偏屈恋愛奇譚

橋本健太

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第1章 17歳 〜思春期少年少女と狂気の社会人〜

第27話 トランプゲーム

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 期末テストも終わり、12月になった頃。学校に通う日も残り僅かになってきた中で、来年の修学旅行の行き先が発表された。
「修学旅行の行き先は沖縄だー!!!ハイサイヤー!!!」
テンションが上がりまくる担任の桜木。日時は1月下旬である。ゆかりは沖縄は行ったことがないが、夏のイメージが強い。
「沖縄か…。南国やね。」
冬の沖縄に今一つイメージが湧かないが、南国というのは分かるようだ。その日の夜、家族団らんで火鍋を食べた。勾玉を組み合わせた太極旗のような鍋は無いので、1つの鍋で辛い麻辣の方でいただく。赤く煮え滚る鍋に箸を突っ込み、ハフハフ言いながら食べるゆかり。
「熱っ…。来年の修学旅行、沖縄に行くことになったの。」 
真っ赤に煮えたエノキをコリコリ食べながら、熱燗を飲む父。
「沖縄か!!ええやないか。南国やぞ!!」
「お父さん、行ったことあるの?」
「昔、夏にな。米米CLUBの「浪漫飛行」みたいな旅やったぞ。」
「夏ってことは海に入ったの?」
「あぁ。沖縄の海は綺麗やぞ。」
父の話にゆかりの期待値は高まる。今回は冬だが、青い海へのロマンが膨らむ。母親も話に入る。
「あとな、沖縄のご飯美味しいで。お母さんも行ったことあるから。」
火鍋のラム肉とキムチにがっつき、お茶で流し込んでから、話に食いつくゆかり。
「沖縄料理って何があるの?」
母親はゆかりに沖縄料理を色々と説明した。濃厚な脂身のラフテー(豚の角煮)、苦みが美味しいゴーヤチャンプルー、程よい塩気のスパムおにぎり、豚肉の塊を乗せたソーキそばがある。
「美味しそうやな。」
「沖縄行ったら、しっかり食べや。」
そう言われて、ゆかりはロマンが膨らんだ。

 12月下旬、学校帰りに難波に行くと、高山に再会した。
「おぉ、ゆかりちゃん!!久しぶりやな!!」
黒いダウンを着た彼。再会出来たということで、千日前の喫茶店に行った。冬なのでホットドリンクを注文して、色々なメニューに舌鼓をうつ。
「はぁ~。ホットコーヒーは美味ぇな。そして食うトーストもありだな。」
ゆかりは、ミルクティーとフレンチトーストを注文。押すと蜜が出てくるフレンチトーストの甘さに、ミルクティーのほろ苦さがマッチしている。
「ありがとう。オジサン。」
「あぁ、良いってことよ。」
高山は最近のことを語る。
「オジサンな、次の番組でギャンブルバトルをするんだよ。」
「ギャンブルバトル?」
ゆかりのフォークを持つ手が止まる。興味津々な様子で彼を見つめる。
「具体的にどういうものですか?」
「まぁ、トランプとかやな。」
「楽しみ🖤」
この日のやりとりはここで終了。

 その後、年が明け、2026年を迎えた。店は年末年始休業。白装束で目覚めて、雑煮を食べる。
「あけましておめでとう。」
「おめでとう、ゆかり。」
「万博終わったけど、まだインバウンドありそうわやな。おめでとう!!」
正月特番の爆笑ヒットパレードを観ながら、雑煮の汁をすする。トロトロに溶けた餅に春菊やら色々と付いているが、それもパクっと食べる。
(どんな年になるのやら…。)
その後、母親に晴れ着を着付けしてもらう。鏡で自分の晴れ着姿を見て微笑むゆかり。
「赤が似合ってる。」
「ゆかり、動かないの。」
櫛で髪を梳かしてもらい、頭に花飾りをつけてもらう。
「出来たわ。」
「ありがとう🖤」
一同、晴れ着に着替えたところで大阪天満宮へ初詣。
「いっぱい人がおるな。」
「ホンマやね。」 
本殿を参拝し、賽銭して今年の願いを言う。
「今月末、修学旅行か。お父さんも沖縄楽しかったらな。ゆかりも楽しむんやで。」
「うん。」

 それから、各自境内を回る。門の前で落ち合うことにした。回っていると、露店の近くでトランプゲームをしているオジサンがいた。
「く、これや!!!」
黒髪オールバックで黒スーツを着たダンディなオジサン。珈琲を飲みながら余裕綽綽な様子。
「ほら、引いてみ。」 
「よし、って、ババや!!!」
「はい、オレの勝ち。」
ババ抜き対決をしており、このオジサンは現在30連勝。前金300円と敗北したら1000円お支払いで、ここまで39000円稼いでいる。
「スゲェな、30連勝中やって。」
オジサンは珈琲を飲み干し、客を挑発する。
「さぁて、次は誰がやるのかな?」
一部始終見ていたゆかり。露店で買った米麹甘酒を飲みながら近づく。
「私いいですか?」
「おっと、これはこれは可愛らしいお嬢さん。骨董品のような美しさやな。名前は何ていうのかな?」
「笹川ゆかり、と申します。」
「ゆかり、か。覚えてあげよう。」
ゆかりは前金300円を支払い、テーブルにつき、アシスタントの目元を覆うマスクをしたバニーガールがトランプを切る。ランダムにカードを配り、それぞれ同じカードを捨てる。
「オジサンの名前は?」
「私は黒田和明。プロギャンブラーや。ちょうど君と同じ年の娘がいる。」
「へぇ、そうなのね。」
手札が揃った。ババは和明が持っている。

ゆかりの手札
クローバーの3
スペードの2
ハートのキング
クローバーのクイーン
クローバーのジャック
ダイヤの10
ダイヤの9
ハートのエース

「面白そうね。」
甘酒を飲みながら、ゲームを始める。
「ゆかりちゃんの運を見せてほしいな。」
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