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―第十五話― 危機
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突如として響いた爆発音のようなもので、私は目を覚ました。
音の発生源のほうを見ると、恐らく扉があったであろう場所に穴が開いており、周辺に廊下に向かって木片が飛び散っている。
……えっと、なにしてたんだっけ?
確か、ジャロイに来ていた魔王軍を討伐にしに行って……。
……そっか、私、捕まっちゃったんだ。
また、リアの足を引っ張ってしまった。
この木片も、おそらくリアの仕業だろう。
今の状況下であれば、リアと合流することが最優先になる。
幸い、私の剣は取り上げられていない。
これなら、多少の戦力にはなるはず。
リアの足を、これ以上引っ張るわけにはいかない。
そのためにつけてもらった修行なんだから。
……ごめんね、リア。
これ以上迷惑をかけないように、私、頑張るから。
◆◆◆
高速で飛んできた矢が、俺の頬を掠める。
「ずいぶんとてこずらせてくれたな、リアトリス」
チッ、もう追いつかれちまったのか。
「これはまた、ずいぶんと早い再会になったものだな」
「ああ。お前に追いつくまでに、大量のミストを失ってしまったよ」
ミストというと、俺を案内していたあれか。
「俺は狩人だ。故に、幾千もの敵を、遠方からも、近距離からも、確実に仕留めることができるはずなのだがな」
「あっそ。俺、そういう話に興味はないから」
「さてと、リアトリス。ここからは、本気で戦ってもらうぞ」
「俺の気が乗ればな」
「乗るさ。すぐにな」
そう言ってメイサは、弓に矢を五本つがえ、俺に向かって放ってきた。
魔力がこもっているし、自動追尾型だな。
「『破壊』」
目に入った一本を、すぐさま破壊する。
後ろからも二本の矢が迫ってきているが、身を捻ってかわし、短剣で切りつける。
残りの二本の矢が、左右から同時に飛んでくる。
この程度ならば、問題ない。
「『切断』」
魔王軍幹部ともあろうものが、これだけで終わるはずがない。
まだ何か来るな。
「逃げられるものなら、逃げてみな! 『レッグ・ホールド・トラップ』!」
詠唱と同時に、突如、周りの壁に牙のようなものが生えてきた。
これ、捕まったらやばいよな。
「『移動』」
よし、いったん体勢を立て直して、反撃にでも……。
――ガシャン
◆◆◆
部屋を出てすぐに、私はその館の異常性に気が付いた。
そこら中から、強力な魔力を感じる。
そのうえ、辺りに大量のミストがわいてきている。
その一体一体を切りながら進んでいたのだが、相手は際限なく現れてくるのだ。
いい加減こちらにも、疲れがたまってくる。
もういっそ、あの魔法を撃ってしまおうか。
そんな考えも脳裏をよぎったが、あれは奥の手だ。
本当にピンチになったときに使ったほうがいい。
◆
もうそろそろ三桁程度のミストを倒したのではないかと思っていた時、突如として大きな金属音のようなものが響いた。
……嫌な予感がする。
私は、音の方向まで全力で走った。
おそらく、この廊下の突き当りを右に曲がった先に、音の発生源があるはずだ。
「やあ、遅かったな。いや、早かったほうなのか?」
嘘、でしょ……?
私の予感は、最悪の方向で的中してしまった。
廊下には、リアがいた。
だが。
──右足がなくなっていた。
辺りには鮮血が飛び散っており、それが現実であるということを、嫌でも理解してしまう。
「リア!!」
倒れたままのリアに、大急ぎで駆け寄る。
「リア、どうしたの!?」
全力の回復魔法をかけながら、リアに呼び掛ける。
するとリアは、うっすらと瞼を開き。
「…………」
一言だけ静かにつぶやいた。
その内容に驚きつつも、それを表情に出さないようにし、先ほど私に話しかけてきたやつのほうを向く。
「あなたが、リアをやったの?」
「ああ、そうだ。私の名は、メイサ。魔王軍幹部の一人だ」
魔王軍幹部。
そうか、そうか……。
「待っててね、リア。すぐに終わらせるから」
音の発生源のほうを見ると、恐らく扉があったであろう場所に穴が開いており、周辺に廊下に向かって木片が飛び散っている。
……えっと、なにしてたんだっけ?
