近江一族物語1『融合』

七々虹海

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 このまま晴空は、自分が死んだ原因が思い出せないままだと成仏出来ないのかもしれない。こうなったからには、成仏してもらうのが晴空にとって一番良い道なんだろう。
 それには、男のセフレだか恋人がいた事を晴空に話さなければならない。さっきの話を総合して考えると、凪と似てる人と会ったと思わせられてた晴空は、凪に似てる人=凪を抱いてる感覚だったのかもしれない。

 しかし幻覚を見せられていたとはいえ、自分にセフレだか彼氏がいたと知るのは、たかだか16歳の晴空にとってどうなんだ?
 それから、もう一人。こいつが問題。せっかく霊体とはいえ晴空に再会出来た凪が、また晴空との別れの経験をしたらどうなってしまうのか。またあの脱け殻みたいな凪に逆戻りしてしまうんだろうか。ハッキリ聞きたいけど、怖くて聞けない自分がいる。
 晴空のおかげで生き生きした凪が見られたのに、また俺と二人の部屋で死んだ目になってる凪を見たら…自分が役不足なのを思い知らされる。結局自分を守りたいのかと言われればそれまでかもしれないが、誰だって自分は可愛い。あの本家から抜け出して自由になった今、俺だって自分を大事に、やっと自由に自分の人生を歩ける気持ちになれたんだ。

 少し晴空は霊体のまま側に置いといて、様子見ってのも有りかもしれない。

「貴嶺さん?どうしたの?」
「ん。ちょっとな、大人の考え事だ」
「この先どうするかって事?晴空は霊のまま居ていいの?それは危ない事なの?」

 案外鋭く容赦ない現実を自分にも突きつけるんだな、凪。

「正直なところ。俺も分からない。ただずっと晴空が霊のままさまよい続けるのは、もちろん良い事ではないよな。しばらし近くにいて、様子を見ながら考えようぜ」
 
 晴空の性格からして悪霊になる可能性、凪も殺そう、道連れにしようって考えはないだろう。今は立ち直ったように見える凪の為にも、現状維持で晴空にはいてもらおう。頼まなくても凪の近くにいるだろうしな。

(もう俺頭使いすぎてねみぃわ)
「あぁ、そうだな。凪の寝室はそっちだから」
「うん、お休みなさい」
(貴嶺お休み~)

 晴空はふわふわと凪についていった。俺も体を休めよう…。


 待て、俺のベッドはさっき凪を抱いたベッドでまだ凪の匂いが、汗が残ってるかもしれない。そんな所で眠れるのかと自問自答を繰り返し、俺はソファーに掛け布団を持ってきて寝ることにした。自分の家でなんだこの状況は。

 さて、寝るか……待てよ、霊体の晴空が凪にエッチないたずらをしてたら……眠いとはいえ、久しぶりの再会なわけだし、今までの気持ちが爆発して昂ってしまう可能性も……いやいやいやいや、霊体のまま何か出来るほどの力はないだろう。
 本当にそうか?仮にも一族の血が流れてたんだ。霊体になってから力が目覚め…ないないない。ないだろう。

 自問自答を繰り返す負のループに陥ってしまった俺は、鳥の囀ずりが聞こえた頃にようやく意識を失った。




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