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第三部 白龍の神殿が落ちる日
分岐点
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厳かに告げるハデスの声が神殿内に響き、アルバートが部屋の扉をほんの少しだけ開いて中を覗き込むと、拘束されたティーアと、神聖魔法で生み出した剣を握るハデス、そしてその光景を固唾を飲んで見守る神官の姿が飛び込んできた。
その光景を目の当たりにした瞬間、アルバートの身体は動いていた。
「お待ちください!!」
気がつけば、アルバートは声を上げて神龍の間に踏み入れていた。
ハデスが神聖魔法で形成した剣を振り下ろす――それを阻止すべく、アルバートは自らの神聖魔法で咄嗟に障壁を展開していた。剣が振り下ろされた直後、光の壁が現れ刃を弾く。それによってティーアの胸を貫くはずの一撃は間一髪のところで防がれることとなったのだった。
(間に合った……!)
安心するのも束の間、その場にいたすべての視線がアルバートへと向けられた。その目はどれも戸惑いと驚きの色に染まっていたが、中でもハデスの視線は一際強いものだった。
「アル……?」
その場にいた誰もが驚愕の表情を見せている。それはそうだろう、自分の主である神官長が今まさに剣でティーアを斬ろうとしていたのだ。今までハデスの言葉を忠実に守り、遂行してきたアルバートが、彼の意思に反する行動を取ったことに驚かないはずがないだろう。
「アル、儀式を遮るとはどういうつもりですか?場合によっては罰せねばなりません」
ハデスの目には怒りの色が見えた。その気迫に一瞬気圧されるものの、アルバートは込み上がってくる畏れを飲み込み、口を開いた。自らを鼓舞するかのように手を握って拳を作る。
「恐れながら申し上げます……ティーア・アンクローゼの浄化を今一度お考え直しください!」
その言葉に神官たちの間にどよめきが起こったが、すぐに平静を取り戻すと再び視線をアルバートへと集中させる。しかしアルバートは怯むことなく言葉を続けた。
「何故ですか」
「それは……」
ハデスの問いかけに、アルバートは言い淀む。事情も何も知らないのだ。説得などできようはずもない。しかしここで引き下がるわけにはいかなかった。ハデスはそんなアルバートの戸惑いを見抜いていたのだろう。彼は小さく溜息をついて言った。
「あなたは自分が何をされているのか理解しているのですか」
「……そのつもりです」
「アレスタからダーハート教会での報告は受けています。黒龍ディアーナ、そして魔王軍最高幹部リオルと邂逅したそうですね。彼らに何か吹き込まれましたか?」
「……っ」
アルバートは答えに窮したように黙り込み、ハデスはそれ以上何も言わなかった。図星だったが、それをこの場で口にしたら、魔族の仲間だと断定されかねない。
「沈黙は肯定と受け取りますよ」
ハデスの厳しい声音に、アルバートは俯くことしかできない。
氷のように冷たいハデスの瞳を、生まれて初めて見た気がする。その視線に晒され、アルバートは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
これは分岐点だとアルバートは直感した。ハデスの庇護の下で従順に生きるか、自らの信念に従い彼に牙を剥くか。
前者を選べばティーアは死ぬ。後者を選べば――
(シュカ様、ハデス様、みんな、ごめんなさい)
アルバートは拳を握った。
その光景を目の当たりにした瞬間、アルバートの身体は動いていた。
「お待ちください!!」
気がつけば、アルバートは声を上げて神龍の間に踏み入れていた。
ハデスが神聖魔法で形成した剣を振り下ろす――それを阻止すべく、アルバートは自らの神聖魔法で咄嗟に障壁を展開していた。剣が振り下ろされた直後、光の壁が現れ刃を弾く。それによってティーアの胸を貫くはずの一撃は間一髪のところで防がれることとなったのだった。
(間に合った……!)
安心するのも束の間、その場にいたすべての視線がアルバートへと向けられた。その目はどれも戸惑いと驚きの色に染まっていたが、中でもハデスの視線は一際強いものだった。
「アル……?」
その場にいた誰もが驚愕の表情を見せている。それはそうだろう、自分の主である神官長が今まさに剣でティーアを斬ろうとしていたのだ。今までハデスの言葉を忠実に守り、遂行してきたアルバートが、彼の意思に反する行動を取ったことに驚かないはずがないだろう。
「アル、儀式を遮るとはどういうつもりですか?場合によっては罰せねばなりません」
ハデスの目には怒りの色が見えた。その気迫に一瞬気圧されるものの、アルバートは込み上がってくる畏れを飲み込み、口を開いた。自らを鼓舞するかのように手を握って拳を作る。
「恐れながら申し上げます……ティーア・アンクローゼの浄化を今一度お考え直しください!」
その言葉に神官たちの間にどよめきが起こったが、すぐに平静を取り戻すと再び視線をアルバートへと集中させる。しかしアルバートは怯むことなく言葉を続けた。
「何故ですか」
「それは……」
ハデスの問いかけに、アルバートは言い淀む。事情も何も知らないのだ。説得などできようはずもない。しかしここで引き下がるわけにはいかなかった。ハデスはそんなアルバートの戸惑いを見抜いていたのだろう。彼は小さく溜息をついて言った。
「あなたは自分が何をされているのか理解しているのですか」
「……そのつもりです」
「アレスタからダーハート教会での報告は受けています。黒龍ディアーナ、そして魔王軍最高幹部リオルと邂逅したそうですね。彼らに何か吹き込まれましたか?」
「……っ」
アルバートは答えに窮したように黙り込み、ハデスはそれ以上何も言わなかった。図星だったが、それをこの場で口にしたら、魔族の仲間だと断定されかねない。
「沈黙は肯定と受け取りますよ」
ハデスの厳しい声音に、アルバートは俯くことしかできない。
氷のように冷たいハデスの瞳を、生まれて初めて見た気がする。その視線に晒され、アルバートは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。
これは分岐点だとアルバートは直感した。ハデスの庇護の下で従順に生きるか、自らの信念に従い彼に牙を剥くか。
前者を選べばティーアは死ぬ。後者を選べば――
(シュカ様、ハデス様、みんな、ごめんなさい)
アルバートは拳を握った。
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