神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

文字の大きさ
7 / 106
第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

07.神聖魔法1

しおりを挟む
「アル、奉納が終わったら、神聖魔法の修行を始めましょう」

 ハデスがアルバートにそう言ったのは、七日かけて行われた祈りの儀が終わり、アルバートも神官としての生活に慣れてきたある日のことだった。
 祈りの間でマナを神龍に奉納していたアルバートは、神聖魔法と聞いて思わず目を輝かせる。
 それは彼の日課であったが、彼の集中の乱れを敏感に察知して、空気中を漂っていた光の粒子は瞬く間に空気中に霧散してしまい、跡形もなくなった。

「はい!」

「とても良い返事です。ですが、光の粒子が散ってしまいましたね。いかなる時も集中を絶やさないようにしましょうね」

「あ……」

 アルバートはしまった、という顔をして俯く。

「ふふ、大丈夫ですよ。一緒にやりましょう」

 ハデスはそう言って微笑むと、アルバートの横に膝をついた。
 アルバートもそれに習い、再び祈りを捧げる。しかし、アルバートの手からはいつまで経っても光の粒子は放出されない。

「アルは心ここにあらずといった感じでしょうか」

「すみません……」

 ハデスはそう言って苦笑すると、優しくその頭を撫でる。
 ハデスの放出する光の粒子は、その間もずっと消えることなく空間をふわふわと漂っている。

「謝ることはありません。これも練習していきましょう」

 アルバートが頷いたのを見てハデスは微笑むと、彼の傍に膝をつく。

「さあ、再開しましょう」

 そう言うと、彼は自身の魔力を放出する。
 その量は尋常ではなく、立ち上る光の粒子は目を奪われるほどに綺麗だった。

「すごい……」

 光は決して混じり合うこともなく美しい輝きを放っていて、アルバートは自身の祈りも忘れて思わず感嘆の声を上げる。
 その魔力量と、それをコントロールする技量は、アルバートの想像を絶するものだった。
 しかし、ハデスはその賞賛に謙遜するように首を振ると、口を開く。

「いえ、まだまだです」

「え?」

 アルバートは驚いて声を上げる。

「神聖魔法は扱いが難しく、制御も難しいのです。マナの光で絵を描けるアルなら、私などよりずっとうまく使いこなせるようになります」

「本当ですか?」

「ええ」

 そう言って微笑むハデスを見て、彼は本当にそう思っているのだと確信する。

「俺……もっと頑張ります」
「ええ、私も応援していますよ」

 やがて光はすべて神像に取り込まれ、室内は薄暗い空間に戻っていく。
 ハデスは光の粒子がなくなったのを見届けると、アルバートを立ち上がらせた。

「では、神聖魔法の修行を始めましょう。今日は天気も良いですし、神殿の外でやりましょうか」
「え……?」

 ハデスの提案が意外で、アルバートは大きく目を見開いた。

 神龍の愛し子はその力の重要性から神殿の外に出ることが固く禁じられている。
 神殿には強力な結界が張られていて、それが悪しきものから神龍の愛し子を守っているのだと聞いていた。

 アルバートも過去に何度か神殿の外に抜け出そうとしたことがあったが、その全てが神官たちに止められて失敗に終わっていた。

「いいんですか?」

「ええ、今から向かうところは結界を張ってあるので安全ですよ」

 ハデスはそう言って微笑む。
 外とはいっても作られた箱庭であることに落胆を覚えるが、それでもいつもと違う場所には心が躍るのを感じた。

「神聖魔法の源となるマナは自然界に存在する神秘の力を凝縮したものです。もちろん、神殿内でも神秘の力をマナに変換することはできますが、自然溢れる環境の中の方がより多く取り込むことができるのです。神聖魔法はマナを多く消費するので、神殿の中より外の方が良いのです」

 ハデスはそう言って微笑むと、アルバートの手を引いて神殿の外に出て、森の奥に向かって歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...