこにいるのはオリビアじゃないか!? そうだ……全部お前から始まったんだ!」
そう言ってレオンハルト殿下がフラフラとこちらに近付いてきたのです。
「わわわ、こっちに来ないでくださいませ!」
「黙れ! お前のせいで俺は破滅したんだぞ! あの時、お前がマリーのことに言及しなければ私はまだ王太子のままだった! あの時、全てが狂ったんだ! 責任を取れ!」
「なぜそうなるのですか!? 全てあなたが撒いた種でしょう!?」
「ええい、うるさい!!」
叫んだレオンハルト殿下がこちらに飛びかかったきました。
「きゃあああ!」
「オリビアさま~!」
あぁ、殿下がスローモーションに見えます。
あら? これが俗に言う走馬燈といものでしょうか?
小さい頃からの楽しかった思い出が駆け抜けてゆきます。
お父さま、お母さま、お兄さま、ソフィア、リリアナさん。
そして最近ではミスターXと作品を作り上げた日々……。
全てが愛おしい日々でした……。
「オぉお・リぃい・ビぃい・アぁああ!!!」
あぁ、わたくしはもしかしてここで死んでしまうのでしょうか。
せめて最後に一目だけでも皆に会いたかったですわ。
その時です。殿下がいよいよ迫り、わたくしも覚悟を決めた瞬間でした。
わたくしと殿下の間に割って入る人影があったのです。
「この痴れ者がぁあ!」
「ぐへっ!」
「きゃあっ!」
突然、目の前に現れた人物によって殿下が殴り飛ばされました。
「可憐なる乙女に手を上げるとは言語道断! 天誅!」
※明日21時最終話更新です。
53
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
天然の仮面を被った令嬢は、すべてを賭けて傭兵領主に嫁ぐ──愛と復讐を誓う、たったひとりのあなたへ
葵 すみれ
恋愛
没落貴族の令嬢パメラは、売られるように元傭兵の成り上がり領主に嫁がされる。
──けれどそれは、たったひとつ残された自分自身を賭けた、最後の勝負でもあった。
冷たく迎えられた屋敷、素性を隠す夫。
けれど、微笑みの仮面の下で牙を研ぐパメラもまた、彼を利用する覚悟を秘めていた。
ただの偽りの夫婦──そう思っていたはずなのに。
重ねた誓いの先で、ふたりの心はひとつになる。
そして、交わした誓いはただひとつ。
「奪われたすべてを、取り戻す」
これは、仮面を被った令嬢と傭兵領主が、愛を知り、復讐に挑む物語。
(他サイトにも掲載しています)
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
婚約破棄?悪役令嬢の復讐は爆速で。
八雲
恋愛
「リリム・フォン・アスタロト! 貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの最中、婚約者である王太子エリオットから身に覚えのない罪を突きつけられた公爵令嬢リリム。隣には「真実の愛」を語るマシュマロ系男爵令嬢シャーリーの姿。
普通の令嬢なら泣き崩れる場面――だが、リリムは違った。
『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~
スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」
聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。
実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。
森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。
「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」
捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる