東方伝奇録

橋本健太

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Ⅱ 1887~1911年 中華帝国滅びゆ

1 大日本帝国迫る

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 19世紀も終わりが近づいてきた1890年代、東アジア情勢は日本と清が朝鮮を巡って対立していた。

(※当時の日本と清の国際関係の風刺画。左 日本 右 清魚 朝鮮 橋の上 ロシア 朝鮮半島の権益を巡って、日本と清が対立。どちらかが手に入れた利益を横取りしようと眺めているロシア。)

背景として、朝鮮内部で日本に倣って近代化を図ろうとする開化派(独立党 金玉均・朴泳孝)と宗主国の清への臣属を主張する保守的な事大党(閔氏一族)が対立。1884年に開化派がクーデターを起こし、新政府を樹立するも袁世凱率いる清軍の介入で3日間で頓挫。清国軍と朝鮮人によって日本公使館が焼き払われ、日本人数十人が殺害される甲申事変が起きた。日本と清の緊張状態が更に増す。日本はアヘン戦争で清がイギリスに敗れたのを見て、鎖国と攘夷を続けることは困難だと悟り、1853年の黒船来航と1854年の日米和親条約で鎖国を終わらせ、更に1867年の大政奉還で政権を朝廷に返し、260年余り続いた江戸幕府と鎌倉時代から続いた武士の時代を終わらせた。そこから1868年に明治時代になり、積極的に西洋文化を採り入れ、文明開化・富国強兵・殖産興業と急ピッチで近代化を推し進めた。清は対照的に、アヘン戦争でイギリスに敗れ、香港が割譲された。その後、太平天国の乱やアロー戦争・清仏戦争など内憂外患に苦しみ、朝貢国が植民地にされていき、アヘンの蔓延で東亜病夫と揶揄される程、ボロボロに落ちぶれていった。日本の明治維新のように近代化しようと言う動きが起き、中体西用論に基づき、洋務運動という近代化政策を始めた。

 清王朝末期、首都の北京に移ろう。北京には清王朝の王宮の紫禁城があり、最盛期には栄えていた。しかし、1856年に始まったアロー戦争でイギリス軍とフランス軍により円明園が破壊され、清はイギリスとフランスに降伏し、1860年に北京条約を締結させられた。英仏両軍は太平天国の乱鎮圧に協力してくれたが、外国使節の北京常駐を認めさせるなど清にとって不利なものであった。衰退する清王朝、落ちぶれる北京。庶民達はどうだったのか。

 北京の王府井に1人の男がいた。彼の名は王曹(中国語:ワン・ツァオ 日本語:おう・そう)。彼は学者と拳法家で、清末中国の未来を憂い、日本の大政奉還のような革命を起こすべきだと考えていた。そのため、満州民族の風習である辮髪を切り、短髪にしている。
「宦官は保守的だし、マンダリンは腐敗している。西太后は権力にこだわってばかりだ。」
王曹は、東アジアの近代における国際秩序を研究していた。テーブルの書籍の他に、紙に秩序の変遷を丁寧に描いていた。

明王朝(1368~1644)
中華思想に基づく朝貢冊封体制。
盟主 明王朝
朝貢国 日本(4代将軍 足利義教の時代で終わる)
朝鮮(高麗→1392年 李成桂により李氏朝鮮となる)
琉球王国(1492年に三山統一で成立)

清王朝(1644~)
満州民族による王朝。明清交代により、明王朝の朝鮮冊封体制を引き継ぐ。
盟主 清王朝
朝貢国 朝鮮
    琉球王国
    東南アジア

中華世界の盟主であった清王朝。康熙帝の時代には、ロシアとネルチンスク条約を結んで、国境を定め、雍正帝の時代に大義覚迷録で華夷秩序の矛盾を克服し、乾隆帝の時代に十全武功で10回遠征して勝ち、中華世界を拡大し、この3人の時代に清王朝は全盛期を迎えた。しかし、内部の腐敗と列強の侵略に遭った。
「アヘン戦争、イギリスは手強かった。」
夷狄のイギリスと侮っていたが、逆に産業革命で近代化したイギリスに文明の一撃を食らわされて敗北。清にとって「ウェスタン・インパクト」(西洋の衝撃)となった。その後、洪秀全率いる太平天国の乱が起こり、何とか鎮圧するも、アロー戦争で敗北した。清仏戦争で朝貢国のベトナムがフランスの植民地にされた。残る朝貢国は朝鮮だけとなった。朝鮮も大院君(テウォングン)と閔妃の衛正斥邪という鎖国政策の保守派と、金玉均(キム・オッキュン)率いる開化派の争いが起きた。1882年の壬午軍乱と1884年の甲申事変で、日本が接近してきた。
「日本が脅威だな。琉球王国を奪われた。」
日本は1867年の大政奉還で江戸幕府を終わらせ、急ピッチで近代化した。明治時代になり、文明化として経済・文化・産業・軍事で西洋のものを吸収し、富国強兵・殖産興業と発展していった。日本は朝鮮に近づいており、清にとって脅威となっている。
「いずれ、日本と清は戦うだろうな。」
茶を飲みながらつぶやいた。

 一方、同じく北京に列強と戦おうとする者がいた。
「キョンシーとは深いものだぞ。」
「はい、父上。」
キョンシー使いの親子である。北京の粗末な小屋に住んでいる。
劉威儀(中国語:リュウ・ウェイイー 日本語:りょう・いぎ) 導師・キョンシー使い
劉李花(中国語:リュウ・リーファ 日本語:りゅう・りか) 娘・キョンシー使い
「日本と戦うことになるぞ。」
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