神龍の愛し子と呼ばれた少年の最後の神聖魔法

榛玻璃

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第一部 神龍の愛し子と神聖魔法

18.リオル1

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 それからさらに歩くと、開けた場所に出た。
 そこは荒れた大地だった。草木は枯れ果て、地面はひび割れており、生き物の気配が全く感じられない。
 まるで廃墟のような景色の真ん中には黒い渦が浮かんでいる。
 その渦の奥には見たことのない街並みが広がっていて、それが異界への門であることが見て取れた。

 ここから先に行ってはいけない。
 アルバートの頭がそう警鐘を鳴らす。
 それはティーアも同じだったようで、その足は一歩も前に進まない。

「リオルさん……ここは?」

 ティーアが問いかけるように名前を呼ぶと、ようやく彼はこちらを振り返る。
 その顔には笑みが浮かんでいた。
 先ほどカシミアの花を見つめていたのとはまったく異なる雰囲気は、どこか狂気的なものを感じさせる。
 今目の前に立つリオルは、まるで別人だった。
 彼は歪んだ笑みを浮かべる。
 それを見て、アルバート達は自分の背筋が凍るのを感じた。

「さ、着いたよ。この中に入って」

 リオルはそう言って、黒い渦を指さす。

「ここはどこですか?」

 ティーアは警戒を強めながらもう一度問いかけるが、リオルは笑みを深めるだけで答えない。
 代わりに、アルバートが別の質問を投げかける。
 ティーアの服の裾を強く握りながら、リオルを睨みつけながら。

「……リオルさんは魔族?」

 アルバートの言葉に、リオルは嬉しそうに目を細めた。

「へえ、どうしてそう思うんだい?」

「金色の瞳は魔族特有の証だって聞いたから……」

 ティーアは驚いてリオルの目を見る。しかし、ティーアの目にはリオルが切れ長の赤の瞳に映っていた。

「アル、どういうこと?リオルさんの目は赤いわ」

 ティーアの反応にリオルはクスクスと笑う。その声は、まるで無邪気な子供のようだった。

「赤? 違うよ、リオルさんの目は金色だよ」

 アルバートの言葉にリオルはふっと微笑んだ。それは肯定とも否定とも取れる笑みだった。

「正解。よくわかったね。ずっと僕を睨んでいたのは、そのことを言い出せなかったからかな? アルバート君……いや、アルの瞳には、僕が金の瞳をしているように見えるんだ」

 リオルは冷たく笑うと、一度目を閉じ、すぐに開く。
 すると赤かった瞳が金色に変わった。

「……!?」

 その変化はティーアにも視認できたようだった。
 彼女は驚いて目を見開き、リオルを凝視する。
 その反応が面白かったのか、リオルは声を立てて笑った。

「あはは、驚いた?これが僕の本当の姿だよ」

 そう言って笑う彼はやはり人形のような笑顔だ。
 しかしその瞳は金色で、魔族特有のそれだった。
 ティーアはその言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りついたような感覚に襲われた。

「そんな……」

 信じられないといった様子で呟く彼女にリオルは続ける。

「これは姿を変える魔法でね、僕のオリジナルなんだ。びっくりしたでしょ? いつ気づくかなって思って、思わず道草までしちゃった」

 無邪気な笑顔を浮かべて話すリオルの声は場違いなほどに明るい。

「そんな……私たちを騙してたの!?」

 ティーアはアルバートを背中に隠し、警戒の眼差しを向けながら叫んだ。

「ティーア、君に用はないんだ。僕が欲しいのはアル君。黙っていてくれないかな?」

 リオルはそう言うと、ティーアの細い首に手を伸ばした。そしてそのまま彼女の首を片手で掴む。

「うぁ……」

 気道が塞がれ、ティーアは苦しそうな呻き声を漏らした。
 それでも彼女は抵抗しようと手に力を込め、魔族の腕を掴んだ。
 爪を立てるが、魔族の皮膚には傷一つつけられない。
 ティーアはそのまま持ち上げられ、彼女の首を締め付けるように魔族は手に力を込める。

「う……ぐ」

 ティーアは苦しそうな声を上げると、必死に足をばたつかせた。
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