確か、ジャロイに来ていた魔王軍を討伐にしに行って……。
……そっか、私、捕まっちゃったんだ。
また、リアの足を引っ張ってしまった。
この木片も、おそらくリアの仕業だろう。
今の状況下であれば、リアと合流することが最優先になる。
幸い、私の剣は取り上げられていない。
これなら、多少の戦力にはなるはず。
リアの足を、これ以上引っ張るわけにはいかない。
そのためにつけてもらった修行なんだから。
……ごめんね、リア。
これ以上迷惑をかけないように、私、頑張るから。
◆◆◆
高速で飛んできた矢が、俺の頬を掠める。
「ずいぶんとてこずらせてくれたな、リアトリス」
チッ、もう追いつかれちまったのか。
「これはまた、ずいぶんと早い再会になったものだな」
「ああ。お前に追いつくまでに、大量のミストを失ってしまったよ」
ミストというと、俺を案内していたあれか。
「俺は狩人だ。故に、幾千もの敵を、遠方からも、近距離からも、確実に仕留めることができるはずなのだがな」
「あっそ。俺、そういう話に興味はないから」
「さてと、リアトリス。ここからは、本気で戦ってもらうぞ」
「俺の気が乗ればな」
「乗るさ。すぐにな」
そう言ってメイサは、弓に矢を五本つがえ、俺に向かって放ってきた。
魔力がこもっているし、自動追尾型だな。
「『破壊』」
目に入った一本を、すぐさま破壊する。
後ろからも二本の矢が迫ってきているが、身を捻ってかわし、短剣で切りつける。
残りの二本の矢が、左右から同時に飛んでくる。
この程度ならば、問題ない。
「『切断』」
魔王軍幹部ともあろうものが、これだけで終わるはずがない。
まだ何か来るな。
「逃げられるものなら、逃げてみな! 『レッグ・ホールド・トラップ』!」
詠唱と同時に、突如、周りの壁に牙のようなものが生えてきた。
これ、捕まったらやばいよな。
「『移動』」
よし、いったん体勢を立て直して、反撃にでも……。
――ガシャン
◆◆◆
部屋を出てすぐに、私はその館の異常性に気が付いた。
そこら中から、強力な魔力を感じる。
そのうえ、辺りに大量のミストがわいてきている。
その一体一体を切りながら進んでいたのだが、相手は際限なく現れてくるのだ。
いい加減こちらにも、疲れがたまってくる。
もういっそ、あの魔法を撃ってしまおうか。
そんな考えも脳裏をよぎったが、あれは奥の手だ。
本当にピンチになったときに使ったほうがいい。
◆
もうそろそろ三桁程度のミストを倒したのではないかと思っていた時、突如として大きな金属音のようなものが響いた。
……嫌な予感がする。
私は、音の方向まで全力で走った。
おそらく、この廊下の突き当りを右に曲がった先に、音の発生源があるはずだ。
「やあ、遅かったな。いや、早かったほうなのか?」
嘘、でしょ……?
私の予感は、最悪の方向で的中してしまった。
廊下には、リアがいた。
だが。
──右足がなくなっていた。
辺りには鮮血が飛び散っており、それが現実であるということを、嫌でも理解してしまう。
「リア!!」
倒れたままのリアに、大急ぎで駆け寄る。
「リア、どうしたの!?」
全力の回復魔法をかけながら、リアに呼び掛ける。
するとリアは、うっすらと瞼を開き。
「…………」
一言だけ静かにつぶやいた。
その内容に驚きつつも、それを表情に出さないようにし、先ほど私に話しかけてきたやつのほうを向く。
「あなたが、リアをやったの?」
「ああ、そうだ。私の名は、メイサ。魔王軍幹部の一人だ」
魔王軍幹部。
そうか、そうか……。
「待っててね、リア。すぐに終わらせるから」
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