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第二部 雪華の祈り
35.宿命の少女
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ハデスに連れられ、アルバートは来賓用の客室に向かう。皇帝との謁見は彼自身初めてのことだった。廊下を抜け、扉の前に立つ足取りには緊張が感じられる。
ハデスが前に立ち、ノックをする。するとすぐに入室が許可されて扉が開かれた。
「失礼します」
ハデスに倣いアルバートも室内へと入る。そこは開放的な空間で、大きな窓からは雪の積もった庭園が見渡せた。部屋の中央に置かれた長椅子に腰かけていた皇帝は、入室してきた二人に向かって両手を広げて立ち上がった。
「雪華の祈り、ご苦労であった」
「お元気そうで何よりです、陛下」
「ああ。今日はわざわざありがとう」
ハデスの挨拶に皇帝が頷く。そして皇帝はアルバートの方を向くと、膝を曲げ、目の高さを合わせて彼の頭を撫でた。
「えと……はじめまして」
おずおずと近付いたアルバートは軽く頭を下げる。
「なるほど、これは確かにきれいな青眼だな。ロゼッタが入れ込むのもわかる気がする」
そういって皇帝は目を細めると、じっくりとアルバートの透き通る瞳を覗き込んだ。
「えっと……?」
突然のことにアルバートは戸惑った声を上げる。まっすぐに見つめてくる皇帝と目が合い、気恥ずかしさを覚えるが、不敬を咎められることを恐れて目を逸らせることもできなかった。アルバートは行き場を無くして視線を泳がせた。
とそこで後ろから制止の声が上がった。
「お父様!入れ込むって何仰っているのよ!!」
少女の怒鳴り声が室内に響き渡る。見ると部屋の入口に、小さな少女が立っていた。
長い金髪と翠眼の眉目秀麗な少女だ。年はアルバートと同じくらいのようだが、その容姿には気品が感じられ、年齢より大人びて見えた。
「おお、ロゼッタ。彼がアルバート・グランディアだ」
皇帝は顔をほころばせると、ロゼッタを手招きする。彼女はアルバートの前に向き直ると、優雅に挨拶をして見せた。その美しい所作にアルバートは一瞬目を奪われてしまう。
「初めまして。ロゼッタ・ファネル・ヴィゼリアスよ」
「お初にお目にかかります、ロゼッタ王女殿下」
ハデスが恭しく一礼する。我に返ったアルバートは、慌ててハデスに倣って頭を下げた。
「アルバート、顔を上げて、目を見せて」
言われるままに顔を上げると、眼前に少女の整った顔立ちが飛び込んできた。
「!?」
驚いて目を見開く。少女の宝石のような緑の瞳はアルバートを捉え続ける。
「あ、あの……?」
「やっぱり話には聞いていたけど、本当に朝焼けみたいな目の色ね。きれいだわ」
アルバートの瑠璃色の瞳は彼を特徴づける筆頭のものであるため、誰もが好奇の目を向けてくるのを彼自身が良く理解していた。彼の瑠璃色の瞳はよく見ると、若干の朱色が混ざりあってまるで朝焼けの空のような色にも見えるのだ。この朱色は、同じ神龍の愛し子であるハデスには無く、アルバート独自の特徴となっていた。
ロゼッタに見つめられてアルバートはその瞳を所在なさげに彷徨わせる。
彼も年頃の少年である。年の近い少女に見詰められたら、気恥ずかしい感情が込み上がってくる。アルバートは頬を赤らめて視線を逸らした。
「ロゼッタ、アルバートが困っておる。そのくらいにしてやれ」
「あっごめんなさい」
皇帝に窘められ、ロゼッタは慌てて数歩下がる。アルバートはほっと胸をなでおろすが、頬は赤いままだ。
「アルバートよ。明日ロゼッタにこのあたりを案内してやってはくれぬか」
「え……私が、でしょうか」
伺うように皇帝を見るも、彼も大きく頷いている。
何故自分なのかがわからず、アルバートは困惑してハデスを見るが、ハデスは優しく微笑んで、そして頷いた。
「ご案内して差し上げなさい、アル」
「でも俺、この辺りのことを良く知りません」
「知らないのなら、二人で探検すれば良いのです。そうでしょう、ロゼッタ様?」
「ええ、もちろんよ。私はあなたとゆっくり話がしてみたいわ」
ロゼッタは首肯して、期待に満ちた表情でアルバートを見つめてくる。
「わかりました」
そんな目で見つめられたら、断るわけにいかない。
ハデスの後押しもあり、アルバートは頷いた。ロゼッタがぱっと顔を輝かせる。
「ありがとう! よろしくね、アルバート。私もアルって呼んでいい?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
屈託のない笑顔で手を差し出され、アルバートも思わず握り返す。その反応にロゼッタは嬉しそうに笑った。
「お二人とも仲睦まじいようで何よりです。では、我々は神事の片づけがありますゆえ、これにて失礼いたします」
二人の様子を見て、ハデスは満足そうに頷くと、ハデスは恭しく一礼すると立ち上がり、部屋を後にする。アルバートもハデスに倣って彼の後ろをついていった。
