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第二部 雪華の祈り
57.恋焦がれるほどの陶酔を1
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「ディアーナ様、待った」
転移門から響いた声に、聖印に触れようとしていたディアーナの指先がピタリと止まる。不満げな表情を浮かべた彼女の背には、一人の男が立っていた。
長い銀髪に、切れ長の金の瞳をした美丈夫――その姿はアルバートも知る人物だった。リオル・ルーウェンだ。
「何の用だ、リオル。なぜ止める」
「そんながつがつ行っちゃダメなんだよ、人間はね。結構無理に言わせたでしょ? こういうのはもっと恋焦がれるほどに陶酔するくらい焦らしてあげないと。恋愛と同じだよ」
「フンッ人間の情事など我は知らぬし興味もないわ。お前こそ物事を色恋に例えるのは止めたらどうだ? それがその右腕の傷の原因であろう?」
「あはは、それ言われちゃうと返事に困るなぁ」
リオルは笑って流す。その彼の右腕は人の手とは思えないほど酷い火傷の痕で黒くなっていた。リオルはアルバートの前まで足を進めると、彼を見下ろした。
「やあ、アル。三年ぶりくらいかな? 少し見ない間に大きくなったね」
リオルはまるで久しぶりに会う友人か知人のように人懐っこい声で話しかけてくる。アルバートは一瞬、怯えるように身を震わせるが、すぐに睨むように彼を見上げた。それと共に空気中に粒子状となった金色の光を浮かび上がらせる。
「神聖魔法『浄――」
「それはダメ」
呪文を唱える途中で、リオルはアルバートの背後に回り込むと、彼の首に腕を回して首を締め上げてきた。そして猿轡の代わりに自らの人差し指を彼の口に差し入れる。
「っ、ぐっ……」
喋っている途中でのその妨害に、魔法は中止させられ、苦しげな呻き声がアルバートの口からこぼれた。
「それ放たれると龍のディアーナ様はともかく、僕は死んじゃうからね、禁止。わかった?」
アルバートはリオルを睨むと、口の中に突っ込まれた指に歯を立てる。しかし、彼の指は魔法で強化されているのか鋼のように固く、歯が食い込むことを許さなかった。
「こーら、犬じゃないんだから、人の指噛まない」
リオルはそう言いながら、アルバートの口の中で指先を転がして遊びだす。
「んーっ!! んぐーっ!!」
「可愛いけどダメだよ。ふふ、万能と思われる神聖魔法の以外な弱点、びっくりしたでしょ。詠唱による発動形式を取る魔法は、喋れなかったら詠唱が完了できなくて発動できないんだよね」
アルバートが苦悶の表情を浮かべる。指を吐き出そうと身を捩るが、首を固定されているためされるがままになってしまう。口の中を他人の指でかき回されるなど、気持ちが悪いに決まっている。だがリオルはそんな反応を楽しむように、さらに指を奥へと侵入させる。異物の存在に反射的に嘔吐いた。
「ふふ……苦しい?」
アルバートは涙目になってリオルを睨みつける。だが彼はそんな視線を気にする様子もなく、むしろ嬉しそうに微笑んだ。
そして、彼の耳元で囁くように告げてくる。
「でもさ、数年前の君が放った浄化で僕はもっと痛くて苦しい思いをしたんだから、これくらい我慢しないとね。抵抗するならもっと苦しくなるようにするだけだから、大人しくしたほうが身のためだと思うよ。苦しむのは君じゃなくて、そこの彼かもしれないわけだしね」
「――っ!」
リオルは近くで倒れているアレスタの方を見て、アルバートにも見えるように彼の首を動かした。力無く横たわるアレスタの姿が、かつて守れなかった橙色の髪の少女と重なり、アルバートの表情が凍り付いた。みるみる身体が弛緩し、抗っていた意思が薄れていくかのように脱力していく。
その間もリオルは彼の舌の上で自らの指の腹を這わせるが、もう反抗されることはなかった。
そんな様子を見て、ディアーナは呆れた様子で呟く。
「……お前の脅しも存外効果的なのだな」
「ふふ、これが魔王軍での僕の本職だからね。覚えておくといいよ」
「ふん、生意気なやつめ。それで、この黒龍を待たせてお前がやりたかったことはそんなくだらん遊戯ではないのであろう?」
「うん、そうだね。そろそろ本題に入ろう」
