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第三部 白龍の神殿が落ちる日
反意
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「ハデス様」
静まり返った広間に、凜とした声が響き渡る。
「リオル・ルーウェンは言いました。雪華の髪飾りと引き換えにティーア・アンクローゼの眷属化を解くと。俺は今からそれを行います。これは俺の……アルバート・グランディアが自らの意志によって魔族と通じたことによる罪であり、ティーアが元に戻ったのなら、巻き込まれた彼女に罪はありません」
アルバートの瞳は揺るぎなく、真っ直ぐにハデスを見据えている。その眼差しから決して目を逸らそうとはしない。彼の決意を示すように、瑠璃色の瞳が輝くのを見て、ハデスは目を細めた。
「本気で言っているのですか」
「はい」
アルバートははっきりと答える。
そして髪に挿さったままになっていた雪華の髪飾りを引き抜くと、それを頭上高く掲げた。
その動作を見て、入口で静観していたカイルが鋭い声で叫んだ。それとほぼ同時にリオルを呼ぶアルバートの声が木霊する。
「ダメだ!アルを止めろっ!!」
「リオル、出てこい、取引だ!!」
背負っていた槍を抜き放つと、アルバートに向かって駆け出す。一気に間合いを詰めると、持っていた槍を閃光のように閃かせる。槍はアルバートの掲げた手を狙った。
アルバートは神聖魔法で障壁を形成してカイルの槍を弾く。カイルの槍術は重さがあった。その一撃一撃は重い鈍器で思いっきり殴られているようで、生半可な障壁では貫かれてしまいそうな勢いだ。
カイルは続けざまに槍を繰り出し、障壁の脆いところを見つけては的確に槍を繰り出していく。
しばらく攻防が続いたのち、その拮抗が崩れたのは突然のことだった。
障壁の隙間を縫うように槍先をアルバートの身体目掛けて突き出したのだ。
対人戦闘における経験も能力もカイルが圧倒していた。一瞬の隙でも与えられればアルバートには防御手段は残されていなかった。
「くっ」
咄嗟に身体を捻ってカイルの攻撃を躱した。アルバートが体勢を崩したその瞬間を狙って攻撃が放たれる。とてもではないが避けれないし、神聖魔法も間に合わない。
(避けれない――!!)
カイルの持つ槍の穂先が目の前に繰り出されるまで、一瞬の間さえなかった。アルバートは思わず目を瞑る。
しかし覚悟していた痛みはいつまで経っても訪れなかった。おそるおそる目を開けると、目の前にカイルの顔が映った。槍はアルバートの首のすぐ傍を掠めてうっすらと赤い線が出来上がると同時に、茶色の髪を散らしていた。呆然とした表情を浮かべるアルバートを見て、カイルは笑った。
「神龍の愛し子を殺さねーよ。ちょっと頭冷やせ」
その瞬間、後頭部に衝撃が走った。切られたわけではない、カイルの持つ長槍の柄で殴られたのだ。
全身の力が抜け落ちていくような感覚を覚えた。次第に目の前がぼんやりと白く霞み、自分の意識が遠のいていく。視界が明滅し、次第に意識を保つのが難しくなっていく。
「ティーア……」
せめて護らなければと、霞んでいく思考でそう思った。だから、マナを収束させ、凝縮する。何人も破れないような完璧な障壁を構成し、ティーアを覆う箱を作る。
立方体が出来上がり、ティーアを守るように包み込むと、アルバートはその場に崩れ落ち、意識を失った。
静まり返った広間に、凜とした声が響き渡る。
「リオル・ルーウェンは言いました。雪華の髪飾りと引き換えにティーア・アンクローゼの眷属化を解くと。俺は今からそれを行います。これは俺の……アルバート・グランディアが自らの意志によって魔族と通じたことによる罪であり、ティーアが元に戻ったのなら、巻き込まれた彼女に罪はありません」
アルバートの瞳は揺るぎなく、真っ直ぐにハデスを見据えている。その眼差しから決して目を逸らそうとはしない。彼の決意を示すように、瑠璃色の瞳が輝くのを見て、ハデスは目を細めた。
「本気で言っているのですか」
「はい」
アルバートははっきりと答える。
そして髪に挿さったままになっていた雪華の髪飾りを引き抜くと、それを頭上高く掲げた。
その動作を見て、入口で静観していたカイルが鋭い声で叫んだ。それとほぼ同時にリオルを呼ぶアルバートの声が木霊する。
「ダメだ!アルを止めろっ!!」
「リオル、出てこい、取引だ!!」
背負っていた槍を抜き放つと、アルバートに向かって駆け出す。一気に間合いを詰めると、持っていた槍を閃光のように閃かせる。槍はアルバートの掲げた手を狙った。
アルバートは神聖魔法で障壁を形成してカイルの槍を弾く。カイルの槍術は重さがあった。その一撃一撃は重い鈍器で思いっきり殴られているようで、生半可な障壁では貫かれてしまいそうな勢いだ。
カイルは続けざまに槍を繰り出し、障壁の脆いところを見つけては的確に槍を繰り出していく。
しばらく攻防が続いたのち、その拮抗が崩れたのは突然のことだった。
障壁の隙間を縫うように槍先をアルバートの身体目掛けて突き出したのだ。
対人戦闘における経験も能力もカイルが圧倒していた。一瞬の隙でも与えられればアルバートには防御手段は残されていなかった。
「くっ」
咄嗟に身体を捻ってカイルの攻撃を躱した。アルバートが体勢を崩したその瞬間を狙って攻撃が放たれる。とてもではないが避けれないし、神聖魔法も間に合わない。
(避けれない――!!)
カイルの持つ槍の穂先が目の前に繰り出されるまで、一瞬の間さえなかった。アルバートは思わず目を瞑る。
しかし覚悟していた痛みはいつまで経っても訪れなかった。おそるおそる目を開けると、目の前にカイルの顔が映った。槍はアルバートの首のすぐ傍を掠めてうっすらと赤い線が出来上がると同時に、茶色の髪を散らしていた。呆然とした表情を浮かべるアルバートを見て、カイルは笑った。
「神龍の愛し子を殺さねーよ。ちょっと頭冷やせ」
その瞬間、後頭部に衝撃が走った。切られたわけではない、カイルの持つ長槍の柄で殴られたのだ。
全身の力が抜け落ちていくような感覚を覚えた。次第に目の前がぼんやりと白く霞み、自分の意識が遠のいていく。視界が明滅し、次第に意識を保つのが難しくなっていく。
「ティーア……」
せめて護らなければと、霞んでいく思考でそう思った。だから、マナを収束させ、凝縮する。何人も破れないような完璧な障壁を構成し、ティーアを覆う箱を作る。
立方体が出来上がり、ティーアを守るように包み込むと、アルバートはその場に崩れ落ち、意識を失った。
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