東方伝奇録

橋本健太

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Ⅱ 1887~1911年 中華帝国滅びゆ

3 老大国

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 日清戦争で敗れて、眠れる獅子と恐れた清国は弱体化を露呈した。欧米列強から分割され、半植民地状態と化した。

日清戦争により、東アジアの秩序は変容した。日本は明治維新・殖産興業・富国強兵で近代化に成功、1889年に大日本帝国憲法が発布され、アジア初の立憲国家になった。そして、日清戦争に勝利し、台湾を植民地にして朝鮮も手中に収めた。日本は大日本帝国として、欧米列強に一歩近づいた。朝鮮は下関条約により、独立自治の国として華夷秩序から離脱。1897年に李氏朝鮮から大韓帝国になった。清国は李氏朝鮮を失い、朝貢冊封体制と華夷秩序、それに基づく中華世界は消滅した。日本に敗れたことで近代化政策の洋務運動は挫折、欧米列強からも租界地を広げられ、分割されてしまった。
「日本に倣って近代化だ!!!」
光緒帝は、康有為・梁啓超らの提案に乗り、近代化を進めた。

 1898年、戊戌の変法という形で6月11日から始まった。背景にあるのは1861年から始まった洋務運動は、中体西用と言い、日本の明治維新とは異なり、中国の政治体制を維持しながら西洋の技術を採り入れるというものだった。これは、幕府を倒して、王政復古により、根本から政治体制を変えて、殖産興業・富国強兵によって近代化した日本に日清戦争で敗れて限界を露呈した。康有為の変法としては、科挙に代わる近代的学制・新式陸軍・訳書局・制度局の創設・議会制度の導入など明治維新の日本を参考にしたものを行なった。
改革を進めて行くと、それを邪魔する者が出てきた。
「光緒帝、私の許可なく勝手に改革をするとは!!」
中国三大悪女と呼ばれる西太后であった。一方で急進的な改革によって、次第に求心力を失い、西太后は戊戌の政変というクーデターを始めた。
「何をする?!西太后、邪魔するな!!」
「お黙り!!頭を冷やしなさい!!」
光緒帝は監禁されて実権を失い、変法派の主要人物は処刑されてしまい、変法運動は挫折した。近代化は失敗し、清は建て直せる契機を失った。

 戊戌の変法が失敗したことを知った王曹は、それを嘆いた。
「マズイぞ。西太后め…。アロー戦争の円明園と言い、日清戦争の北洋艦隊と言い、とんでもないことばかりしてくれる…。あのクソババア…。」
北京の劉親子は霊幻道士としての修行を続けていた。
「ハァ!!!清はいずれ崩壊する!!!新たな世を迎える戦いが始まるのだ!!!」
「はい!!!父上!!!」
キョンシーは死体妖怪でお札を貼ってコントロールしていなければいけない。なので、道士は心身共に強くなければ、キョンシーを使いこなせない。
「お札は、ただの紙じゃないぞ。」
「はい。」
「霊力が宿っているぞ。」
拳法の修行も行う。
「蹴りで、このリンゴを割ってみな。」
「はい!!」
変革に失敗した清をどうにか変えてやろうと考えた者達が、僅かながらにいた。

 そんな現状の中、山東省にある一派が現れた。
白蓮教の流れを組んだ義和団という秘密結社である。団員 何建力(中国語:ホー・ジェインリー 日本語:か・けんりき)という青年。辮髪を切り、短髪にし、右肩に龍の入れ墨を入れている。彼も先陣切って語る。
「清朝はもうダメだ!!!アヘンにやられ、西洋列強の好き放題にされ、東夷の日本にまで敗れた!!!自力で建て直せない!!!ならば我らでこの西洋の鬼どもを駆逐しようではないか!!」
他の者達もそれに続く。
「我らの義和拳法で身体を鍛えれば、銃弾や剣でも傷一つつかない!!!アチョー!!!」
王曹は山東省に義和団が現れたことを知る。
「義和団か。義和拳法?また太平天国の二の舞にならなきゃいいが…。」
東アジアの秩序に精通する彼は、これが排外主義に繋がると危惧していた。幕末の日本は外国船打払令と尊王攘夷運動で、外国勢力を追い払おうとしたが、アヘン戦争の結果を知り、薩英戦争で敗れて断念した。李氏朝鮮は衛正斥邪政策で鎖国を守るも、開国した。清は近代化失敗で、更に太平天国のような奴らが再び出てきて、国内が混乱せると危惧した。
「いずれにせよ、アイツら、また太平天国みたいなことにならなきゃいいが…。」
自宅にて茶を飲みながら憂う王曹。ボロボロになった老大国の清朝、内憂外患に苦しめられている。義和団の存在が、清にどう出るのか? 
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