リオルはアルバートの口から指を引き抜くと、彼を抱き抱えたまま地面に胡座をかき、膝の上にアルバートの身体を乗せ、腰に腕を回して固定した。
転移門から響いた声に、聖印に触れようとしていたディアーナの指先がピタリと止まる。不満げな表情を浮かべた彼女の背には、一人の男が立っていた。
長い銀髪に、切れ長の金の瞳をした美丈夫――その姿はアルバートも知る人物だった。リオル・ルーウェンだ。
「何の用だ、リオル。なぜ止める」
「そんながつがつ行っちゃダメなんだよ、人間はね。結構無理に言わせたでしょ? こういうのはもっと恋焦がれるほどに陶酔するくらい焦らしてあげないと。恋愛と同じだよ」
「フンッ人間の情事など我は知らぬし興味もないわ。お前こそ物事を色恋に例えるのは止めたらどうだ? それがその右腕の傷の原因であろう?」
「あはは、それ言われちゃうと返事に困るなぁ」
リオルは笑って流す。その彼の右腕は人の手とは思えないほど酷い火傷の痕で黒くなっていた。リオルはアルバートの前まで足を進めると、彼を見下ろした。
「やあ、アル。三年ぶりくらいかな? 少し見ない間に大きくなったね」
リオルはまるで久しぶりに会う友人か知人のように人懐っこい声で話しかけてくる。アルバートは一瞬、怯えるように身を震わせるが、すぐに睨むように彼を見上げた。それと共に空気中に粒子状となった金色の光を浮かび上がらせる。
「神聖魔法『浄――」
「それはダメ」
呪文を唱える途中で、リオルはアルバートの背後に回り込むと、彼の首に腕を回して首を締め上げてきた。そして猿轡の代わりに自らの人差し指を彼の口に差し入れる。
「っ、ぐっ……」
喋っている途中でのその妨害に、魔法は中止させられ、苦しげな呻き声がアルバートの口からこぼれた。
「それ放たれると龍のディアーナ様はともかく、僕は死んじゃうからね、禁止。わかった?」
アルバートはリオルを睨むと、口の中に突っ込まれた指に歯を立てる。しかし、彼の指は魔法で強化されているのか鋼のように固く、歯が食い込むことを許さなかった。
「こーら、犬じゃないんだから、人の指噛まない」
リオルはそう言いながら、アルバートの口の中で指先を転がして遊びだす。
「んーっ!! んぐーっ!!」
「可愛いけどダメだよ。ふふ、万能と思われる神聖魔法の以外な弱点、びっくりしたでしょ。詠唱による発動形式を取る魔法は、喋れなかったら詠唱が完了できなくて発動できないんだよね」
アルバートが苦悶の表情を浮かべる。指を吐き出そうと身を捩るが、首を固定されているためされるがままになってしまう。口の中を他人の指でかき回されるなど、気持ちが悪いに決まっている。だがリオルはそんな反応を楽しむように、さらに指を奥へと侵入させる。異物の存在に反射的に嘔吐いた。
「ふふ……苦しい?」
アルバートは涙目になってリオルを睨みつける。だが彼はそんな視線を気にする様子もなく、むしろ嬉しそうに微笑んだ。
そして、彼の耳元で囁くように告げてくる。
「でもさ、数年前の君が放った浄化で僕はもっと痛くて苦しい思いをしたんだから、これくらい我慢しないとね。抵抗するならもっと苦しくなるようにするだけだから、大人しくしたほうが身のためだと思うよ。苦しむのは君じゃなくて、そこの彼かもしれないわけだしね」
「――っ!」
リオルは近くで倒れているアレスタの方を見て、アルバートにも見えるように彼の首を動かした。力無く横たわるアレスタの姿が、かつて守れなかった橙色の髪の少女と重なり、アルバートの表情が凍り付いた。みるみる身体が弛緩し、抗っていた意思が薄れていくかのように脱力していく。
その間もリオルは彼の舌の上で自らの指の腹を這わせるが、もう反抗されることはなかった。
そんな様子を見て、ディアーナは呆れた様子で呟く。
「……お前の脅しも存外効果的なのだな」
「ふふ、これが魔王軍での僕の本職だからね。覚えておくといいよ」
「ふん、生意気なやつめ。それで、この黒龍を待たせてお前がやりたかったことはそんなくだらん遊戯ではないのであろう?」
「うん、そうだね。そろそろ本題に入ろう」
リオルはアルバートの口から指を引き抜くと、彼を抱き抱えたまま地面に胡座をかき、膝の上にアルバートの身体を乗せ、腰に腕を回して固定した。
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