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10.祝福の光

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一条奈々美が部屋を出るとウィリアムは、仏像が話す珍事にも全く動じていないエリザベスの向かいの椅子に座ると真剣な顔をした。

「さて、二人っきりだ。エリちゃん、頼みがあるんだよ。」

「あら?私なんかに?」

「うん。実はもう私は限界でね。是非、君の力を借りたいんだ。」

「力?何の事?」

(私の何かを知っているとでも?)

「うん。私も正体を明かしたから言うが、君のそのエネルギーでコイツらを有るべき所に帰すのを手伝ってくれないか?」

「何の事?言ってる意味がわからないわ。」

ウィリアムは首を振り優しい目でエリザベスを見つめた。

「私達には君の輝きが見えるからね。人混みの中でもハッキリと輝いていた。街で君を初めて見た時は、天からの助けだと確信したよ。残念だが、私にはもう彼らを送る力は残って無いんだ。」

エリザベスは戸惑った。まさか自分の聖女としての力がバレていたなんて。

「見えるって、、じゃあ私がここの人間じゃない事も?」

「うん。君はエネルギーの塊だ。ここには、そのエネルギーは存在しないからね。」

「それじゃ、私の事は初めからわかっていたんですね。お人が悪い。」

ウィリアムは、すまなさそうに話を続けた。

「どうか許してくれ。
残念ながら私達の体質ではね、ここでは長く肉体が持たなかったようだ。それで仕方が無く仏像に魂を宿したが動けない。それで連絡が途絶えた彼らを私が探しに来たんだ。
どうか彼らを助けてくれないかい?」

(どうしよう。この世界に干渉はしてはいけない。直ぐにここを立ち去るべき?でも、彼らもここの者では無いわ。)

迷ったが状況からして突っぱねる理由も見つからなかった。

(この力は人の為に使うもの。そうだわ。私も彼に頼んでみよう。)

「ウィリアムさんが私の力で出来ると言うのなら可能なんでしょう。ただ、私もここに来た目的があります。私にもご協力頂けますか?」

「ありがとう!私が出来る事なら何でも協力するよ。君に心より感謝を捧げる。」

「感謝は成功してからにして。それでどうすれば良いの?」

「君のエネルギーを私に分けてくれ。そうすれば私が彼らを送る事が出来る。」

「わかったわ。手を貸して。」

エリザベスがウィリアムの手を握り目を閉じた。息を大きく吸うと普段は大地や植物、平穏を願う時の様に祈りを捧げた。すると温かいエネルギーがウィリアムに流れていった。

「ああっ、こんなに美しいエネルギーは久しぶりだ。故郷に帰ったようだ。」

ウィリアムは、高揚し銀髪はエネルギーを受け取ると金髪に変化している。
そのエネルギーは、その場にある仏像達にも影響を施した。

「故郷の光だぞ!」

「女神に感謝を!」

「感謝を!!」

歓喜の声が溢れ部屋の中が花の香りに包まれた。

「ありがとう!この香りは彼らからの細やかな贈り物だよ。楽しんでくれ。」

「なんて良い香り。お花畑にいるみたいだわ。」

「これからこの香りを感じた時に我々の事を思い出してくれれば嬉しいよ。さあ、早速だが一同!帰還の時だ。」

ウィリアムが手を空中にかざすと緑の渦が現れた。棚にある仏像を一体づつ手に取り撫ぜると仏像から出てきた白い煙は緑の渦に吸い込まれ消えていった。
最後の一体を送った時、ウィリアムが膝をおり手をついて倒れるのを何とか耐えた。

「ウィリアムさん!大丈夫?」

駆け寄ると顔色が悪く彼の髪はシルバーに変化している。

「みっともない所を見せてしまったね。どうやらエネルギーを使いすぎたようだ。」

その様子にエリザベスが急いでウィリアムの手を握りしめたがウィリアムは手を離した。

「エリちゃんは無理はしないでくれ。」

「私は平気です。さあ、手を貸して下さい。」

グイっと手を引くと祈りを捧げてエネルギーを流した。
血の気の無い顔はただの疲れた顔になり髪も所々、金髪に変化した。

「本当にエリちゃんは凄いね。ありがとう。
今日は、もう休むとするよ。残り2体だ。見つけるまで頑張らないといけないからね。」

「明日から毎日、祝福を贈るわ。」

「祝福と言うんだね。君との約束が済むまで消える事は出来ないからありがたいよ。」

そう言って立ち上がる時にふらついた。

「ウィリアムさん、私の肩を使って。」

そこへ風呂から上がった一条奈々美が部屋に入って来た。

「フゥー、やっと落ち着いた。あら、花の香りが凄いわね。どうしたのこれ?」

「奈々美さん、丁度良いところへ。手を貸して下さい。」

なるべく仏像を見ないように部屋に入って来た一条奈々美だったが、ウィリアムの顔色が視界に入ると驚き駆け寄った。

「どうしたの?大丈夫?」

「過労だ。すまないなが部屋まで肩を貸してくれ。」

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