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(凪、海、見たくないか?)
お昼ご飯を食べて、見たいテレビもないし、何をして過ごそうかなと考えていた僕に晴空が話しかけてきた。
今ではすっかり顔色も良くなって、体重も戻った僕は、晴空と過ごすぬるま湯みたいな生活が心地好くて、学校のこととか考えるのは来月でいいかな、なんて後回しにしてた。
少しだけなら、外に出て買い物したりする事も出来るようになった。少しずつ、少しずつ、同世代の人と同じようになれたらいいかな。
「海?」
(うん。匂いとか潮風とか感じられないけどさ、やっばり好きなんだよね)
晴空は崖から海に向かって飛び降りたのに、海に行くの嫌じゃないのかな…。晴空の記憶は相変わらず戻らない。飛び降りた時の記憶もないから、海が好きなままなのかもしれない。僕は…、僕も嫌いじゃないけど、最終的に晴空の命を奪った場所だから、嫌いにならなきゃって気持ちはあるものの、本家の部屋から海が見えないのは寂しかったし、嫌いにはなれないみたいだ。
(凪?)
「そうだね。久しぶりに、二人で行ってみようか」
知り合いに見られたら嫌って気持ちもあったから、帽子を深めに被って玄関から出た。
二人でって言っても、晴空はふわふわ僕の横を浮かびながら進んでるんだけどね。
「ねぇ、晴空。晴空は自分の事殺したって言ってもいい存在の事は、どう思ってるの?倒したい?」
多分、僕が暴走すればその霊は消滅させられるよって言葉は呑み込んだ。
(ん~~、そうだなぁ。最初はさ、なんで俺死んでんだよ!凪に生きたまま会いたかったのに!!ってスゴく恨んだ。俺まだ成人もしてなくてこんなに若いのにって。でもさ、またこうして凪と会えて、凪もずっと俺の事想ってくれてたって分かって、貴嶺に体貸してもらって、その、エッチな事も出来てさ。本当だったら俺と凪は双子だから、世間的に見て双子でそういう事なの気持ち悪がられたり非難されるだろ?多分親からも。だから、死んでからこうなれたのって、誰にも迷惑かけてないし、ある意味幸せだったのかなって、考えるようになったんだ)
晴空が考えてた事をゆっくりと吐き出してくれるのをバスの中で聞いて、何も返事は出来ないままに海についた。
僕たちの生まれ育ったこの町の海は、海水浴シーズンやお祭りの時以外はそんなに人がいない。サーファーや釣りをする人も訪れない。僕が霊の晴空に向かって話してたって、気にする人もいない。
「僕もさ、最初はその悪い霊を見つけて、消滅させてやるって考えたんだ。でも、晴空の言う通り、僕ら二人は生きてるうちには結ばれちゃならなかった。これで良かったのかもしれないって考え直して、今は少し穏やかな気分なんだ。本当は、明るくて頼りになるお兄ちゃんが生きてる側で、僕が死んでれば良かったってのは思うけどね」
(そこはさ、そういう運命だったんだよ。仕方ない。俺は凪が生きてて良かったよ)
お昼ご飯を食べて、見たいテレビもないし、何をして過ごそうかなと考えていた僕に晴空が話しかけてきた。
今ではすっかり顔色も良くなって、体重も戻った僕は、晴空と過ごすぬるま湯みたいな生活が心地好くて、学校のこととか考えるのは来月でいいかな、なんて後回しにしてた。
少しだけなら、外に出て買い物したりする事も出来るようになった。少しずつ、少しずつ、同世代の人と同じようになれたらいいかな。
「海?」
(うん。匂いとか潮風とか感じられないけどさ、やっばり好きなんだよね)
晴空は崖から海に向かって飛び降りたのに、海に行くの嫌じゃないのかな…。晴空の記憶は相変わらず戻らない。飛び降りた時の記憶もないから、海が好きなままなのかもしれない。僕は…、僕も嫌いじゃないけど、最終的に晴空の命を奪った場所だから、嫌いにならなきゃって気持ちはあるものの、本家の部屋から海が見えないのは寂しかったし、嫌いにはなれないみたいだ。
(凪?)
「そうだね。久しぶりに、二人で行ってみようか」
知り合いに見られたら嫌って気持ちもあったから、帽子を深めに被って玄関から出た。
二人でって言っても、晴空はふわふわ僕の横を浮かびながら進んでるんだけどね。
「ねぇ、晴空。晴空は自分の事殺したって言ってもいい存在の事は、どう思ってるの?倒したい?」
多分、僕が暴走すればその霊は消滅させられるよって言葉は呑み込んだ。
(ん~~、そうだなぁ。最初はさ、なんで俺死んでんだよ!凪に生きたまま会いたかったのに!!ってスゴく恨んだ。俺まだ成人もしてなくてこんなに若いのにって。でもさ、またこうして凪と会えて、凪もずっと俺の事想ってくれてたって分かって、貴嶺に体貸してもらって、その、エッチな事も出来てさ。本当だったら俺と凪は双子だから、世間的に見て双子でそういう事なの気持ち悪がられたり非難されるだろ?多分親からも。だから、死んでからこうなれたのって、誰にも迷惑かけてないし、ある意味幸せだったのかなって、考えるようになったんだ)
晴空が考えてた事をゆっくりと吐き出してくれるのをバスの中で聞いて、何も返事は出来ないままに海についた。
僕たちの生まれ育ったこの町の海は、海水浴シーズンやお祭りの時以外はそんなに人がいない。サーファーや釣りをする人も訪れない。僕が霊の晴空に向かって話してたって、気にする人もいない。
「僕もさ、最初はその悪い霊を見つけて、消滅させてやるって考えたんだ。でも、晴空の言う通り、僕ら二人は生きてるうちには結ばれちゃならなかった。これで良かったのかもしれないって考え直して、今は少し穏やかな気分なんだ。本当は、明るくて頼りになるお兄ちゃんが生きてる側で、僕が死んでれば良かったってのは思うけどね」
(そこはさ、そういう運命だったんだよ。仕方ない。俺は凪が生きてて良かったよ)
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