「アル、また明日ね!」
退室する背中にロゼッタの声がかかる。振り返ると、彼女は満面の笑みを浮かべていた。
ハデスが前に立ち、ノックをする。するとすぐに入室が許可されて扉が開かれた。
「失礼します」
ハデスに倣いアルバートも室内へと入る。そこは開放的な空間で、大きな窓からは雪の積もった庭園が見渡せた。部屋の中央に置かれた長椅子に腰かけていた皇帝は、入室してきた二人に向かって両手を広げて立ち上がった。
「雪華の祈り、ご苦労であった」
「お元気そうで何よりです、陛下」
「ああ。今日はわざわざありがとう」
ハデスの挨拶に皇帝が頷く。そして皇帝はアルバートの方を向くと、膝を曲げ、目の高さを合わせて彼の頭を撫でた。
「えと……はじめまして」
おずおずと近付いたアルバートは軽く頭を下げる。
「なるほど、これは確かにきれいな青眼だな。ロゼッタが入れ込むのもわかる気がする」
そういって皇帝は目を細めると、じっくりとアルバートの透き通る瞳を覗き込んだ。
「えっと……?」
突然のことにアルバートは戸惑った声を上げる。まっすぐに見つめてくる皇帝と目が合い、気恥ずかしさを覚えるが、不敬を咎められることを恐れて目を逸らせることもできなかった。アルバートは行き場を無くして視線を泳がせた。
とそこで後ろから制止の声が上がった。
「お父様!入れ込むって何仰っているのよ!!」
少女の怒鳴り声が室内に響き渡る。見ると部屋の入口に、小さな少女が立っていた。
長い金髪と翠眼の眉目秀麗な少女だ。年はアルバートと同じくらいのようだが、その容姿には気品が感じられ、年齢より大人びて見えた。
「おお、ロゼッタ。彼がアルバート・グランディアだ」
皇帝は顔をほころばせると、ロゼッタを手招きする。彼女はアルバートの前に向き直ると、優雅に挨拶をして見せた。その美しい所作にアルバートは一瞬目を奪われてしまう。
「初めまして。ロゼッタ・ファネル・ヴィゼリアスよ」
「お初にお目にかかります、ロゼッタ王女殿下」
ハデスが恭しく一礼する。我に返ったアルバートは、慌ててハデスに倣って頭を下げた。
「アルバート、顔を上げて、目を見せて」
言われるままに顔を上げると、眼前に少女の整った顔立ちが飛び込んできた。
「!?」
驚いて目を見開く。少女の宝石のような緑の瞳はアルバートを捉え続ける。
「あ、あの……?」
「やっぱり話には聞いていたけど、本当に朝焼けみたいな目の色ね。きれいだわ」
アルバートの瑠璃色の瞳は彼を特徴づける筆頭のものであるため、誰もが好奇の目を向けてくるのを彼自身が良く理解していた。彼の瑠璃色の瞳はよく見ると、若干の朱色が混ざりあってまるで朝焼けの空のような色にも見えるのだ。この朱色は、同じ神龍の愛し子であるハデスには無く、アルバート独自の特徴となっていた。
ロゼッタに見つめられてアルバートはその瞳を所在なさげに彷徨わせる。
彼も年頃の少年である。年の近い少女に見詰められたら、気恥ずかしい感情が込み上がってくる。アルバートは頬を赤らめて視線を逸らした。
「ロゼッタ、アルバートが困っておる。そのくらいにしてやれ」
「あっごめんなさい」
皇帝に窘められ、ロゼッタは慌てて数歩下がる。アルバートはほっと胸をなでおろすが、頬は赤いままだ。
「アルバートよ。明日ロゼッタにこのあたりを案内してやってはくれぬか」
「え……私が、でしょうか」
伺うように皇帝を見るも、彼も大きく頷いている。
何故自分なのかがわからず、アルバートは困惑してハデスを見るが、ハデスは優しく微笑んで、そして頷いた。
「ご案内して差し上げなさい、アル」
「でも俺、この辺りのことを良く知りません」
「知らないのなら、二人で探検すれば良いのです。そうでしょう、ロゼッタ様?」
「ええ、もちろんよ。私はあなたとゆっくり話がしてみたいわ」
ロゼッタは首肯して、期待に満ちた表情でアルバートを見つめてくる。
「わかりました」
そんな目で見つめられたら、断るわけにいかない。
ハデスの後押しもあり、アルバートは頷いた。ロゼッタがぱっと顔を輝かせる。
「ありがとう! よろしくね、アルバート。私もアルって呼んでいい?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
屈託のない笑顔で手を差し出され、アルバートも思わず握り返す。その反応にロゼッタは嬉しそうに笑った。
「お二人とも仲睦まじいようで何よりです。では、我々は神事の片づけがありますゆえ、これにて失礼いたします」
二人の様子を見て、ハデスは満足そうに頷くと、ハデスは恭しく一礼すると立ち上がり、部屋を後にする。アルバートもハデスに倣って彼の後ろをついていった。
「アル、また明日ね!」
退室する背中にロゼッタの声がかかる。振り返ると、彼女は満面の笑みを浮かべていた。
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